弁護士職務基本規程第20条・21条
20条について、「本条は、職務基本規程2条に規定する義務を、改めて依頼者との関係において規定したものである。弁護士の独立性が弁護士の根本的な価値(コア・バリュー)であること、独立性が単なる理念ではなく倫理規律の対象であることから重ねて規定したものである。」と解説されています。重要な規定です。
(事件の受任について)
司法書士や行政書士に依頼の応諾義務があり(司法書士法21条、行政書士法11条)、医師にも応召義務があります(医師法19条)。しかし、弁護士には、事件受任義務がありません。
(事件の処理について)
弁護士は、専門技能の行使については裁量が認められています。
他方、その範囲に属さない事項について、弁護士は、依頼者の指示・決定を求めてこれに従う義務があります。事件の経過・帰趨に影響を及ぼす事項を必要に応じて報告して、依頼者が十分な報告と説明に基づく最終決定(自己決定)をする機会を保障しなければなりません。
プロフェッションとしての弁護士が依頼者と同体化し、隷属してはならない、とされています。
弁護士は、職務を遂行するにあたっては、専門家として委任の趣旨の範囲内において広い裁量権が認められていること、プロフェッションとしての公共的役割を担っていることから、依頼者の恣意的要求をただそのまま受け容れ、これに盲従するのみであってはならない、とされています。
法令違反とまではいえないがコップライアンス保持上疑問なしとしない行為を依頼者が依頼してきたときにとるべき対応については、弁護士のプロフェッションとしての公共的役割との関係で判断されるべきでしょう。
弁護士職務基本規程第21条について、「弁護士は、依頼者の権利や利益を最大限擁護しなければならない責務を負っており、これを怠れば、弁護士としての基本的職責を果たしていないことになる。弁護士が依頼者に対し受任者として負う善良な管理者の注意義務は、いずれも法律専門家としての一般的・平均的な弁護士に要求される水準でなければならない。しかし、このことは、弁護士が依頼者の恣意的な欲求や願望をそのまま充足すればよいことを意味するものではない。」と解説されています。
弁護士職務基本規程第20条と同21条は、表裏一体の規定です。
弁護士は、依頼者の権利や利益を最大限擁護する一方で、プロフェッションとして依頼者と適切な距離を保つことも必要です。
谷直樹
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