弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日本医労連 第 6 次「新型コロナ感染症」に関する緊急実態調査と新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急要請書(第 9 次)

日本医労連は,2022年4月22日, 第 6 次「新型コロナ感染症」に関する緊急実態調査と新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急要請書(第 9 次)を発表しました.
http://irouren.or.jp/news/5358c7756ed4355d6bdd6ebc0ed231310b879ba7.pdf

「感染力の強い変異株やその亜種に対するには、日本の検査体制は未だまったく不十分です。繰り返す感染の波の収束時期に準備を整えるチャンスは幾度となくあったはずですが、これまで教訓は生かされていません。感染症対策の中心はワクチンと検査です。何度も医療崩壊を起こさないための施策を迅速に講じるべきです。感染拡大や症状に応じて、必要な医療をすべての患者に提供する体制を整えることは政府の責任です。下記項目の実現を強く求めます。」として,以下の対策を求めています.

1.検査能力の拡充を急ぎ、大規模検査をさらに拡充すること
(1)2021 年末に大幅に引き下げた、PCR 検査の診療報酬を見直し、大幅に引き上げることにより、医療機関が検査数を控えたり、検査を取りやめることのないようにすること。
(2)感染力が強く、軽症や無症状が多いオミクロン感染に対し、検査体制が極めて不十分であり、深刻な検査のひっ迫状況を解消するため、検査能力の抜本的な拡充を急ぐこと。公的な PCR検査を受けられる検査所を、各市町村に設置すること。
(3)有症状者への検査及び、すべての医療・介護、福祉従事者への検査に支障をきたさないよう、医療機関等への検査の安定供給に責任を果たすこと。症状が出た当日に検査しても偽陰性となることがあることを周知徹底させること。
(4)医療機関、高齢者入所施設および通所施設、学校、保育所等での定期頻回検査は、国が全額費用負担を行うこと。オミクロン株の「世代時間」に見合う頻度で検査できるようにすること。
(5)抗原検査キットを国民全体に無料配布できる規模で確保すること。当面、保育所、学校、事業所を通じての配布を行うこと。
(6)PCR 検査、抗原検査キット、抗体検査キットなどについて、「研究用」と称して市販されている未承認キットについては販売を禁止し、体外診断用医薬品を使用するよう、周知・徹底すること。
(7)まん延防止等重点措置の決定に際し、「ワクチン・検査パッケージ」を原則中止としているが、検査による陰性確認は生かすこと

2.ワクチン 3 回目接種を急ぐこと
(1)ワクチン接種が完了した高齢者や初期に接種した医療従事者の抗体が減少していることから、3 回目のワクチン接種(ブースター)を急いで実施すること。
(2)昨年 11 月の「8 カ月経過後に 3 回目接種」とした政府の対応は誤りであり、科学的根拠に基づく国民の安全確保に努めること。65 歳未満の国民についても、6 カ月接種を政府方針とすること。
(3)新型コロナウイルス感染症のワクチンについては、早期の実用化を目指し、国内でも多数の研究が精力的に行われ、通常より早いペースで開発が進められているとされているが、国内開発の進捗状況および開発時期を国民に明らかにすること。

3.医療機関等への支援を直ちに強化すること
(1)コロナ禍による全ての医療機関・介護事業所の減収を補填し、国の責任で地域の医療・介護体制を守ること。
(2)発熱外来への補助金を直ちに復活し、地域の医療機関が積極的に参加できるよう支援すること。
(3)感染を確認した診療所等が、経過観察・訪問診療などに協力できるように、地域医療全体の財政的支援を拡充すること。
(4)一般診療所の協力を促すためにも、コロナ診療に伴う感染等により休診を余儀なくされた場合の損失を補填する仕組みを構築すること。
(5)臨時医療施設について、安全・安心の医療が提供できるよう、運営体制や人員配置の基準を整備し、財政的支援を行うこと。
(6)医療用ガウンなどの個人防護具(PPE)について、輸入品に頼ることなく国内での安定供給を図るため、国産品の使用を優先させること。
(7)保育園、小学校等の休園・休校に伴い必要となる医療従事者の子どもの保育等の体制確保、院内保育拡大のための人的・財政的支援を拡充すること。
(8)メンタル相談窓口を設置し、心理カウンセラーなどメンタルサポートスタッフの配置を行うための財政補助を行うこと。

4.事業者支援を抜本的に強化すること
(1)高齢者介護施設や障がい者福祉施設、確保病床以外の一般病床・療養病床・精神病床に留め置かれコロナ病床に入院できていない実態、中等床以上で自宅療養を強いられている実態およびコロナ死亡場所の実態などを明らかにし、その解消に向け、医療・介護、福祉従事者の増員を行い、マンパワーの立て直しを図ること。
(2)「事業復活支援金」について、少なくとも持続化給付金並みに増額すること。審査の改善と体制を拡充し、支援の迅速化を図ること。
(3)緊急小口資金・総合支援資金の期間を延長し、償還免除の対象を拡大すること。

5.いのちを守る対策を強化すること
(1)昨年 11 月に公表した「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」を抜本的に見直し、現下のオミクロン株による感染拡大状況を踏まえた方針に改めること。
(2)医療機能を強化し、感染症病床を増設・確保を図ること。また、入院病床をさらに確保し、往診や訪問看護など在宅医療を支える体制の抜本的強化を図ること。病床確保の補助について、即応病床 1 床あたり休床 2 床まで(ICU・HCU 病床は休床4床まで)とする上限設定はやめ、医療従事者を確保するためにも充分な補助を行うこと。新型コロナを口実にした病床削減はやめること。
(3)精神科病院における感染拡大防止については、精神科病院特有の特性を考慮した、感染対策の指導・援助と財政補填を行うこと。
(4)施設やコロナ病床以外の入院について、速やかな入院や転院もしくは外部から必要な医療支援が行える体制を確立・強化すること。
(5)経口摂取薬の確保、検査・診断・投薬の迅速化、早期投与を可能とする仕組みを構築すること。注射薬や内服薬を各医療機関で常備できるよう、流通制限を解除し手続きを簡素化する
こと。
(6)感染拡大地域において濃厚接触者の特定を感染者任せにする無責任体制を直ちに改善し、保健所の人員体制と機能を抜本的に拡大・強化すること。
(7)自宅療養者の生活支援物資を迅速に届けられるよう、自治体に対する助成をおこなうこと。
(8)濃厚接触者の自宅待機に対する生活支援を確立すること。
(9)濃厚接触者の待機期間について、オミクロン株の科学的なエビデンスを踏まえた検討を行い、社会活動の維持を図ること。
(10)小学校休業等対応助成金の申請の簡略化、給付の迅速化を図ること。個人申請の場合、企業の同意がなくとも支給対象とすること。
(11)米兵等の入国、検疫などについて、通常の入国者と同様に扱うようにすること。在日米軍内の新型コロナウイルス感染情報を迅速に把握し、関係自治体と住民に公表すること。
(12)高齢者施設でのクラスター(感染者集団)発生において、集団感染をさらに招く恐れがある、療養する高齢の感染者を陽性の職員がケアする「陽陽介護」を直ちに中止させ、感染判明後、早期に医療機関に入院できるよう、必要となる病床を確保し、医療機関との連携を強化す
ること。
(13)病院でのクラスター発生事例について、その原因を調査・分析し、調査結果に基づいた病院や介護施設等(在宅含む)に特化した防護対策基準等を設け、感染症対策のための人材の育成を行うこと。
(14)医師や看護師、歯科医師など、医療関係職種の国家試験について、オミクロン株の流行で受験機会を失った学生等に対する追試を直ちに実施すること。
(15)すべてのエッセンシャルワーカー対象に、具体的かつ大幅な賃金改善を迅速に実施すること。
(16)地域医療構想は、感染症対応の病床を確保するという視点を欠いていることから、公立・公的 436 病院の再編・統合リストは撤回し、地域医療構想の推進は中止すること。
(17)保健所業務の民間委託を推進する事務連絡を撤回すること。個人情報を取り扱う業務や、相談・健康観察など保健師等の専門的知識・経験を必要とする業務を委託対象にしないこと。保健師・保健所職員の大幅増員を行うこと。
(18)無料検査所で判明した感染者の情報を直ちに HER-SIS に登録し、迅速に保健所につないで感染者を速やかにサポートする仕組みとすることこと。有症状の濃厚接触者など疑似症患者の医療への速やかなアクセスを保障し、確定診断に基づく薬物治療の遅滞なき開始など、すべての患者に適宜・適切に医療が提供できるようにすること。



谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ


by medical-law | 2022-04-23 23:39 | 医療