医療事故情報収集等事業 第75回報告書
2023年7月~9月に報告された医療事故情報1627件をもとに事例の分析を行っています。
分析テーマは、「インスリンバイアル製剤の過量投与に関連した事例」と 「閉鎖式コネクタに関連した事例 」を扱っています。
インスリンバイアル製剤の過量投与を防ぐために以下の改善策が示されています。
1)指示入力
インスリンバイアル製剤を処方する場合の上限の量を設定し、それ以上は処方できないようにするとよい。一般的には上限を100単位としてよいのではないか。
インスリンの指示量は「単位」に固定しておくと間違いを防ぐことができる。
2)注射処方箋の表記
最も重要な情報である「投与単位数」が見やすくなるように表記の見直しを検討するとよい。
3)GI療法の標準化
GI療法の組成を院内で標準化すること、さらには全国で標準化することが望ましい。
標準化した希釈方法の周知にも工夫が必要である。院内で統一した希釈方法の一覧表をポスターにして掲示したり、ポケットに入る大きさのシートにして職員に配布したりするとよい。
4)インスリン専用注射器の周知
インスリン1バイアル全量を1回で投与することはなく、どんな時でも例外なくインスリン専用注射器を使用することを理解する必要がある。
注意書きよりもインスリン専用注射器を見本のような形でバイアルに付けるとよいのではないか。
「インスリン専用注射器を使うこと」だけでなく、正しい使用方法も教育する必要がある。
5)教育
一方通行の講義ではなく、インスリンのバイアルや専用注射器を実際に扱うような研修を行うことが望ましい。
入職時に自施設のインスリンに関するルールを周知することが必要である。
6)モノの改善
1バイアル100単位などの規格が望まれる。
静注に適した製剤が必要なのではないか。さらに、標準化された組成でプレフィルドシリンジ製剤ができると望ましい。
インスリン専用注射器は明らかに見分けがつく形状にすることが必要ではないか。
インスリンバイアル製剤にはインスリン専用注射器しか接続できないような構造にするなど、
インスリンを混注するためのペン型デバイスなど、より簡便で間違えにくいモノの開発が期待される。
閉鎖式コネクタに関連した事例 を分析した結果、次の指摘がなされています。
コネクタの接続を外す際は、どの部分を外すべきか、その理由を考えながら操作する必要がある。
開放式コネクタと閉鎖式コネクタの構造の違いを理解し、正しく使用する必要がある。
医療機関の物品管理や医療安全管理の担当者は、どの部署でどのような製品が使用されているかを把握するとともに、同一ラインに異なるコネクタを使用しないなど、可能な限り統一化を図り、整備していく必要がある。
「外観の類似した薬剤の取り違えに関連した事例(第45回報告書)」では、次の指摘がなされています。
正しい場所から取り出した薬剤が意図した薬剤と外観が似ていた場合、確認がおろそかになってしまう可能性が高いため、薬剤を補充する場合は、正しい場所に収納することが重要である。
内服薬と外用薬でも液体製剤は外観が類似している製品があるため、薬剤を投与する直前の薬剤名の確認を徹底すると共に、外用薬をベッドサイドに置かない、または容器だけで保管するのではなく、薬袋に入れたままにして内服薬と外用薬の区別がつきやすいようにしておくなど、形状などに惑わされない工夫により取り違えを防ぐことができる可能性がある。
手にした薬剤を形状や色などで判断せず、製品ラベルに記載された薬剤名を見て指示と照合するという基本的な手順を遵守することが重要である。
製薬企業においては、外用薬の容器を内服薬には見えないような形状にするなどの工夫をお願いしたい。
部署や病棟においても、取り出した薬剤に表示されているバーコードで薬剤名等が簡便に判別できるシステムなどの普及が望まれる。
谷直樹
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