東京弁護士会、安全保障関連法が違憲であることを改めて確認し、 最高裁判所に違憲審査権の適切な行使を求める会長声明
「安全保障関連法が憲法違反であるとして国家賠償等を求める訴訟が全国各地で提起されている。2023年9月6日、最高裁判所第二小法廷は、東京地裁に提起されていた事件の一つの上告及び上告受理申立てに対し、上告棄却及び上告受理申立て不受理の決定を行ったが、定型文によるもので、実質的な判断に全く踏み込まないものであった。
安全保障関連法が明白に違憲であることについては、圧倒的多数の憲法学者のみならず、最高裁判事経験者ら(長官経験者を含む。)、内閣法制局長官経験者らが明確に指摘している。日本弁護士連合会及び当会を始めとする全国全ての単位弁護士会も違憲性を指摘し、速やかな廃止を求めてきたところである。法案の審議の際は、主催者発表によれば10万人を超える人々が国会前に集まるなど、近年例を見ない大規模な反対運動が繰り広げられた。法律専門家と市民が一緒になってこれほどの声を上げたのは、安全保障関連法が、日本の国のかたちを、外国からの攻撃を受けていなくても戦争ができる国へと根本的に変質させてしまうものであったからである。集団的自衛権の行使は現行憲法下では許されずこれを許容するには憲法改正をしなければできないと政府自身が長年に亘って答弁し続けていた。それにより、形成され、確立した憲法規範としての地位を占めるに至っていたはずの政府解釈を、時の内閣が、閣議決定という手続のみで、憲法改正権者である国民を一切関与させずに覆すことは、立憲主義及び国民主権に反するものである。そうであるにも拘わらず、最高裁第二小法廷は、本件の憲法上の重大性に何ら触れることなく、上告棄却・上告受理申立て不受理の決定を行い、憲法保障機能を発揮するという裁判所の責務を果たさなかったものである。
最高裁の違憲審査権は最高裁の地位と権能における要であり、憲法保障・立憲主義の最重要手段である。最高裁第二小法廷が、憲法保障機能を発揮するという責務を果たさなかったことは、極めて遺憾である。
全国各地の原告が提起した訴訟は、既に最高裁に係属しているものが他に複数あり、今後もその数は増えるであろう。上告受理申立てに対する上告不受理決定は最高裁として当該事件の法律問題に判断を示したものではなく、何ら判例としての意義、効力を有するものではないから、全国各地の原告が提起した他の訴訟において憲法に係る判断を行うことに何ら支障はない。最高裁の各小法廷は、今一度、憲法によって最高裁に与えられた地位と権能の核心は何なのか、それは何のために与えられたのか、今その地位と権能の持つ力を発揮せずしていつ生かすのか、真剣に顧みるべきである。
現在、この違憲の安保法制を実践に移すべく、いわゆる安保3文書が改定され、いわゆる敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有、軍事予算の大幅拡大などが進行しつつある。このような状況の下、最高裁の果たすべき役割はますます大きく、我々は、憲法保障を等閑にした本決定に強く抗議し、安全保障関連法が違憲であることを改めて確認するとともに、最高裁に違憲審査権の適切な行使を強く求めるものである。」
谷直樹
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