大学病院が,治療を失念した3年間に食道病変が進展した事例,医師間の情報伝達等の不備のため約2年間に肺癌が治療した事例を公表
消化管内視鏡で見つかった病変に、検査・治療を行わなかった事例
「このたび、消化管内視鏡で病変があったにも関わらず、約 3 年間、患者さまに対して詳しい検査や治療が行われていなかった事故が発生しましたので、ご報告いたします。
1 患者さまは、本県在住の 70 歳代の男性で、胆嚢や膵臓精査の一環として、2018 年 9月に超音波内視鏡検査を行いました。その際同時に行った上部内視鏡検査で偶然に食道に病変を認めたため、内視鏡的に同病変を切除する方針としました。しかし担当医は、胆嚢や膵臓の病変のみ対応し、食道の病変に対する治療や検査を行いませんでした。
2 本年 8 月に担当医が交代し、新たに担当した医師が、過去にさかのぼって検査結果を確認していたところ、約 3 年前の内視鏡で食道の病変が存在していたことが明らかとなったものです。担当医はすみやかに内視鏡検査を行い、3 年前よりも病気が進展していることが明らかになりました。結果として、約 3 年間、詳しい検査や治療が行われていなかったことになります。
3 速やかに医療安全管理委員会を開催し、調査を行いました。その結果、同時期に多くの検査が行われたため、担当医が食道病変への対応を失念してしまったこと、この不備に関して他医師が気づけなかったことが課題として挙げられました。従来は内視鏡所見の見落としがないように、所見を依頼医が確認したかを電子カルテ上でチェックする仕組みで対応してきました。現在は、今回の事案を受け、重要な内視鏡所見に対し実際に追加検査や治療が行われたかを確認し、行われていなければ依頼医に督促する仕組みを構築するなどの再発防止に取り組んでいます。
4 患者さま及びご家族さまには、事故の発覚後すみやかに事実経緯を伝え謝罪しました。患者さまは現在も本院で治療を継続しておられます。」
CTで見つかった肺の異常陰影に、検査・治療を行わなかった事例
「このたび、CT で肺に異常陰影があったにも関わらず、約 2 年間、患者さまに対して詳しい検査や治療が行われていなかった事故が発生しましたので、ご報告いたします。
1 患者さまは、本県在住の 50 歳代の男性で、2019 年 10 月に他医療機関からの依頼で、本院で冠動脈 CT を撮影しました。その際撮影した CT で、偶然、肺に小さな異常陰影がみられたため、依頼元の医療機関に 2 ヶ月後に CT の再撮影を勧める返書を送りました。これとは別に、同医療機関から心疾患の精査・治療のために、別途、本院を紹介されました。外来で診察した担当医が冠動脈 CT の報告書を確認し、CT の再撮影を計画しましたが、その後に担当した医師にこの計画が伝わりませんでした。
2 本年 6 月になって、患者さまは背中の痛みを訴え、他医療機関で CT を撮影したところ、肺に腫瘍がみつかりました。精査・治療のために、本院を紹介されました。その際に診察した医師が、過去にさかのぼって検査結果を調べたところ、約 2 年前の冠動脈 CT で異常陰影が存在していたことが明らかとなったものです。結果として、肺がんも疑われる CT 所見に対して約 2 年間、詳しい検査や治療が行われていなかったことになり、この間に病気が進展しました。
3 速やかに院内に医療事故調査委員会を立ち上げて、調査を行いました。その結果医師間の情報伝達や情報収集に不備があったことが判明したため、さらなる改善に取り組んでまいります。これまでも予期しない重要な画像診断所見に対しては、依頼
医がその所見を確認したかを電子カルテ上でチェックする仕組みで対応してきました。
しかしながら今回の医療事故調査委員会の結果を受け、重要所見に基づき実際に追加検査や治療が行われたかを検証し、行われていなければ対応を督促する仕組みを新たに構築するなどの再発防止に取り組んでいます。」
谷直樹
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