東京高裁、麻酔薬の過量投与と急性肝不全・肝性脳症・脳ヘルニアによる死亡との因果関係
「てんかん発作を起こして県内の民間総合病院に救急搬送された女性患者が薬剤を過剰投与され死亡したのは医療過誤だとして、患者の両親が病院側に損害賠償を求めた訴訟の控訴審が13日、東京高裁で始まった。1審は裁判所の鑑定を基に薬剤投与と死亡との因果関係を否定したが、患者側は1審鑑定を誤りとする医師の意見書を高裁に提出。病院側は意見書の却下を求めたものの、永谷典雄裁判長は「主要な争点であり、審理を尽くしたい」として意見書を証拠採用した。【松下英志】
患者は2010年4月7日に救急搬送され、翌日午前、病院側は両親に事前説明をせず患者に人工呼吸器を装着し、肝機能障害を生じさせる可能性のある麻酔薬プロポフォールによる全身麻酔療法を始めた。その後、麻酔薬チオペンタールなどを含めて規定量を超える薬剤を投与。患者は急性肝不全から肝性脳症を発症、さらに脳ヘルニアとなり、5月12日に死亡した。・・・」
上記報道の件は私が担当した事件ではありません。
一般に、術後の肝機能障害は肝虚血、麻酔薬の影響によるものが考えられますが、麻酔薬が肝機能障害を引き起こす機序は完全に解明されているわけではありません。過量投与についての統計もありません。そのため、裁判所鑑定が麻酔薬の過量投与と肝機能障害との関係について慎重な判断になったことも考えられます。また、裁判所鑑定には時として医療側への忖度がみられることもあります。
麻酔薬の過量投与がなければ急性肝不全・肝性脳症・脳ヘルニアによる死亡が無かったかが問題ですが、添付文書等で量に規制があること、麻酔薬によると考えられる急性肝障害が報告されていること等から因果関係が推定され、証明責任の事実上の転換が行われるべきと考えます。
最高裁の判断に注目したいと思います。
谷直樹
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