弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

入院患者の脳梗塞発症に血栓溶解療法を実施しなかった事案(報道)

男性(当時81歳)が入院中の2014年1月に脳梗塞を発症し左半身のまひなどが残り16年5月に肺炎で死亡した事案で遺族が病院の運営者に対し、慰謝料など3081万円を求めて東京地裁に提訴したと報じられています。血栓溶解療法を実施しなかったこと、説明義務を果たさなかったことを理由としているようです、
この報道の件は私が担当したものではありません。

2014年ですから「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針 第二版」(2012年)が参考になります。「アルテプラーゼ静注療法は、発症から 4.5 時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害患者に対して行う」「発見時刻は発症時刻ではない。発症時刻が不明な時は、最終未発症時刻をもって発症時刻とする」とされていました。

なお、第三版(2019年)では「発症時刻が不明な時でも、頭部 MRI 拡散強調画像の虚血性変化が FLAIR 画像で明瞭でない場合には発症 4.5 時間以内の可能性が高い。このような症例に静注血栓溶解療法を行うことを、考慮しても良い」とされています。

また、脳梗塞を発症する前のに予兆症状がなかったかも問題になるところでしょう。
この訴訟の推移が報じられることを期待します。

上毛新聞「治療が不適切と遺族が富岡総合病院を提訴 東京地裁」(2023年12月26日)御参照


谷直樹

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by medical-law | 2023-12-27 09:57 | 医療事故・医療裁判