弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

市民病院がCT画像診断報告書見落とし事案を公表

滋賀県の高島市民病院は、2023年2月8日、3件のCT画像診断報告書見落とし事案を公表しました。
放射線科医が作成した画像診断報告書を主治医が見落し、診断、治療が遅れる事故は、全国の病院で起きており、再発防止への取り組みが行われています。他院の医療事故を教訓にさ事故予防に取り組んでいただきたいと思います。
なお、今回公表された事例はいずれも私が担当したものではありません。

「CT画像診断報告書見落とし事案について

1.事案の経緯
令和元年に患者様3人のコンピューター断層撮影(CT)検査のCT画像診断報告書で「がんの疑い」と記載されていたが、それぞれの主治医が見落としたことが判明いたしました。その後、患者様の2人は、令和2年6月と7月にそれぞれお亡くなりになりました。
なお、CT画像診断報告書の見落としは令和元年に判明しましたが、患者様の治療が続けられていたこと、また、ご家族様のご意向を踏まえまして、これまで公表を控えさせていただいておりました。
その間、ご家族様に事案のご説明と謝罪をさせていただき、合わせて公表について話し合いを進めてまいったところ、ご了解を頂きましたことから、本日、公表させていただきます。

2.事案ごとの概要
●事案1
平成31年3月に腹痛で救急外来を受診された際にCT検査を行い、CT画像診断報告書に記載の「胃がんの疑い」の指摘がされていたにも関わらず見落とした。
令和元年8月に外来に受診された際に判明いたしました。
当該患者様は、同年9月から別の病院で治療を受けられていたが、令和2年7月にお亡くなりになりました。

●事案2
平成31年1月に腹痛で救急外来を受診された際にCT検査を行い、CT画像診断報告書に「肺がんの疑い」の指摘がされていたにも関わらず見落とした。
令和元年11月に救急外来に受診された際に判明いたしました。
当該患者様は、転院搬送先の病院から転院された別の病院で治療を受けられていたが、令和2年6月にお亡くなりになりました。

●事案3
平成27年10月に当院に誤嚥性肺炎で入院され、CT検査を行った。その際のCT画像診断報告書に「両側乳がんの疑い」の記載があるにも関わらず、見落とされ事案 1 の判明による再調査の結果、当該見落としが令和元年12月に判明いたしました。

3.事案発生に伴う院内調査
事案 1 の確認後(令和元年11月12日~12月11日)、放射線科において、CT、MRI検査の画像診断報告書を「癌」「肉腫」のキーワードで検索し、主治医が主病名以外の重要所見を確認し何らかの対応を起こしたか再確認を行いました。
(結果)
・「癌」、「肉腫」のキーワードで検索抽出された画像診断報告書 13,904 件
・見落とし事案 1 件(事案3)

4.再発防止策
1)医療安全研修の実施
・診断レポート確認不足への対応研修の実施

2)画像診断報告書の内容確認の徹底
・電子カルテシステムに未読件数表示機能を追加し、担当医師による画像診断報告書の内容確認の徹底を行う。

3)放射線画像検査報告に関する手順書の整備と改定
・放射線科スタッフが重要所見の記載がある場合は、担当医師への報告を行う。
・特に緊急性の高い所見があれば、放射線科医師が担当医師に直接連絡を行う。
・予約外検査は、全例各診療科長が報告書の再確認を行う。」



谷直樹

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by medical-law | 2023-02-09 01:50 | 医療事故・医療裁判