弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

薬害オンブズパースン会議,サーバリックスのアジュバントAS04 中のMPL 含量試験を生物学的製剤基準から削除すること等に反対する意見書(パブリックコメント)

薬害オンブズパースン会議は,2021年11月4日,以下の「サーバリックスのアジュバントAS04 中のMPL 含量試験を生物学的製剤基準から削除すること等に反対する意見書(パブリックコメント)」を発表しました.
「サーバリックス」はグラクソ・スミスクライン の「組換え沈降2価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(イラクサギンウワバ由来)」です.

「意見の趣旨

1.サーバリックス(組換え沈降2 価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン、イラクサギンウワバ細胞由来)の生物学的製剤の検定基準に関する規定から3-脱アシル化-4'-モノホスホリルリピッドA(MPL)含量試験を削除すべきではない。
2.サーバリックスについて、1ロット当たりの試験本数を 50 本から30 本に減らすことは認められない。

意見の理由

1.MPL は極めて強力な免疫増強作用と炎症惹起作用を発現するため、含量管理は重要な意味を持つ。
(1)サーバリックスは HPV の感染そのものを防止するために、高い抗体価を長期間維持するように設計されたワクチンである。そのために特に強力にワクチンによる免疫反応を増強する目的でアジュバントAS04 が添加されている。AS04 は水酸化アルミニウムに今回改正の対象となっている MPL を吸着させた混合アジュバントである。MPL は、リピドA誘導体アジュバントであり、自然免疫受容体のひとつである TLR4 リガンド分子として、Th1 型免疫応答(細胞性免疫)をも誘導し、極めて強力な免疫増強作用と炎症惹起作用を発現する。
MPL および AS04 に関しては、炎症性サイトカイン TNF-α産生を用量依存的に誘導することが認められている(サーバリックス審査報告書)。
現行の生物学的製剤基準では、MPL 含量試験の項にて、MPL 含量は 80~120 mcg/mLと定められており、上記のような強力な薬理作用を持つMPL に関する含量試験の項目は必須である。
サーバリックスにおいては、AS04 に関してMPL と水酸化アルミニウムの比率を1:10とされた。製剤試験では、MPL 吸着バルクの未吸着率を検定しているが、この検定と水酸化アルミニウムの含量試験を行うことのみでは、MPL の製造管理上不十分であり、MPL 含量を直接検定する試験は削除すべきではない。

(2)MPL はグラム陰性菌由来のリポ多糖(LPS)を低毒性化したリピド A 誘導体アジュバントであり、厳格な無毒化の製造工程管理が求められる。
MPL は、グラム陰性菌 Salmonella minnesota R595 株の菌体から得たリポ多糖(LPS)の構造を変化させて低毒性化したリピドA 誘導体である。LPS は細菌の内毒素(エンドトキシン)本体であることから、リピドA の低毒性化の工程は、MPL をワクチンのアジュバントとして使用する上で、ワクチンの安全性に直結する。したがってMPL の製造には、厳格な製造工程の管理が求められる。
サーバリックスに関する審査報告書では、MPL の製造工程に由来する不純物 LPS の存在とその除去について「申請者は、・・・粗 MPL 中には■が約■%検出されること、続く精製工程(イオン交換クロマトグラフィー)で■が効果的に除去されることを説明している」と記載している(■は審査報告書中のマスキング部分)。
しかし、不純物LPS が非毒性化されていないLPS であるとするなら、その毒性のみならず、病原体による抗体産生につながる危険がある。
現在の生物学的製剤管理では、厳格な製造工程管理を促すに不十分であると言わざるを得ず、一層の厳格さが求められる中、MPL の含量試験を削除するという検定基準の緩和につながる変更は認められない。

(3)今後開発される新規ワクチンへ添加された場合も含量試験が行われないことにつながる可能性がある。
従来日本で承認され使用されてきた主要なアジュバントであるアルミニウム塩は、Th2 型免疫応答を促し液性免疫を誘導する。しかし、新規アジュバントであるMPL は、細胞性免疫を誘導する作用を持つ。
今後、MPL と同様に、細胞性免疫誘導作用等、極めて強力な免疫増強作用と炎症惹起作用を持つ新規のアジュバントが、既存のワクチンや開発中の各種新規ワクチンへ添加されることも想定される。
アルミニウム塩を含めアジュバントの免疫増強作用の機序は十分解明されているわけではなく、アジュバントの安全性は慎重に見極める必要がある。各種ワクチンに添加されるすべてのアジュバントの含量は厳密に管理されるべきであり、それらの含量試験は必須事項である。

2.サーバリックスについて、1 ロット当たりの試験本数を 50 本から 30 本に減らすことは認められない。
上記1の(2)で述べたように、MPL はLPS を低毒性化したリピドA 誘導体アジュバントであり、厳格な無毒化の製造工程管理が求められる。
製造工程にて発生する不純物LPS を完全に除去する精製工程を管理する上では、製造工程管理のさらなる強化が求められるのであり、1 ロット当たりの試験本数を 50 本から 30本に大幅に減らすことは管理の緩和につながり認められない。
以上」


谷直樹

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by medical-law | 2021-11-12 22:51 | 医療