弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

信濃毎日、〈社説〉精神科身体拘束 患者の人権を守らねば

信濃毎日新聞は、2022年9月26日、「〈社説〉精神科身体拘束 患者の人権を守らねば」を掲載しました。

「精神科病院での患者の身体拘束は、やむを得ない場合があるとしても極めて限定的でなければならない。厚生労働省が進める要件の「明確化」はそれに逆行し、本来すべきでない拘束の正当化につながる懸念が大きい。

(中略)

厚労省が基準の見直しに動いたきっかけは、石川県内の病院で身体拘束を受け、肺血栓塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)で死亡した患者の遺族が損害賠償を求めた裁判だ。昨年10月、最高裁が病院側の上告を退け、賠償を命じた高裁の判決が確定している。

 基準に従って判断したと病院側は主張したが、判決は、身体拘束の要件を満たしていなかったとして、医師の裁量の逸脱を認めた。基準に治療の要件が加われば、同様の事例で拘束の違法性を問いにくくなる恐れがある。

 身体拘束を受けている患者は2013年以降、毎年1万人を超えている。人を縛って自由を奪うことは重大な人権侵害だ。拘束が当たり前のように行われている状況を改めなければならない。

 日本は諸外国に比べて精神科の病床数が多く、入院期間も際立って長い。民間の病院が大半を占めることも実態を見えにくくし、閉鎖性がかねて指摘されてきた。

 不当な身体拘束をなくしていくためには、現場の実態を把握することが何よりも重要だ。患者の人権が守られていない現状を改めないまま医療者側の判断の余地を広げる基準改定は認められない。」



谷直樹

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by medical-law | 2022-09-26 22:34 | 医療