県立病院が鎮痛薬フェンタニルの呼吸抑制作用で患者が死亡した事案で事故調の調査報告書に基づき謝罪(報道)
「千葉県立佐原病院で入院患者に麻酔用の鎮痛薬の投与が適切に行われず、70代の女性が亡くなっていたことが分かりました。病院は10日調査報告書を公表し、謝罪しました。
これは千葉県立佐原病院が10日、県庁で開いた会見で調査報告書を公表し、明らかにしました。
それによりますと去年6月、入院していた70代の女性が鎮痛薬の投与中に亡くなり、その後の病院側の調査で、投与が適切に行われていなかったことが分かったということです。
使用された鎮痛薬は痛みを抑える効果が高い一方、副作用として呼吸が抑制される場合があるため、投与中は呼吸の観察などが必要とされていましたが、現場ではこうした情報が共有されておらず、必要な対応がとられていなかったということです。
また、投与した薬の量はガイドラインの範囲内でしたが、女性の年齢や他の薬の服用状況などを考慮すれば、少なくするべきだったと結論づけています。
そのうえで、再発防止策として、鎮痛薬を処方する際は薬剤師と協議することや、投与の際は看護師と連携して呼吸の観察を行うことなどを徹底するとしています。
佐原病院の露口利夫病院長は、「患者とご遺族に深くおわび申し上げます。病院全体で受け止め教訓としたい」と話しました。」
千葉日報「麻酔用鎮痛薬で70代女性急死 過剰投与で呼吸抑制か 千葉県立佐原病院、医療事故で謝罪」(2021年11月10日)は次のとおり報じました.
「千葉県立佐原病院(香取市)は10日、右足の痛みを訴え入院していた患者に麻酔用鎮痛薬(フェンタニル)を投与したところ、数日後に急変し患者が死亡する医療事故が昨年6月にあったと発表した。死因はフェンタニルの過剰投与による呼吸抑制が高いとみられる。同日、露口利夫病院長が県庁で会見し「患者の家族に深くおわび申し上げます」と謝罪した。
同病院によると、亡くなったのは県内居住で当時70代だった女性。女性は2019年に同病院で受けた脊椎の手術後に感染や患部の炎症を起こし、再度手術を受けるため昨年5月に再入院した。右足の痛みが強まったため、同年6月2~4日、主治医の判断でフェンタニルを断続的に投与した。
投与が続いていた4日午前5時の巡視時、女性は軽くいびきをかいて寝ていたが、同6時半に看護師が検温のため病室に出向いたところ、呼吸が停止している女性を発見。院内で蘇生を施したが、同8時32分に死亡した。女性のケースでは投与中、常時のモニタリングをしておらず、看護師が定期的に巡視するのみだった。
主治医は同病院の聞き取りに「過去の経験や女性が痛みを強く訴えていたので投与した」と説明。同病院も投与量や投与速度はガイドラインが定める適正範囲内だったとしたが、医療事故の恐れがあるとして、今年3月、外部委員も入れた事故調査委員会を立ち上げた。
事故調が5月にまとめた報告書は「高齢者の場合、薬の代謝が落ちることや、別の薬の影響による肝臓の代謝の低下を踏まえると、結果的に過剰投与に当てはまる」「死因は過剰投与と観察不十分だったと判断できる」として、医療事故との見解を提示。「高齢者という点を考慮し、呼吸数や酸素飽和度をモニターする必要があった」とも指摘した。
同病院は再発防止策として、麻薬処方時に医師や看護師、薬剤師の間で情報共有を徹底し、患者が急変時に速やかに対応できるようにするため、モニタリングのマニュアルを策定した。露口病院長は会見で「今回の症例を職員全員に周知徹底した上、各部署の連携を強化していきたい」と述べた。」
上記報道の件は私が担当したものではありません.
鎮痛剤はよく使われるため,これくらいの量ならと安易に使用されるとしたら危険です.病院スタップの連携により患者の年齢,体重,状態にあわせた適正使用を心がける必要があるでしょう.
事故調の報告書が再発防止に役立つことを期待します.
谷直樹
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