広島弁護士会、広島刑務所への要望書
「前立腺肥大による尿閉塞症状等の診断を受けるなどした被収容者が排尿に伴う支障ないし苦痛を訴えている場合には、刑事施設及び被収容者等の処遇に関する法律第56条及び第62条に基づき、被収容者を広島刑務所内において、または広島刑務所以外の病院等に通院もしくは入院させて、手術を含む必要な措置を講じられたい。」という内容です。
広島弁護士会の判断は次のとおりです。
「⑴ 申立人の症状等に対する前立腺切除手術の必要性及び緊急性については、広島刑務所内外で泌尿器科医師の判断が分かれているため、当会が判断をすることは困難である。
しかし、少なくとも、同手術の施行は、申立人の症状等の改善には有効な手段であるとは思われる。
⑵ そして、我が国の医学学会においても、夜間、排尿のために1回以上起きなければならない症状は夜間頻尿と評され、夜間頻尿は、夜間に中途覚醒を引き起こし、睡眠障害を介して QOL を低下させることが示唆されているところである。
広島刑務所の認識を前提としても、申立人は、夜間3時間から4時間おきに、すなわち少なくとも夜間2回ないし3回程度はカテーテル等を使用した自己導尿により排尿を行っていることになるため、夜間の中途覚醒により申立人の睡眠は阻害されていることは明らかであるうえ、このような睡眠障害を介して同人のQOLが著しく低下していることが強く窺われるというべきである。このことは、申立人の主張どおり、同人が自己導尿に伴い強い痛みを感じ、或いは夜間の自己導尿が15回程度にもわたる場合にあっては、尚更そのように言えるのである。
⑶ 受刑者は、国家刑罰権の行使として自由刑に処せられたことによる制約を除き、個人として尊重されるべき基本的人権の享有主体であることは言うまでもない。そして、睡眠は、人間が生活を営む上での自然の摂理であり、健康の保持及び増進に必要不可欠なものであるところ、前記のとおり、申立人には、夜間の複数回にわたる自己導尿に伴う睡眠障害が日常的に生じていると認められ、健康それ自体を阻害し得る事態も生じており、自由刑に処せられたことによる制約を超える制約ないし支障が生じていると認められる。
このような申立人が置かれた状況は、国の責務である「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条1項)の確保が十分になされているものとは言い難く、また、「被収容者の健康及び刑事施設内の衛生を保持するため」の「社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置」(刑事施設及び被収容者等の処遇に関する法律第56条)が適切にとられているものとも言い難い。
申立人に関しては、速やかに、自由刑に処せられたことによる制約を超える制約ないし支障を取り除き、もって「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条1項)を確保する必要があり、その手段として、前立腺切除手術を含む医療措置その他適切な措置が講じられる必要がある。」
谷直樹
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