県立中央病院が顎の手術を受けた10代の患者が死亡する医療事故を公表(報道)
「愛媛県は去年2月、県立中央病院で顎の手術を受けた10代の患者が死亡する医療事故があったと発表しました。遺族とは示談が成立しているということです。
きょう県庁で記者会見した県立中央病院によりますと、死亡したのは県内在住の10代の女性患者です。
女性患者は去年2月、歯の噛み合わせの矯正や顎の腫瘍切除のため下あごの骨の手術を受けたところ、2日後の未明に容態が急変し患部などの腫れにより呼吸停止となりました。
その後、救急科の処置により呼吸は再開しましたが意識は戻らず、女性患者は手術から20日後に上気道の閉塞による低酸素脳症で亡くなったということです。
県立中央病院では専門部会を立ち上げて検証したところ、手術自体に問題はなかったが術後管理の段階で連絡体制など改善できる点があったと結論づけました。
きょうの記者会見で県立中央病院の菅政治院長は亡くなった患者や遺族に謝罪しました。
県立中央病院は、今回の医療事故を受けて夜間でも急変の前兆段階から救急科と連携して迅速な処置を行う院内救急対応システムを導入しています。
遺族とは今月15日に示談が成立したということです。」
あいテレビ「「早い時点で医師に相談していれば…」 下あごの手術受けた10代女性患者 医療事故で死亡 愛媛県立中央病院」(2023年2月17日)は、次のとおり報じました。
「愛媛県立中央病院は17日、県内に住む10代女性患者が去年2月、下あごの手術後に呼吸困難に陥り、20日後に死亡したことを発表しました。
(愛媛県立中央病院 菅政治院長)
「結果的に信頼を裏切ってしまう事になりました。亡くなられた患者様に心からお詫びを申し上げるとともにご冥福をお祈りいたします。残されたご遺族にも心からお詫びを申し上げたいと思います」
病院によりますと、死亡した女性は、去年2月、歯のかみ合わせを矯正するため、あごの位置を後ろにずらす手術を受けた後、呼吸困難に陥り、手術から20日後に死亡しました。
(愛媛県立中央病院 近藤裕司医療安全管理部長)
「できるだけ早い時点で宿直や救命救急、ICU業務のため院内に駐在している医師に相談や診察の依頼をしていれば救命できた可能性を否定できない」
手術の翌日、一般病棟に移った女性。夜になって吐き気や痛みを訴え、日が変わって午前2時半、日が変わって午前2時半、ナースコールを受け看護師がかけつけると呼吸困難感と強い吐き気、さらに顔面の腫れや下唇の内出血が確認されました。
その10分後、看護師が自宅で待機していた形成外科医に連絡しますが、医師はただちに病院に駆け付ける必要はないと判断。呼吸がしやすくなる対応を伝え、経過観察を指示します。
しかし、その30分後、患者は息がしにくいと訴え、看護師が別の看護師に応援を要請。吸引を行いましたが口や鼻から管が入らず、その後、呼吸が停止。
ここで看護師が救急科の医師を呼び、心臓マッサージを開始。数分後に救急科の医師が到着し、呼吸は再開しました。
しかし、手術から20日後、低酸素脳症で死亡しました。
(愛媛県立中央病院 近藤裕司医療安全管理部長)
「各看護師、医師の判断とか医療行為に過失はないが連絡における病院のシステム上の問題があるのではないか」
愛媛県立中央病院は、「手術や術後管理に明らかな誤りはない」とした上で、患者の容体が急変する前に看護師などが院内にいる救命医などに相談しやすいシステムを去年10月に導入したと説明しています。
愛媛県と遺族の間でおととい示談が成立し、17日、公表に至ったということです。
【手術後の経過】病院の説明
▽手術翌日
14:00 女性がICUから一般病棟に移される
21:36 ナースコールがあり女性が吐き気訴える
23:30 ナースコールがあり女性が痛みを訴える
▽手術の2日後
2:30 ナースコールがあり、女性が呼吸困難感と強い吐き気を訴える。前の日に比べて、手術跡が腫れて固くなっていた。顔面から首にかけて、口の中まで腫れ上がり、下くちびるも腫れが強く、内出血を起こしていた
2:40 看護師が自宅で待機している形成外科の医師に電話。連絡を受けた医師は、出血量が少ないことなどから、病院に急行する必要はないと判断し、経過観察を指示
2:10~25 ナースコールがあり、女性が息がしにくいと訴える。吸引チューブの挿入を試みるも、管が入らず
3:35 女性が呼吸停止状態に。救急科への緊急コールと、看護師による心臓マッサージが始まる
3:39 救急科の医師が到着。チューブの挿入が行われる
4:04 女性の呼吸が再開。再び集中治療室に移され、人工呼吸器による管理下に」
テレビ愛媛「県立中央病院 “歯のかみ合わせ”手術後10代女性死亡 医療事故認め遺族と示談「心よりお詫び」【愛媛】」 (2023年2月17日)は、次のとおり報じました。
「去年2月、愛媛県立中央病院で歯のかみ合わせをよくするための手術を受けた10代の女性がその後、亡くなったことが分かりました。
病院は17日に会見を開き、医療事故であることを認めました。
愛媛県立中央病院によりますと、亡くなったのは県内に住む10代の女性です。
この女性は、去年2月に歯のかみ合わせをよくするための下顎の手術を受けました。
手術翌日にICU・集中治療室から一般病棟に移されたあと、吐き気や痛み、息苦しさを訴えました。
その後、容体が急変、呼吸困難となり、再びICUに移されましたが、手術から20日後に低酸素脳症のため亡くなりました。
愛媛県立中央病院・菅政治院長:
「心よりお詫びを申しあげたいと思います」
愛媛県立中央病院は17日、会見を開いて女性の死亡を発表。
内部調査の結果、手術や経過観察に問題は無かったものの手術後の発症に医師がより早く対応していれば命を救えた可能性は否定できないとして、医療事故を認めました。
女性の遺族とは示談が成立したということです。
愛媛県立中央病院は再発防止策として患者の容体急変にいち早く対応できるよう、去年10月から病院内の体制を変えたということです。
病院は「今後このようなことが起こらないよう、より一層努力する」と話しています。」
産経新聞「10代女性、術後急変で死亡 医師直接診察せず 愛媛」(2023年2月17日)は、次のとおり報じました。
「愛媛県立中央病院(松山市)は17日、県内に住む10代女性が手術を受けた後に急変し、合併症で死亡する事故があったと発表した。女性が呼吸の苦しさを訴えたのに対し、看護師が自宅にいた担当医に電話で指示を仰いだのみで、院内にいた医師が直接診察していなかった。病院は術後管理に問題があったと判断。遺族とは15日に示談が成立した。
病院によると、女性は昨年2月、歯のかみ合わせを矯正するため、下顎の骨を削る手術を受けた。2日後の未明に息苦しさを訴え、看護師から連絡を受けた担当医は経過観察を指示。約1時間後に呼吸停止に陥り、意識が戻らないまま手術の20日後に低酸素脳症で亡くなった。
記者会見した菅政治院長は「救命することができず、信頼を裏切った」と陳謝した。内部の検証結果を踏まえ、夜間でも異変があった場合は看護師が救急対応の医師に連絡する仕組みに改めた。」
上記報道の件は、私が遺族の代理人として示談交渉を奨め、示談した事件です。
縦割りの医療体制はときとして救える命を失わせることがあります。
病院の発表によれば、術後管理に明らかな誤りはない、とのことですが、これは個々の医療従事者の術後管理の問題ではないという意味でしょう。
術後患者は急変することがあり、急変により重大な結果が生じることもあり得ますので、急変の兆候があった段階で院内にいる医師の診察が必要で、それが可能な体制が必要と考えます。県立中央病院の救命救急センターは、愛媛県内の重症救急患者の「最後の砦」として1981年に開設されました。その救命救急センターに連絡があれば、院内の医師が約1時間早く対応していれば救命できたと考えられる事案です。とても残念な結果です。今後このようなことのないよう術管理体制の充実・整備をお願いしたいと思います。
【追記】
NHK「県立中央病院 医療事故で10代女性死亡」(2023年2月18日)は次のとおり報じました。
「去年、愛媛県立中央病院で10代の女性が下あごの骨を切断する手術のあと首などが腫れ上がり気道が圧迫されて死亡する医療事故があったことがわかりました。
県は遺族と示談していて、病院側は「過失はなく医療ミスではないが術後の患者の健康管理が不十分だった」としています。
松山市の愛媛県立中央病院によりますと、去年2月、県内の10代の女性が、下あごの骨を切断し、歯のかみ合わせを矯正する手術を受けた2日後、顔や首などが腫れ上がって気道が圧迫され、呼吸困難を訴えたということです。
看護師は自宅待機の医師に連絡し、医師は呼吸がしやくするなるようベッドを起こすなどの対応を指示し、経過観察をしていました。
しかし、およそ50分後、容体が急変して呼吸停止となり、女性は人工呼吸器を付けていましたが、手術の20日後に死亡しました。
病院は、重大な医療事故があったとして遺族に謝罪し、病院を管理する県と遺族の間で示談が成立しているということです。
一方、遺族の意向で、示談の内容は明らかにできないとしています。
県立中央病院は、「過失はなく医療ミスではないが患者の容体急変への備えが不十分だった。院内の連携を強化する体制を構築して再発防止に努めている」と話しています。」
谷直樹
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