弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

「ワクチン接種と副反応被害 因果関係の判断に重要な「白木3基準」

日刊ゲンダイDIGITAL「ワクチン接種と副反応被害 因果関係の判断に重要な「白木3基準」【コロナワクチン接種後死亡を追う】」(2022年11月11日)に、ノンフィクション作家山岡淳一郎氏が次のとおり書いています。

「新型コロナワクチン接種の副反応疑いで重篤な被害を受けた人や遺族は、「予防接種健康被害救済制度」に基づいて医療費や、障害年金、死亡一時金などの補償を申請できる。民法の損害賠償請求では事実と結果(接種と死亡の因果関係)に「高度の蓋然性(確からしさ)」が求められるが、「迅速に幅広く」救済するためのこの制度では「高度の蓋然性」までは求めないと、次のように解釈されている。

反ワクチン陰謀論と推進論の不毛…「副反応疑い」は客観的情報が不足している

「因果関係の判定は、特定の事実が特定の結果を予測し得る蓋然性を証明することによって足りることとする」(1976年3月22日伝染病予防調査会答申)

 しかしながら、実際に救済制度が運用されるにつれて被害者が補償請求の申請をしたにもかかわらず、認められないケースも出てくる。納得できない被害者は、医療費や障害年金、死亡一時金などの不支給の取り消しを求めて行政訴訟を起こす。その裁判過程で東京大学医学部長だった白木博次教授が示した3要素が因果関係を判断する重要な基準となる。

①当該症状がワクチンの副反応として起こりうることについて医学的合理性がある。

②当該症状がワクチンの接種から一定の合理的時期に発症している。

③他原因によるものであると考えることが合理的な場合に当たらない。

 裁判所は、この3基準を重視して因果関係を判断している。

 たとえば、三種混合ワクチンの接種後、4歳の女の子が「急性脳症」で重度の障害を負ったケースでは、当初、補償申請が認められなかった。1992年、両親は納得がいかないと裁判所に訴えた。国は3基準について、ことごとく反論してくる。とくに③の他原因については「ヘルペスウイルスによるヘルペス脳炎を来した可能性が相当高い」とワクチン接種との因果関係を真っ向から否定した。

 これに対し、原告側は女の子を治療した東京女子医科大学病院の医師らを証人に立て、一つ一つエビデンスを示して論破する。

 ヘルペス脳炎についても、「診断に必要な血清、髄液検査、頭部CTスキャン画像検査、脳波検査等の各種検査を精力的に施行したが、いずれの検査においてもウイルス性脳炎感染を支持する陽性所見は得られず」と裁判官は国の主張を退ける。最終的にこう判決を下した。

「本件においては、因果関係が存在することを認定する要因である三つの基準を満たしており、厚生大臣が原告の本件症状と本件予防接種との因果関係の存在を認定しなかったことは、因果関係についての判断を誤ったものというべきであり、その誤った判断に基づいてされた本件各処分は違法であって、取り消しを免れない」


 白木3基準には、もっと注目したほうがいいだろう。 =つづく」


続きが読みたいです。

谷直樹

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by medical-law | 2022-11-12 22:26 | 医療事故・医療裁判