最高裁における弁護士の活動
いずれも弁護士として気をつけたい点です.
「① 一審,二審で憲法違反や判例違反等の主張はしていないのに,上告理由書・上告受理申立理由書で憲法
違反や最高裁判例違反の主張をすること。憲法問題等の紛争問題であれば,一審から主張すべきである。
② 刑事と民事で事実の条文の規定の仕方が異なることを見逃している(民事の場合は事実を争うことは後述
⑦⑧の理由から,認められない。刑事事件では,刑訴法 411条に基づき,上告理由がない場合にも職権で
事実や量刑がとりあげられることがあり,民事事件とは扱いが異なる)。
③ 民事訴訟において証拠を新たに提出する(民事では事実認定をしないので上告審で新証拠を取り調べるこ
とはない)。
④ 法的見解に関し,著名な学者の意見書として提出されるケースがあるが,控訴審までに提出するのが適
当(事実の評価意見であれば事実審まで,法律解釈の意見も効果的な活用という観点からは法律審に至る
までの間が望ましい)。
⑤ 上告理由書と上告受理申立理由書について,1個にまとめる,あるいはどちらかを引用する,コピペで文
言だけを変えるという方法の理由書を見かけるが,この 2 つの理由は条文上異なるもので,同じ主張である
はずはない。
⑥ 上告理由に控訴理由書を引用している書面があるが,昭和 20 年代の最高裁大法廷判例*16 で控訴理由
書の引用は,許されない。「控訴理由書記載の通り」という書き方をした場合,控訴理由書引用部分は,上
告理由を提出していないという扱いをされる。
⑦ 民訴法 312 条 2 項 6 号の理由不備,理由の食い違いの理解不足(当事者や弁護士の思っている事実と裁
判所の言う理由が食い違っているということではない。判決の主文を裏付ける理由が書かれていない,判決の
理由の中に食い違う理由が書かれているということを意味する)。
⑧ 経験則違反の主張が多いが,実際,多くは事実の評価の違いを主張したいケースであり,二審判決にお
ける事実認定を基礎とする上告審判決においては,事実認定を主とする経験則違反を理由とした上告審判決
は期待できない。
⑨ 「判例違反」の判例を広く捉えすぎているケースが多い(最高裁が考える判例というのは,事案の概要が
まったく同じである,それなのに,判決の結果が違うという場合にしか判例違反と言わない)。
⑩ 手続に問題のある訴訟が少なくない。訴訟手続の間違いは,憲法違反なので必ず上告理由になる。これを
見つけるためには 1回ごとの期日調書を取ることが大事になる。」
谷直樹
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