弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

県立病院が、発熱の原因を内視鏡治療後の凝固症候群と判断し、十分な検査を行わなかったこと等から敗血症に伴う多臓器不全で死亡した医療事故を公表

静岡県立静岡がんセンターは、2023年2月8日、発熱の原因を内視鏡治療後の凝固症候群と判断し、十分な検査を行わなかったこと等から内視鏡治療後に死亡した医療事故があったことを発表しました。検査、診断のミスには、本来鑑別すべき疾患を思い込みで除外してしまうものがあります。この件もその1つです。ちなみに、これは私が担当したものではありません。

「当院において、早期胃がんの内視鏡治療を行い、退院後間もなく患者さんがお亡くなりになる医療事故が発生いたしました。
 患者さんは80歳代の男性で、2021年8月に早期胃がんに対し、内視鏡で切除する治療を受けられました。翌日から発熱とせん妄症状が出現しましたが、発熱の原因は内視鏡治療後の凝固症候群(内視鏡治療に用いる高周波電気メスに関連して術後に発熱や腹痛を生ずる現象)によるもの、またせん妄の原因は入院という環境変化によるものと判断し、内視鏡切除後4日目に退院となりました。退院翌日未明に患者さんの意識状態が悪化し、近くの病院に救急搬送されましたが、お亡くなりになられました。
 お亡くなりになられました患者さんには心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆様に多大なご心痛をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

 当院では、事故原因の究明と再発防止策の策定のため、外部の専門家を含む医療事故調査委員会を開催しました。その結果、死亡原因は敗血症に伴い多臓器不全に至った可能性が高いと判断されました。死亡に至る経過の中では、内視鏡治療の適応や手技は問題なかったものの、①発熱の原因を内視鏡治療後の凝固症候群と判断し、十分な検査を行わなかったこと、②せん妄の原因を環境変化によるものと判断し、他の疾患が原因となっている可能性を考慮しなかったこと、③内視鏡治療終了後退院に至るまで、ご家族に対して病状や注意事項に関する説明をしなかったこと、以上の3点が問題として指摘されました。
 当院は、本医療事故の重大性に鑑み、全診療科および全看護部門の責任者に対して、病院長から事故の原因と徹底した再発防止に努めることを訓示し、また当該診療科医師に対しては病院長から個別に強く指導いたしました。本医療事故については、静岡県東部保健所および東海北陸厚生局に届け出を行うとともに、医療事故調査・支援センター、公益財団法人日本医療機能評価機構に報告を行いました。2022年12月、ご遺族様と和解が成立いたしましたので、ここに本医療事故のご報告とともに公表させていただきます。

 当院といたしましては、今回の事故を深く反省し、二度とこのような事故を起こさないよう再発防止に努め、最善で適切な医療を提供できるよう、職員一丸となって努力してまいります。」



谷直樹

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by medical-law | 2023-02-10 21:05 | 医療事故・医療裁判