ナース・プラクティショナー(仮称)制度の創設に関する要望書
「高齢者のさらなる増加、地域包括ケアの推進等により、病気を抱えながら地域で療養する人々が、今後、さらに増加していきます。一方で、労働人口は減少しつづけるため、今後の少子超高齢多死社会においては、質の高い医療を効率的かづ効果的に提供できる医療提供体制の構築が不可欠です。看護師については、2014年に「特定行為に係る看護師の研修制度」が創設され、研修修了者の活躍が広がりつっあり、看護師のタイムリーな対応により、医療の質や患者や利用者のQOLが向上している実態も示されています。しかし、「医師の指示のもとでの診療の補助」を超えない仕組みである特定行為研修制度だけでは対応できない国民の医療ニーズがあるごとも明らかになりています。
諸外国では効率的な医療提供の一方策として、大学院修士課程以上の教育を受け、一定レベルの診断や治療などを行うことができる看護の資格(ナース・プラクティショナー制度)を創設する国が増加しでおり、制度導入によづて医療へのアクセスの改善、重症化予防、患者満足度の向上などの効果が出ていることが実証されています。
国民に安心・安全な医療・看護を提供し続けていくため、グローバル・スタンダードに沿ったナース・プラクティショナー(仮称)制度を創設していただくよう強く要望します。」
医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない。」と定めています。同法第20条本文は、「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。」と定めています。
保健師助産師看護師法第5条は、「この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。(昭二六法一四七・平一一法一六〇・平一三法一五三・一部改正)」と定めています。
同法第37条は、「保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。(昭二六法一四七・平一三法一五三・一部改正)」と定めています。
同法第37条の2は、特定行為を手順書により行う看護師は、指定研修機関において、当該特定行為の特定行為区分に係る特定行為研修を受けなければならない。
2 この条、次条及び第四十二条の四において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 特定行為 診療の補助であつて、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされるものとして厚生労働省令で定めるものをいう。
二 手順書 医師又は歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるためにその指示として厚生労働省令で定めるところにより作成する文書又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)であつて、看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲及び診療の補助の内容その他の厚生労働省令で定める事項が定められているものをいう。
三 特定行為区分 特定行為の区分であつて、厚生労働省令で定めるものをいう。
四 特定行為研修 看護師が手順書により特定行為を行う場合に特に必要とされる実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能の向上を図るための研修であつて、特定行為区分ごとに厚生労働省令で定める基準に適合するものをいう。
五 指定研修機関 一又は二以上の特定行為区分に係る特定行為研修を行う学校、病院その他の者であつて、厚生労働大臣が指定するものをいう。
3 厚生労働大臣は、前項第一号及び第四号の厚生労働省令を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。(平二六法八三・追加)」と定めています。
つまり、現行法では、看護師が「診療の補助」を行うためには,医師の指示を受けることが必要で、医師の指示が無ければ「診療の補助」を行うことができません。
在宅で療養している高齢者等についても、医師の指示が必要です。
しかし、医師が多忙でタイムリーに指示をだせないことがあります。7割以上の訪問看護ステーションが、医師の指示が得られず症状が悪化したことが「ある」と回答しています。利用者の状態が変化したときの看護師から医師への連絡が困難で、医師の往診はさらに困難です。
「特定行為研修制度」(2015年施行)により、従来よりは看護師がタイムリーに対応できるようになりましたが、医師の指示が必要なため限界があります。
そこで、看護3団体は、一定レベルの診断や治療などを行うことができる看護の資格(ナース・プラクティショナー制度)を創設することを要望しています。
法改正が必要になりますが、医師を増員することができないなら、在宅医療を充実するために検討すべき課題と思います。
谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
↓

