弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

内密出産

NHK「匿名で出産希望の女性保護 病院 “行政は早急に対応を” 熊本」(2021年10月29日)は次のとおり報じました.

「自宅などでの孤立出産を防ぐため病院だけに身元を明かす「内密出産制度」を独自に導入した熊本市の慈恵病院が「誰にも知られず出産したい」という臨月の女性を保護していることを29日、記者会見で明らかにしました。病院は生まれてくる子どもの戸籍が作れない可能性があると指摘したうえで、行政機関に早急な対応を求めています。

熊本市の「慈恵病院」は親が育てられない赤ちゃんを匿名で受け入れるいわゆる「赤ちゃんポスト」を全国で唯一設けています。

さらに自宅などでの孤立出産を防ぐため病院だけに身元を明かし子どもがあとから親を知ることができる「内密出産制度」をおととし独自に導入しました。

一方、熊本市は「法令に抵触する可能性がある」として、病院に実施を控えるよう求めてきました。
こうした中、病院が29日会見を開き、蓮田健院長が「誰にも知られず出産したい」という臨月の女性を保護していることを明らかにしました。

病院では身元を明かすよう説得を試みているということですが、女性は行政などに自分の身元を明かすことを拒否していて、出産予定日が迫っているため誰にも身元を明かさない匿名出産になる可能性があるということです。

病院はこのままの状態で出産を迎えると子どもの戸籍が作れないなど法的な支援を得られない可能性があると指摘して、早急に体制を整える必要があるため、市に対し病院と協議する場を設けるよう要望書を提出したということです。

慈恵病院の蓮田健院長は「2週間も身元を明かさないケースはこれまでになく匿名出産になる可能性もある。市には早急に対応してほしい」と述べました。
“赤ちゃんポスト”設ける慈恵病院で「内密出産制度」独自導入
熊本市の「慈恵病院」は、親が育てられない赤ちゃんを匿名で受け入れるいわゆる「赤ちゃんポスト」を全国で唯一設け、平成19年以降159人の赤ちゃんを受け入れてきました。

さらに、自宅などでの孤立出産を防ぐため、病院だけに身元を明かす「内密出産制度」を、おととし独自に導入しました。

病院によりますと、予期しない妊娠や経済的な事情など、病院がやむをえないと判断した場合に限って、妊婦が病院内の「新生児相談室」の室長にだけ身元を明かしたうえで出産を認めるとしています。

そのうえで病院は、制度の実現に向けて法整備の必要性を熊本市などに訴えてきました。

これに対し、熊本市は去年、国への照会をもとに「内密出産が法律に抵触する可能性を否定できない」などとして、実施を控えるよう病院に求めていました。

そのうえで制度の実現に向けて、関連法案の原案をつくる意向があるかについて「いち地方自治体で解決できるものではなく、国の責任で検討されるべき」だとして、引き続き国に法整備の検討を要望していく考えを示していました。
「内密出産」これまで国内で実施報告なし
「内密出産」とは望まない妊娠をして子どもを育てることが難しい女性に対して、医療機関が匿名を保障したうえで出産する方法です。

医師や助産師が立ち会わない危険な出産を避け子どもの命を守ることが目的で、厚生労働省によりますと、これまで国内で実施されたケースは報告されていないということです。

日本国内では親が育てられない赤ちゃんを匿名で受け入れる、いわゆる「赤ちゃんポスト」を設けている熊本市の慈恵病院が、おととし内密出産の仕組みを導入していて、妊娠を誰にも知られたくない女性が病院だけに身元を明かすことで匿名のまま出産することを受け入れるとしています。

病院では生まれた子どもが一定の年齢になって希望した場合、親が誰であるかなどの情報を開示するとしています。

しかし日本では内密出産に関する法律はなく厚生労働省は去年7月、慈恵病院のある熊本市から違法性がないかという照会を受けたのに対し「法令に直ちに違反するものではない」とする見解を示しました。

そのうえで、熊本市に対し
▽病院が内密出産を希望する女性に丁寧に相談を行い、特別養子縁組の制度について伝えるなどして内密出産を回避できるようにすることや
▽病院が受け入れる場合は子どもが出自を知る権利の大切さを女性に説明すること
それに
▽子どもが生まれた場合は市と病院が連携して子どもの福祉を守ることなどが必要だとする見解を示しています。

また法務省は内密出産で生まれてくる子の戸籍について、熊本市の照会に対し「仮定の事実に基づく照会への回答は困難」としたうえで「一般論として出生届の母親の欄が空欄だとしても、日本国籍だと認められれば戸籍に記載する」と回答したということです。

厚生労働省によりますと、ドイツでは2014年に法律に基づく制度として整備されていて、女性が公的な相談機関などに身元を明らかにする書類を預けたうえで医療機関で匿名で出産することが認められ、生まれた子どもは16歳になれば親が誰なのかについての情報の開示を求めることができるようになっているということです。
専門家 “法律違反のおそれ 法整備が必要”
内密出産について民法や家族法に詳しい早稲田大学法学学術院の棚村政行 教授は、現行の法律上は子どもを産んだ母親や医師が法律違反になるおそれがあるとして、法整備が必要だと指摘しています。

棚村教授は内密出産について「望まない妊娠・出産で悩む女性が精神的に追い詰められたり、孤立して危険な状態で赤ちゃんを産んで遺棄したりすることにもつながりかねない状況なので、やむにやまれずというところもあるが意義がある」と話しています。

その一方で法律上
▽親は出産から2週間以内に出生届を提出する義務や子どもを養育する義務を負っているほか
▽受け入れる医療機関の医師らについても、医師法などで生まれた子どもの親が誰であるかを確認しなければならないとされているとして
「内密出産の場合に届け出などの義務が免除されるように法律を整備しないと法律違反になるおそれがある。また女性が誰にも身元を明かさない場合は出産に立ち会う医師たちが法律に抵触するおそれがある。法律の改正などが必要だ」と指摘しました。

さらに棚村教授は「女性が社会的にも精神的にも孤立している中でも相談を受けられる制度が必要だ。また生まれてきた子どもが成長した時に出自を知る権利を保障するにも、一医療機関が長期間、正確に親の情報を保管するには限界があり、行政との連携も求められる」と話しています。
熊本市 病院訪問し文書で回答
熊本市の慈恵病院が「誰にも知られず出産したい」という臨月の女性を保護していることを明らかにし、熊本市に要望書を提出して対応を求めていることを受けて、熊本市の大西一史市長は匿名での相談に応じるなど「母子に寄り添った支援をしていきたい」などと文書で回答しました。

慈恵病院からの要望書に対して、29日、熊本市の担当者が病院を訪問し、大西市長名の文書を渡しました。

この中で、「粘り強く女性に身元情報などを明らかにしてもらえるよう、説得を続けてほしい」と要請したうえで、「市が匿名での相談を受けて、経済的な支援や家庭環境の調整、それに心理的なサポートなど各種の支援につなげていきたい」と回答しています。」

そして、「母子に寄り添った支援をしていきたい。予期せぬ妊娠に関する課題の解決に向けて現行制度を活用し、病院と十分な連携を図りながら積極的に取り組む」などとしています。

子には出自を知る権利があります.
出産が不利益となる状況があるために匿名出産を希望していると思います.その意味では支援が必要な状況だと思います.
法と行政のすみやかな整備が必要と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2021-10-29 23:15 | 医療