兵庫県病院局が、ボスミン(アドレナリン)を希釈しなかった医療事故を報告
医師は術中の止血のためにボスミンの準備を看護師に指示し、 看護師は医師に耳鼻咽喉科の手術で通常使用しているボスミン液でよいのか確認した上で、ボスミンを注射器に入れ、医師に提供しました。医師は、使用目的(止血)を伝えると、当然に、適切な薬剤(100 倍に希釈されたボスミン)が準備されるものと思い、具体的に希釈の指示をださず、看護師は、医師から「いつも使用しているものでよい。」と言われたため、ボスミンを希釈せず注射器に入れて渡した、とのことです。
病院の再発防止策は、以下のとおりです。
・通常とは異なる使用方法で薬剤を使用する場合は、手術開始前に具体的な使用方法を全員に伝え確認する。
・ 指示出し・指示受けの際は、医師・看護師の双方で、正しい薬剤名、使用目的、濃度、量を確認する。
・ 薬剤の塗布や散布で注射器を使用する場合は、注射目的と区別し、色付き注射器を使用する。
これは私が担当したものではありません。
ボスミン(アドレナリン)の希釈に関する事故は以前からあり、注意喚起がなされています。
「医療事故情報収集等事業 第33回報告書」でも取り上げられています。
「ボスミン ® 注1mg およびボスミン ® 外用液0.1%はアドレナリンを有効成分とする製剤の販売名であり、臨床現場では一般的に「ボスミン」と呼ばれている。」「アドレナリンは各種疾患及び病態に対し有効に作用する一方で、その投与量によっては心室性期外収縮や急激な血圧上昇を誘発する可能性もある。そこで医療現場ではアドレナリンの希釈倍数間違いは患者に与える影響が大きいことから、ボスミン ® 注1mg およびボスミン ® 外用液0.1%はアドレナリン原液の1,000倍希釈液であることを伝える呼び方として『1,000倍ボスミン』という呼び方がなされることがある。」
「ボスミン ® 注1mg およびボスミン ® 外用液0.1%に含まれるアドレナリン希釈倍数に関連した5件の発生場所はすべて手術室であった。(図表Ⅲ - 2- 31)。ボスミン ® 注1mg は、患者の急変や、局所麻酔の処置などの場合に使用するため病棟や外来、ICUなど多くの場所で使用されていると考えられるが、アドレナリン希釈の呼称に関連した医療事故は手術の場面において発生している。」
「5件の事例のエラーには、「手術室での医師の指示→看護師の指示受け・薬剤の準備→医師へ調製した薬剤を渡す→医師が実施する」というそれぞれの出来事とその流れの中で発生したことが共通している。」
「指示者は意図していることを明確な表現で指示すること、指示受け者は指示内容に疑問が生じた場合は、その疑問が解けるまで確認してから実施することが重要であることが示唆された。」
「○倍ボスミン」という呼称で指示されるアドレナリン希釈倍数について、医療スタッフ間で必ずしも共通認識とはなっていないまま、言葉が使われている事例が報告されている。医療機関の改善策には、指示の解釈の間違いを防ぐために、①アドレナリン希釈倍数の呼称を院内で統一する対策、②「○倍ボスミン」という呼称でアドレナリン希釈倍数を表現することをやめる、の2つがあげられており、医療機関の状況にあわせた現実的な対応策の検討が望まれる。散剤においては医療事故防止対策の面から、「100倍散」などの表現から「○%散」の表現に改善されたが、今回のような注射液や消毒液などの液剤においては、用時希釈をして用いる製剤もあるため、その希釈操作を示す表現としての「○倍液」が用いられる場合もあり、その使用にあたっては、何を○倍に希釈するのか、を明確にしてから使用する必要がある。また、非常勤の医師が通常勤務している医療機関のルールで指示を出し、非常勤として勤務している医療機関で思わぬ解釈間違いを生じた事例もあったことから、正しく意図を伝えることが重要であると考えられた。」
谷直樹
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