フレーミングについての注意義務 広島高裁令和3年2月24日判決
そして,「I医師は,本件左側構成成分のネック部分までカバーする立体的なフレームを形成することができなかった」tこを認定し,「I医師にはフレーミングについての注意義務違反があったと認められ,Gとの間の診療契約上の債務不履行責任を免れないというべきである。」としました.
なお,これは私が担当した事件ではありません.
「4 争点3(フレーミングについての注意義務違反の有無)について
(1) 当時の医療水準について
ア 証拠(甲B12の1の59頁,甲B28の58頁,甲B30の2の230,231頁,甲B32の1の64頁,甲B32の2の80頁,甲B32の4の99,100頁,甲B35の1,2枚目,乙B3の126頁,乙B12の835頁,乙B25の85頁)及び弁論の全趣旨によれば,フレーミングは,フィリングコイルが瘤の内側を傷つけたり瘤を破ったりすることのないよう瘤内にフレーム(ケージ,枠組み)を形成する工程であるところ,脳動脈瘤が二つの葉状の構成成分を有する場合,一方の構成成分にカテーテルを挿入してコイルを挿入すると,一方の構成成分ばかりにコイルが挿入され,他方の構成成分がコンパートメント(部分的に不十分な塞栓が生じた区画)として残り,瘤内の血流が完全に消えないことが懸念されることから,ダブルカテーテルを用いて,二つのカテーテルを各構成成分に挿入し,また,コイルとして Trufill Orbit Galaxy を選択するのであれば,各構成成分の長径と同じ二次コイル径の長いコイルを選択し,各カテーテルから各構成成分の全体にバランスよくコイルを行き渡らせ,各構成成分の形状にフィットした,幾つかのコイルループがネック部分を横切る,コンパートメントやコイルの偏りのない,ネック部分までカバーした立体的なフレームを形成することで瘤内に脆弱部分を作らないようにするのが当時の医療水準であったと認められる。
イ 被控訴人の反論(争点3の被控訴人の主張ア)について
(ア) 被控訴人は,①フレーミングは,フィリングコイルをフレーム内に留め,母血管への逸脱を防止したり,重要血管を温存したりするためのものであるところ,いかに適切なフレームを形成しても,瘤内を隙間なく覆うことはできないから,不規則に動くフィリングコイルがフレームの隙間から脳動脈瘤を穿孔することを防ぐことはできない,②実際の臨床現場では,不整形な脳動脈瘤が多く,フレームと瘤壁との間に隙間ができ,フィリングコイルがフレームの外側にも出て上記隙間を埋めることも想定されているから,フィリングコイルが脳動脈瘤を穿孔したこととフレームの形成の適否とは関係しない,③フレーミングについて,フィリングコイルが瘤の内側を傷つけたり瘤を破ったりすることのないようにする目的があると指摘する控訴人ら引用の文献(甲B35)は,医療機器メーカーの製品紹介資料にすぎず,また,脳動脈瘤の形状等によってはフレームの形成の必要がないとする文献(乙B30の81頁)の記載とも整合せず,信用することができないと反論する。確かに,乙B30の79頁には「framing coil とは,最初に入れるコイルのなかで,コイルの逸脱防止,分岐血管の温存などの目的をもって入れるコイルのことである。」,同82頁には「・・・コイルが母血管に逸脱しないようにするフレームもあるし...重要血管を温存するためその血管よりも遠位にコイルをとどめるようにするフレームもある・・・」と上記①の反論に沿うかのような記載がされており,また,上記①の反論に関して,いかに適切なフレームを形成しても,瘤内を隙間なく覆うことはできないことから,フィリングコイルがフレームの隙間から脳動脈瘤を穿孔することを完全には防ぐことができないことは,控訴人らも自認するものであり(控訴人ら第7準備書面3頁(2)),さらに,M医師の意見書(乙B32)には,上記②の反論に沿う臨床現場の実情の記載がされている。
(イ) しかし,上記(ア)の乙B30の79頁の記載が,フレーミングの目的について,コイルの逸脱防止,分岐血管の温存だけであると断ずるものでないことは,「『などの』目的」という表現が用いられていることから明らかであり,また,同82頁の記載が,フレーミングの目的について,母血管への逸脱防止,重要血管の温存だけであると断ずるものでないことも,「フレーム『も』ある」という表現が用いられていることから明らかであるところ,乙B30の文献は,①試行錯誤を重ねて強固なフレームを形成すること,②当該フレームの中に軟らかいフィリングコイルを慎重に詰めること,③フィリングコイルが当該フレームの中に詰められることによって,当該フレームが多少なりとも広がることがあることから,頻回のDSAで当該フレームの状況等を確認することの重要性を指摘するものであって,フィリングコイルがフレームの隙間から脳動脈瘤を穿孔することを完全に防ぐことができないとしても,フィリングコイルがむやみにフレームの隙間から脳動脈瘤を穿孔することのないようにすることもフレーミングの目的であることを当然の前提としていると理解するのが自然である(I医師も,フレームについて,コイルを詰めるための枠であり,籠のような感じで瘤全体を覆うものであると認めている〔証人I医師101,106~108項〕し,フレームについて,中をコイルで埋めるための cage と表現する文献〔甲B32の2の80頁〕も存在する。)。被控訴人の上記 ①の反論は的確なものということができない。
また,M医師は,かつてO病院の脳神経外科に勤務し,現在もP大学医学部臨床教授を務めている者であり(乙B32),O病院に勤務していたI医師及びJ医師(認定事実(2)ウ,(3)ア)と近い関係にあるところ,一件記録を精査しても,被控訴人の上記(ア)②の反論に沿う臨床現場の実情を記載した文献は他には存在しておらず,M医師の意見書に記載された上記実情が,真実であるのか,また,真実であるとして当時の医療水準にかなうものであるのか,それとも単なる医療慣行にすぎないのかを適切に検証することができないから,上記意見書の記載はにわかに信用することができない。被控訴人の上記(ア)②の反論は採用することができない。
さらに,控訴人ら引用の文献(甲B35)は,医療機器メーカーの製品紹介資料であるとはいえ,その記載から,当該メーカーが,日本脳神経血管内治療学会学術総会において新たなコイルの販売開始を発表したコイル塞栓術用コイルの製造販売業者であることは明らかであって,上記文献がコイル塞栓術の専門医らの監修の下に作成されたものであることは優に推認することができる(被控訴人も,医師の報告を掲載したものであるとはいえ,医療機器メーカーの製品紹介資料と窺われる文献〔乙B28〕を提出しているところであり,医療機器メーカーの製品紹介資料であるから直ちに信用することができないと断ずるのは相当でない。)し,また,脳動脈瘤の形状等によってはフレームの形成の必要がないものがあるとしても,それは「5㎜大の球形の動脈瘤でネック径が2㎜」の様な場合をいう(乙B30の81頁)のであって,そのことから直ちに,一般論として,フレームの形成の必要がある場合のフレーミングについても,フィリングコイルが瘤の内側を傷つけたり瘤を破ったりすることのないようにする目的がないなどと断ずることができるわけでもない。そうすると,被控訴人の前記(ア)の反論はいずれも採用することができない。
(2) I医師の注意義務違反の有無について
ア I医師がカテーテル2を用いてコイル1を挿入することでフレームを形成することを試みたのは,本件左側構成成分であったか,本件動脈瘤全体であったか。
(ア) ダブルカテーテルは,脳動脈瘤が二つの葉状の構成成分を有する場合に,二つのカテーテルを各構成成分に挿入し,各カテーテルから各構成成分の全体にバランスよくコイルを行き渡らせるようにする手技である(前記(1)ア)ところ,カテーテル2が本件左側構成成分の塞栓を企図したものであること(認定事実(3)イ)に照らすと,I医師は,カテーテル2を用いて本件左側構成成分にコイル1を挿入することにより本件左側構成成分のフレームを形成することを試みたものと認めるのが相当であり,また,そうであるのに,コイル1の一部が本件右側構成成分に逸出したことから,I医師は,やむを得ず本件右側構成成分のフレームも形成したと認めるのが相当である。
(イ) 被控訴人の反論(争点3の被告訴人の主張イ(ア)a の前段)について
被控訴人は,I医師はカテーテル2を用いてコイル1を本件動脈瘤全体に挿入することにより本件動脈瘤全体のフレームを形成することを企図したものであると反論する。
しかし,①上記の(ア)のとおり,ダブルカテーテルは,脳動脈瘤が二つの葉状の構成成分を有する場合に,二つのカテーテルを各構成成分に挿入し,各カテーテルから各構成成分の全体にバランスよくコイルを行き渡らせるようにする手技である(I医師も,いったんは上記の目的で本件手術にダブルカテーテルを採用したことを認めるかのような証言をしている。証人I医師92項)ところ,カテーテル2は本件左側構成成分の塞栓を企図したものであるから,カテーテル2を用いてコイル1を本件右側構成成分にも挿入することを企図したというのは,不自然といわざるを得ないこと,②一件記録を精査しても,被控訴人が企図していたとする手技について紹介した文献は存在せず,当該手技は一般的なものでなかったといわざるを得ないこと(なお,乙B27の43頁には「ハート型のそれぞれの瘤・・・にコイルが移動しながら framing が可能な場合があり有効なこともある。」との記載があるが,この記載は,同頁に記載されているとおり,「1本のマイクロカテーテルでシンプルに塞栓術を行う場合」に,「Microplex コイルを使用する」ときの手技の紹介であって,ダブルカテーテルを用いて,Trufill Orbit Galaxy を用いる場合の手技の紹介ではない。)に照らすと,被控訴人の上記の反論は,争点3の控訴人らの主張イ(ア)b ①から④までの指摘の当否にかかわらず,採用することができない。
イ コイル1で形成されたフレームが立体的なものであったか。
(ア) コイル1の挿入後のDSAの画像(甲A12)が二つのリング状の形状を示していることに照らすと,コイル1で形成されたフレームは,不十分な8字状すなわちドーナッツ状の二次元的なものであったと認めるのが相当である。
(イ) 被控訴人の反論について
被控訴人は,コイル1で形成されたフレームについて,立体的なものであり,ドーナッツ状の二次元的なものにはなっていなかったと反論し(争点3の被控訴人らの主張イ(ア)aの第1段落の後段),①コイル1の挿入後のDSAの正面画像(乙A4の7)において,コイルが本件動脈瘤を網目状に覆っているように見えるのは,コイル1で形成されたフレームが,立体的なものであり,ドーナッツ状の二次元的なものになっていなかったことの証左である(争点3の被控訴人らの主張イ(ア)aの第2段落),②フレームは瘤壁に沿って形成されるものであり,瘤内に造影剤が流入するスペースがあることから,画像上,フレームがリング状に写ることがある(乙B28の2枚目の Fig.4 の左側の画像)のであって,コイル1の挿入後のDSAの側面画像(甲A12)が二つのリング状の形状を示していることは,コイル1で形成されたフレームがドーナッツ状の二次元的なものになっていたことの証左にはならない(争点3の被控訴人らの主張イ(ア)b(b))と指摘する。
しかし,コイル1の挿入後のDSAの正面画像(乙A4の7)を見ても,画像が粗く,せいぜい本件動脈瘤の中に何かが入っているように窺うことができるにすぎず,本件動脈瘤を網目状にコイルが覆っているように見えるとまでいうのには無理があるから,被控訴人の上記①の指摘は的確なものということができない。
また,乙B28の2枚目左側に,乙B28の2枚目の Fig.4 の画像について,同 Fig.3 の画像が撮影された後に3本のコイルが追加されることで,「フレームが幾重にも重なるような形状で挿入され」,「フレーミングとして理想的な形状」となったとの説明が記載されていることに照らすと,同 Fig.4 の左側の画像がフレーミング初期の画像であること
は明らかであるところ,「フレーミングとして理想的な形状」とされる同 Fig.4の右側の画像では,造影剤の流入は見えるものの,リング状の形状にはなっていないのであるから,被控訴人の上記②の指摘も的確なものということができない(なお,被控訴人の上記②の指摘及び乙B28の提出は,当裁判所が被控訴人の当審第9準備書面4項の説明ではよく分からないとして立証の補充を求めたこと〔令和2年10月1日付け事務連絡2項〕を受けてされたものであるところ,被控訴人は,控訴人らから上記と同旨の反論をされた〔争点3の控訴人の主張イ(ア)bの第2段落〕ものの,上記①の指摘以外に,この点についての立証の補充をしなかった。)。
そうすると,被控訴人の上記①,②の各指摘はいずれも的確なものということができず,被控訴人の上記の反論は採用することができない。
ウ コイル1で形成されたフレームが本件左側構成成分のネック部分までカバーするものであったか。
(ア) ①Trufill Orbit Galaxy は,外側から中心に向けてスペースを埋める特徴を有するもの(甲B32の1の60頁,乙B4の1,乙B11の115頁)であり,外側に広がっていく特徴を有していないといえること,②コイルとして Trufill Orbit Galaxy を用いるのであれば,各構成成分の長径と同じ二次コイル径の長いコイルを選択するのが当時の医療水準であった(前記(1)ア)ところ,本件左側構成成分の長径(高さ)が4.09㎜であった(認定事実(2)イ)のに,I医師は,コイル1として,二次コイル径3.5㎜のものを選択したこと(認定事実(3)),③画像(甲A13)上,本件再破裂の時点で,本件左側構成成分のネック部分のフレームが形成されていたようには窺われないところ,コイル6から9までの各コイルの挿入により上記部分が大きく膨らんでいることを併せ考慮すると,コイル1の二次コイル径は,本件左側構成成分のフレームを形成するには小さ過ぎ,そのために,コイル1では上記部分までカバーしたフレームを形成することができなかったと認めるのが相当である(なお,本件左側構成成分のフレームはコイル1のみで形成されているところ,コイル1について,被控訴人は本件左側構成成分の方に多く挿入された可能性があるとも説明する〔被控訴人の当審第8準備書面4頁3項〕が,カルテには「瘤内での distribution〔配分〕よく,2つの component〔構成成分〕に...挿入することができた。」と記載されている〔認定事実(3)ウ(ア)〕のであるから,上記の説明には疑義が残る。上記のカルテの記載からは,本件左側構成成分に挿入されたコイル1は長さ2.5㎝程度であったと窺われるところ,二次コイル径3㎜・長さ4㎝のコイル2が追加して挿入されてフレームが形成された本件右側構成成分と比較すると,本件左側構成成分のフレームの形成に用いられたコイルの量は少な過ぎるように窺われる。おって,コイル2について,被控訴人は本件右側構成成分のフィリングも兼ねていたとも説明する〔被控訴人の当審第7準備書面3頁(2)〕が,カルテには「acceptableな(許容範囲の)frame(フレーム)形成を行う事ができた。」と記載されているのである〔認定事実(3)ウ(イ)〕から,上記の説明にも疑義が残る。)。
(イ) 被控訴人の反論について
a 争点3の控訴人の主張イ(イ)について
被控訴人は,I医師においては,①コイル1として,不整形の本件動脈瘤に対応することができる Trufill Orbit Galaxy を選択し,②本件右側構成成分が短径(幅)2.24㎜・長径(高さ)4.35㎜であってその中間が3ないし3.5㎜であり,本件左側構成成分が短径(幅)3.42㎜・長径(高さ)4.09㎜であってその中間が3.5㎜であるところ,長径のみを考慮することは,短径を超えて母血管にコイルが飛び出す可能性があり,適切でないことから,二次コイル径3.5㎜が適切であると判断したなどと指摘し,I医師のコイル1の選択は適切であったと反論する(なお,被控訴人は,コイル1の長
さの指摘もするが,控訴人らは,コイル1の長さの適否を問題としていないので,以後,コイル1の長さの適否については触れない。)とこ ろ , 確 か に , 被 控 訴 人 の 上 記 ① の 指 摘 の と お り , Trufill Orbit Galaxy は不整形の動脈瘤でも適切なフレーミングが可能なコイルである(乙B16の430頁)。
しかし,被控訴人自身が,「第一に瘤壁に密着する安定したコイルフレームを作成することが重要である。そのためには,計測された動脈瘤径より一回り大きなコイルの選択(たとえば脳動脈瘤の長径に一致したコイル径の選択)が可能であればより達成しやすくなる。」と記載された文献(乙B25の85頁)を提出していること,被控訴人提出の乙B16の430頁には,「4.5㎜×3.4㎜×5.8㎜」の大きさの動脈瘤のフレーミングコイルとして二次コイル径6㎜のTrufill Orbit Galaxy を使用したと記載されていることなどに照らすと,被控訴人の上記②の指摘は,自ら提出した証拠の記載と整合しない内容であり,的確なものということができない。
そうすると,被控訴人の上記の反論は採用することができない。
b 争点3の控訴人の主張イ(イ)b(a)について
被控訴人は,Trufill Orbit Galaxy について,いったん外側に広がらなければ,外側から中心に向けてスペースを埋めていくことは不可能であって,外側に広がっていく特徴を有していると反論し,あたかも二次コイル径3.5㎜のものであっても,本件左側構成成分のネック部分までカバーしたフレームを形成することができたかのような主張もする(控訴人らは,控訴人ら第6準備書面11頁において,被控訴人がそのような主張をしているものと理解し,反論している〔争点3の控訴人の主張イ(イ)b)〕。)が,いったん外側に広がらなければ,外側から中心に向けてスペースを埋めていくことが不可能であるとしても,コイルが規格とされた二次コイル径を超えて外側に広がるとは軽々には考え難いところである(乙B4の1の二次コイル径7㎜の図示によると,コイルは不規則にループするものの,二次コイル径は7㎜を超えないとされている。)から,被控訴人の上記の反論も採用することができない。
c 争点3の被告訴人の主張イ(イ)b(b)について
被控訴人は,画像(甲A13)上,本件再破裂後,コイル6から9までの各コイルの挿入により本件左側構成成分のネック部分が大きく膨らんでいるのは,本件再破裂を来した上記部分にコイルを十分挿入したことで,コイルがフレームの隙間を超えて広がったか,又はフレーム自体が膨らんだためであり,密に塞栓できたことの証左であって,コイル1で上記部分までカバーするフレームを形成することができなかったことを意味するものではないと反論し,コイルがフレームの隙間を超えて広がることがあることの証拠として乙B31添付の写真の存在を指摘し,また,フレーム自体が膨らむことがあることの証拠として甲B34の5頁の図11の写真や乙B30の82頁の「いかに強固なフレームでも後から入れるコイルによって多少なりとも広がってくる」との記載の存在を指摘する。
しかし,乙B31添付の写真は,脳動脈瘤のネック部分が大きく膨らんだことを示すものではなく,脳動脈瘤のドーム部分(体部)が大きく膨らんだことを示すものであり,本件とは変形の部位や形成過程が全く異なっているものといわざるを得ない。
また,甲B34の5頁の図11の写真や乙B30の82頁の「いかに強固なフレームでも後から入れるコイルによって多少なりとも広がってくる」との記載も,脳動脈瘤のフレームのネック部分が大きく膨らむことがあることを示すものではなく,せいぜい脳動脈瘤全体のフレームがフィリングコイルの圧力でやむを得ず多少膨らむことがあることを示すものにすぎない。
そうすると,被控訴人の上記の指摘はいずれも的確なものということができず,被控訴人の上記の反論は採用することができない。
エ 小括
前記イ,ウの各(ア)のとおり,I医師は,本件左側構成成分のネック部分までカバーする立体的なフレームを形成することができなかったところ,これは前記(1)アの医療水準にもとるから,I医師にはフレーミングについての注意義務違反があったと認められ,Gとの間の診療契約上の債務不履行責任を免れないというべきである。」
谷直樹
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