弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

県立中央病院、抗がん剤の血管外漏出で和解(報道)

山形県立中央病院は、平成29年5月、50歳代の女性患者に点滴でがんの治療を行った際、肘関節窩の静脈に注入した抗がん剤の血管外漏出により、 ひじを完全に伸ばすことができない障害が残った医療事故について、令和4年11月16日、1300万円を支払うことで和解したとのことです。

一般に、がん患者は、化学療法による血管の脆弱化に加え、外科手術後のリンパ浮腫などの循環障害などにより血管外漏出が起きやすい状態にあるため、より末梢側から、太く弾力のある血管の穿刺針の固定が容易な部位を選択する、とされています。
肘関節窩の静脈は選択すべきではない、とされています。
ところが、県立中央病院の院内のニュアルには、ほかに適当な場所がなく患者に説明した場合には肘関節窩の静脈に注入できる趣旨のことが書かれていたそうです。
そのマニュアル自体疑問ですが、本当にほかに適当な場所がなかったのかも疑問です。また、そのような血管外漏出のリスクの高い場所に注入した場合は、通常以上に血管外漏出を警戒し頻繁に観察する必要があったと思います。
過失は明らかで、早期に和解すべき事案だったと思います。

NHK「女性のひじに障害残る医療ミス 1300万円支払うことで和解」(2022年11月16日)ご参照

谷直樹

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by medical-law | 2022-11-25 07:21 | 医療事故・医療裁判