弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

新型コロナウイルス感染症に係る確実な周産期医療体制の確保について

2022年8月に、コロナ陽性だった京都府内の妊婦が分娩先見つからず救急車内で出産したことが報じられています。

共同通信「コロナ陽性妊婦、救急車内で出産 陣痛後も分娩先見つからず」(2022年10月1日)は次のとおり報じました。

「新型コロナウイルスの流行「第7波」で感染者が増加した8月、陽性になり自宅療養していた京都府内の妊婦が、陣痛後に分娩先の病院が見つからず、救急車内で出産していたことが1日、複数の関係者への取材で分かった。車内に医師や助産師はおらず、救急隊が対応した。母子ともに健康だが、府内の産婦人科医は「危険な事例」と指摘した。
 京都中部広域消防組合(亀岡市)などによると、女性は無症状で、自宅療養中の8月3日午後9時20分ごろ、陣痛を訴え家族が119番。かかりつけの産婦人科の医院では感染防止態勢が不十分なため陽性者を受け入れられず、京都市内の病院と調整を図った。」


厚生労働省は、令和4年2月14日、事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る確実な周産期医療体制の確保について」を発しています。

「○ これまで、新型コロナウイルス感染症に係る周産期医療体制については、各都道府県において、周産期医療協議会等を開催し、新型コロナウイルスに感染した妊産婦の受入れ医療機関の設定を要請している が、新型コロナウイルスに感染した妊産婦が急増している中、一部の地域においてはすでに設定された医療機関のみでの対応が難しくな っている。その際には、診療所を含む産科かかりつけ医が、対面に限らず、オンライン・電話による診療での対応も含め、産科的な対応が必要 かどうかについて積極的に把握し、必要がある場合には基本的には自施設 で対応し、合併症の存在や感染症による全身状態の悪化などで対応ができない場合には対応が可能な医療機関に紹介いただくなど、周産期医療体制の維持に積極的にご協力いただくことも含め、周産期医療協議会等において検討いただくなどにより、確実な体制の確保をすること。
○ 新型コロナウイルス陽性または疑いのある妊産婦を専用病床で受け入れることが困難な場合には、産科的に問題がない場合は、新型コロナウイルスに対応した産科以外の病床や周産期医療機関以外の医療機関での入院についても検討すること。なお、その場合には、妊産婦の特性及び不安に配慮し、オンライン診療や相談を含めた、産科医師や助産師による往診・相談等の妊産婦に配慮した体制構築についても検討すること。
○ 都道府県においては、地域の関係者とともに、周産期医療体制の再確認・共有等を実施していただいているところであるが、産科的緊急処置が必要な妊産婦の受け入れを行う医療機関を確実に設定すること。なお、検討にあたっては、時間帯(例:平日、休日、夜間)ごとの体制や、自宅療養中等の妊産婦において産科的対応が必要となる場合等についても、それぞれご検討いただきたいこと。
○ 産科的緊急処置が必要な妊産婦の受入れを行う医療機関が確実に妊産婦を受け入れることができるよう、当該医療機関に妊産婦が集中することの軽減策(例:産科的管理の必要性が低い状態の妊産婦については、上記の医療機関以外で受け入れる等)について、周産期医療協議会等において検討いただきたいこと。併せて、自宅療養中等の妊産婦において、産科的対応ではなく、新型コロナウイルス感染症の症状悪化が認められた場合の対応について、周産期医療協議会等において検討いただくなどにより、必要な体制を確保すること。
○ 産科的緊急処置が必要な妊産婦の受入を行う医療機関のリスト及び当該医療機関における空き病床状況について、都道府県消防防災主管部局等を通じて各消防機関に共有すること。その上で、妊産婦から消防機関に出動依頼があった際、産科的緊急処置が必要であると判断した場合において、消防機関も即時に受入医療機関を設定し、救急搬送する方法について検討すること。
(参考)「新型コロナウイルス感染症に係る周産期医療の着実な整備について」(令和3年8月 23 日付け医政発 0823 第 16 号厚生労働省医政局長通知)
https://www.mhlw.go.jp/content/000822486.pdf


さらに、病床確保と周知徹底を以下のとおり求めています。

「○ 妊産婦については、地域において、妊産婦等の専門治療および新型コロナウイルス感染症患者の受入れが可能な医療機関を設定し、 当該医療機関と必要な調整を行った上で、搬送体制の整備及び病床の確保を行うとともに、他の医療機関への周知を行うこと。
(参考)「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策(サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について 」(令和2年3月1日付け事務連絡)
https://www.mhlw.go.jp/content/000601816.pdf
○ 以下の①~④を、新型コロナウイルスに感染した妊産婦を管理可能であると考えられる関係医療機関に周知し、妊産婦を受け入れることができる病床を可能な限り確保すること。
(以下略)」


かかりつけの産婦人科医院では新型コロナウイルスに感染した妊産婦を受け入れることができないとすると、誰でも感染する可能性があるのですから、陽性になった場合はどこが受け入れるか、予め体制を整備し妊婦に周知することが必要と思います。
報道からは、新型コロナウイルスに感染した妊産婦を受け入れることができる病床の確保が足りなかったのか、病床確保についての周知徹底、情報共有が足りなかったのか、は分かりませんが、このようなことがないよう、事例の検討と体制の点検が必要と思います。


谷直樹

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by medical-law | 2022-10-02 20:50 | 医療