弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

神奈川県弁護士会「国の指定代理人による弁論準備手続の秘密録音に抗議する会長談話」

神奈川県弁護士会は、2022年10月20日、「国の指定代理人による弁論準備手続の秘密録音に抗議する会長談話」を発表しました。

「2022年10月11日、当会会員が原告訴訟代理人を務めている横浜地方裁判所横須賀支部で行われた国を被告とする損害賠償等請求事件の弁論準備手続において、被告国の指定代理人(防衛省職員)が、非公開であるはずの同手続の様子を秘密録音していた上、被告側が退席し、法廷内に裁判官・書記官・原告訴訟代理人弁護士のみが残った後にも、録音機を作動させていたという事件が発生した。
 卓上に隠されるように設置された録音機を覚知した裁判官が被告国の指定代理人に問いただしたところ、国の指定代理人が①期日前の打合せ時から録音機を作動させていたが、止めるのを忘れていた、②退席時にうっかり持っていくのを忘れた、③録音データは内部の打合せにしか使っていない、④録音していたのは本日の期日のみであり、本件の他の弁論準備期日の様子は録音していないなどと弁解し、③について他の国の指定代理人もその弁明に同調した。
 しかし、裁判所職員が裁判官立会のもと、録音機に残っている音声データを確認したところ、当該期日のみならず、同事件の7月以降に行われた期日を録音したデータが発見され、上記の被告国の指定代理人の弁明は事実と異なることが判明した。
 そもそも弁論準備手続は、手続を非公開とすることにより、双方同席のもとで自由闊達に議論を行い、早期に争点を整理し、解決に向けた話し合いをすることに大きなメリットがある手続である。
 今回の被告国の指定代理人による秘密録音は、手続を非公開とする上記の趣旨をまったく踏まえないものであり、民事訴訟制度の運用を根底から揺るがしえない問題であり到底看過できない。
 しかも、一層問題なのは、被告が一時退席し、裁判官と原告訴訟代理人弁護士が残された状況においても録音を継続していたことである。相手方がいない状況の中で裁判官との間で率直な意見交換をしようとしていたところ、それが録音されていたのであるのであるから、代理人弁護士の訴訟活動や裁判所の和解手続の円滑な進行に対する重大な妨害である。
 当会は、法務大臣及び国の代理人である東京法務局訟務部門などの関係各所に対し、本件事件の真相の解明と再発防止を求める申入れを行った。
 この申入れに対する誠実な回答を求めるとともに、当会は、国の指定代理人が行った秘密録音を非難し、厳重に抗議する。」


民訴法規則第77条は「法廷における写真の撮影、速記、録音、録画又は放送は、裁判長の許可を得なければすることができない。」と定めています。
普通、退席するときは書類、鞄等の荷物をすべて持って退席するのですが、席にファイルを置いて退席するのは不自然です。
指定代理人の弁解が事実に反し前の期日も録音していたことから、意図的に録音していたと考えるのが合理的です。
誰の指示で録音をしていたのか、明らかにすべきです。

谷直樹

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by medical-law | 2022-10-21 17:27 | 弁護士会