鎮痛剤の誤投与で重度の意識障害に(報道)
「2020年12月、石川県立中央病院で入院患者に誤った量の鎮痛剤を投与し、重度の意識障害が残る医療事故があったことが分かりました。病院は22日午後に記者会見を開き、詳しい経緯を明らかにするとしています。
県立中央病院によりますと、おととし12月、80代の入院患者が痛みを訴えたため、医師が点滴による鎮痛剤の投与を決めましたが、電子カルテシステムで薬剤を指示する際に誤った量や濃度を選択していたということです。
鎮痛剤を用意した薬剤師や投与した看護師も誤りに気付かず、患者はこのあと重度の意識障害となり、現在もその状態が続いているということです。
病院側は過失を認め、患者の家族に賠償金3200万円を支払うことで合意していて、22日午後3時から記者会見を開き、詳しい経緯や再発防止策について説明するとしています。」
北陸放送「「複数のヒューマンエラーが重なり…」“鎮痛剤の誤投与”で今も意識ないまま… 病院側が記者会見」(2022年8月22日) 1は、次のとおり報じました.
「ヒューマンエラーが重なったことが要因としています。おととし12月、石川県立中央病院で入院患者に誤った量の鎮痛剤を投与し、重度の意識障害が残る医療事故が起きていたことが明らかになりました。病院側は家族に対し賠償金3200万円を支払うことで合意しています。
岡田俊英院長
「誠に申し訳ございませんでした」
県立中央病院によりますと、おととし12月上旬、80代の入院患者が痛みを訴えたため、医師が鎮痛剤「リドカイン」の投与を決めました。電子カルテシステムで薬剤を指示する際に入力を誤り、結果的に短時間で適切な量より多く、高い濃度で投与してしまったということです。
鎮痛剤を用意した薬剤師や投与した看護師も誤りに気付かず、患者は重度の意識障害となり、現在も意識のない状態が続いているということです。
病院では、カルテのシステム画面が間違えやすいものだったことに加え、医師、薬剤師、看護師それぞれが必要な指示や確認を怠ったことが原因としています。
岡田 俊英院長
「複数のヒューマンエラーとそれらをチェックする機能が十分に機能せずに起こってしまったものと考えている。全職員が事故防止の徹底に努め、安全で良質な医療を提供することで信頼回復に努めていく」
病院側は患者の家族に賠償金3200万円を支払うことで合意していて、県は来月7日に開会する県議会9月定例会に賠償金を盛り込んだ議案を提出する方針です。
「複数のヒューマンエラーが重なって」起きた今回の事故。病院では、電子カルテシステムを改良するとともに、薬剤を指示する際の確認の徹底や注意喚起、医療安全に関する研修回数を増やすなどして、再発防止に努めるとしています。」
上記報道の件は私が担当したものではありません.
リドカインは、局所麻酔剤として知られていますが、末梢神経に対する興奮抑制作用があり鎮痛効果もあります.
電子カルテのシステム画面が間違えやすいものだったことからシステム画面の改善が必要です.
「医療事故の再発防止に向けた提言(第 15 号)薬剤の誤投与に係る死亡事例の分析」(2022年1月)は、「事例 6 処方時に間違いがあり過量投与に至った」として、
「・50 歳代、致死性不整脈
・リドカインの使用経験が少なかった医師は、添付文書を確認し、リドカイン 1 % 200 mL を 30 分で点滴投与と処方した。薬剤師は点滴速度を確認しなかった。看護チームはリドカイン点滴バッグの取り扱いが不慣れであり、自然滴下で指示通り点滴を投与した。
・投与開始約 15 分後、けいれんが出現し心肺停止となり、当日死亡。」
を記載しています.上記報道の件と同様の事故について、分析、検討されています.
上記提言24頁は、「薬剤投与工程における確認とは、エラーを検出し、検出したエラーを修正することであり、人間工学的にみると「妥当性チェック」と「照合型チェック」の 2 つの方策に分類される。妥当性チェックとは、患者の状態に対する処方内容が医学的・薬学的に適切であるかを確認すること、照合型チェックとは、投与する薬剤と確定情報(処方箋など)を照らし合わせて確認することである。この 2 つの確認方策は、薬剤投与工程である処方-調剤-投与の全工程において行われている。自分が行う方策は、どちらに比重をおいた確認なのかを意識して作業することが重要である(P27 図 2 参照)。」と記述します.
そして、
「提言2 院内のマニュアルは繁忙時を前提とした手順を定め、妥当性チェックと照合型チェックの確認内容がわかるよう具体的な内容を記載する。」
としています.
つまり、照合型チェックのみならず、指示量が妥当かのチェックについても意識して行うことが必須となる仕組みが必要です.
上記報道の事案は2020年12月の事故で、当時は上記提言はまだだされていなかったのですが、今後は上記提言を参考に再発防止に努めていただきたく思います.
医療事故の再発防止に向けた提言 第15号「薬剤の誤投与に係る死亡事例の分析」(2022年1月)
谷直樹
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