弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

産科医療補償制度の成果と産婦人科の訴訟(既済)件数の減少

「産科医療補償制度レポートVol. 1」の「第 IV 章 産科医療補償制度の成果」に次の記述があります。

「産婦人科の訴訟(既済)件数は、本制度が創設される前年 2008 年は 99 件であったが、年々減少し2020 年は 38 件と半減以下となっている。
最高裁判所事務総局 『平成 25 年 7 月 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(社会的要因編)』において、『産科医療補償制度は、対象が産科に限られるとはいえ、公的な第三者機関が事故の原因分析等を行う仕組みが設けられた点、医療(特に産科医療)にリスクが伴うことを前提にこのリスクを社会的に負担するという観点から無過失補償制度が導入された点で重要な意義があるといえ、無過失補償制度について、産科以外の分野への展開の可能性も注目される』『産科医療補償制度は、施行後相当数の事件を処理しており、医療関係訴訟の事件数にも一定の影響を及ぼしているものと考えられる』と報告されている。」
「医師 1,000 人あたりの訴訟件数は、本制度が創設される前年 2008 年は産婦人科医が最も多く9.6 件であったが、2018 年には 4.3 件と大幅に減少している。」


たしかに、この2008年から2020年までのスパンでみる限り、医療訴訟は全体として緩やかな減少傾向ですが、産婦人科についてはとくに減少傾向が顕著です。
基本的には、再発防止の提言等により、産科医療の質のボトムアップが(部分的ですが)実現されてきて、脳性麻痺を生じる事故が減少してきたことがあるでしょう。

また、原因分析報告書から責任追及が困難と思われる事案の提訴が減ったことも一因と思います。
とくに、脳性麻痺については産科医療補償の要件を充たせば、で3000万円の補償が得られるので、それを下回る賠償しか期待できない高度の蓋然性までの因果関係立証が難しいと思われる事案が提訴されなくなったことも一因と思います。
裏からいうと、現在の産科医療で裁判になっている事案は、注意義務違反(過失)と因果関係が明白な事案が多いと考えられます。

この産科医療補償制度の成功経験が、他の診療科目においても「無過失補償制度」・「原因分析」・「再発防止の提言」のシステムを導入することにつながることを期待します。

谷直樹

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by medical-law | 2022-10-06 00:37 | 医療事故・医療裁判