弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日弁連「特定秘密の漏えいによる秘密保護法違反に関する会長談話」

日本弁護士連合会は、2023年(令和5年)3月27日、以下の「特定秘密の漏えいによる秘密保護法違反に関する会長談話」を発表しました。

「この度、海上自衛隊の元1等海佐が特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)上の特定秘密を漏えいしたとして、懲戒免職処分(以下「本件処分」という。)を受けた上、秘密保護法違反を理由に書類送検されたことが明らかになった。報道等によれば、本年3月14日、元海佐は不起訴処分とされたとのことである。

元海佐は本件処分を受けたものの、公訴の提起には至らなかったため、そもそも秘密の内容が明らかにはならなかった。その結果、漏えいしたとされる特定秘密が真に秘密保護法で保護されるべき情報であったかを検証することはできない。元海佐が事実関係を認めていたとしても、本当に秘密保護法違反で本件処分を受けなければならなかったのかが検証されなければならないが、客観的な事件内容が不明であるため、それは不可能である。

何よりも、秘密保護法では一部の特定秘密は永久に秘密とされ得るのであり、元海佐が不起訴処分とされたことと相まって、本件処分が正しかったのかについて永久に検証し得なくなるおそれがある。これでは、政府による不当な情報隠しがなされても、是正することはできない。

衆議院情報監視審査会は、今回の漏えい事件を受けた勧告において、「同盟国・友好国の信頼を著しく損なう事案が生じた」と指摘した。また、経済安全保障分野における情報については、近時、主にアメリカ等との情報共有を念頭に、政府によるセキュリティ・クリアランス制度(秘密取扱者適格性確認制度)の導入が報じられている。

しかし、上記勧告は、何をもって「同盟国・友好国の信頼を著しく損なう」としたのかを全く明らかにするものではない。具体的事実を十分に検討することなく、情報漏えいについての不安を煽るものにすぎないというべきである。また、経済安全保障分野も含めた情報保全の必要性があるとしても、対象となる情報が真に保全されるべき情報であるかを検証できる制度が構築されなければ、政府が市民に対して情報を隠蔽するのを許すことになる。これでは、政府に対する民主的コントロールはなし得ず、立憲主義・法治国家も実現し得ない。

今回の漏えい事件で明らかになったのは、秘密保護法が「何が秘密かは秘密」と批判されてきたとおり、漏えいしたとされる特定秘密も特定されないまま担当公務員である元海佐が懲戒免職になったということである。

特定秘密を取り扱う担当公務員は、メディアから取材を受けた際などに、どこまで事情を話して良いかが分からず、とにかく口をつぐむ方向にならざるを得ない。このような萎縮効果こそ、秘密保護法がもたらす懸念として当連合会が指摘してきたことである。

その懸念が今回の漏えい事件でますます強まった以上、やはり秘密保護法は廃止され、又は抜本的に見直されなければならない。」


そのとおりと思います。

谷直樹

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by medical-law | 2023-03-29 13:23 | 弁護士会