弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

病院が肝切除術中の患者死亡事故3件の再発防止策を公表

東海中央病院は、2016 年 2 月、2018 年 8 年、2022 年 2 月に起きた医療事故(肝切除術中の患者死亡事故)の再発防止策を公表しました。

「1事案目
① 適応外医療の実施に関する方策の提示
医学的適応・ガイドラインを逸脱するような医療、高難度に分類される手術の実施については慎重に判断することが求められる。自施設で実施可能であるか再検討の必要があり、具体的な対応策の提示まで原則実施しない方針とする。また、適応外医療の実施後にはその経過を報告する手順を作成しておく必要がある。

② 手術適応症例の明確化
外科診療科においては自施設で対応可能な手術症例を明確化しておく必要がある。ハイリスクな症例は専門施設への紹介、紹介が不可能な場合は医局からの専門医の応援、指導を依頼する。また、患者には積極的にセカンドオピニオンを提示する。

③ 術前・術後カンファレンス実施体制の構築長時間ならびに通常よりも出血量が多いと予測されるような手術症例に関しては、スタッフ間で情報共有しておくことが求められる。診療科スタッフ、手術室看護師、麻酔科と手技や手順の確認、術後にも問題点を検証する会議体の構成が必要である。これは全診療科の方針として求められる。

④ 緩和チームの関与体制構築
緩和医療の選択肢があがった際に、多職種で構成された緩和ケアチームと担当医ならびに患者が話し合う機会を作ることが必要である。緩和ケアチームは主治医からの依頼だけでなく、スタッフからの依頼にも柔軟に対応しチームとして関わっていくシステム構築を行う。

2事案目
① 執刀医師団の技量向上のためのサポートについて
学会などが主催する技術的サポート(トレーニングコース)はないため以下の点について留意する事。
・肝切除の経験がある医師が助手に入るなどの体制を作ることが望ましい。
・所属医師の技量や経験数の把握とモニタリングを行う事が望ましい。
・定期的な外部医師による指導の機会を設けることが望ましい。
・専門医資格を有していない者同士で執刀団を編成したときの指導体制を構築する必要がある。

② インフォームド・コンセント管理体制について
インフォームド・コンセント文書内における、特に生命的なリスクの発生率の記載や、具体的な治療成績の記載、リンパ節郭清の範囲とそれに伴うリスクの記載、どのような説明項目に同意したかのチェックリストの掲載が求められる。また、インフォーム
ド・コンセント委員会を定期開催とし、文書審査体制を充実させ、院内全てのインフォームド・コンセント文書の標準化と、内容の定期的な見直し(更新)を行うことが望ましい。また、同委員会主催による「インフォームド・コンセントに関する院内研修会」を行うなど、患者の権利を確保するための最新の考え方について、適切な教育の機会を提供することを提案する。

③ 柔軟な手術日程の変更体制の確保について
進行の速い癌の場合でも1週間程度の延期ならば許容されると考えられるため、スタッフがそろうときに手術を延期することが望ましい。急遽、執刀医師団の編成が変更となり全体的技量に変化が生じる恐れがある場合は、手術日程の延期を積極的に検討することが望ましい。

④ 手術死亡事例の安全管理部門への報告体制について
手術中死亡が発生した場合、事故該当性について当該医療者間で判断するのではなく、全例を直ちに医療安全部門へ報告する体制を構築する必要がある。院内規定に明記し、全職員への周知、教育、読了管理の徹底が求められる。またポケットマニュアル内に明記し全職員が携行することを提案する。

⑤ 麻酔科医師の確保について
一人の麻酔科医師による並列麻酔が常態化することのないよう、引き続き、麻酔科医師確保に務められたい。

⑥ 手術動画の録画・保全体制について
手術映像の録画・保全が可能となるよう、計画的に撮影機器を整備することが望ましい。

3事案目
① 自施設で対応可能な手術症例の明確化
1) 難易度が高い手術実施に関して
一連の術中死事案を鑑みて肝切除術は実施しない。その他、難易度が高い外科手術(日本消化器外科学会、消化器外科専門修練カリキュラムに記載されている新手術難易度区分での高難度手術※)、特に専門性が高い肝胆膵手術(胆嚢摘出術は除く)、食道
手術の実施に関しても、2)、3)、②に述べた事項を鑑みて行うこととする。

2) 外科診療科の質評価の実施
専門医取得までは必ず専門医資格をもった指導医の元で手術を行うなど術者の資質管理、手術成績の定期的公表など、診療科としての基準を提示する必要がある。また、カンファレンス制度の在り方を再検討して複数の診療科の参加や多職種の参加を可能
とするシステム構築が求められる。

3) 手術再開にあたっての基準作成
学会の専門資格(日本外科学会、日本消化器外科学会の専門医、指導医、日本内視鏡外科学会の技術認定医、日本肝胆膵外科学会の高度技能医など)の有無による術者規定を設けるなど、第3者からの評価後に再開するなどの基準策定が求められる。

② 専門家が関与する検証体制の確立死亡症例だけではなく、警鐘的な重大事例に対して報告基準を明確化して外部の専門家が第3者として評価・検証する体制の構築が求められる。

③ 医療安全管理体制の再構築
医療安全管理部門の体制強化を目標に既存のメンバー交代、再教育、ならびに増員が必要で、多職種で構成されたメンバーでの再構築が求められる。また、医療者の主観に依存しない事例報告システムの導入、死亡事例発生時のマニュアル再考など、迅速かつ実効性を伴う医療安全管理の新たな施策の実行が求められる。

④ 診療科間・多職種の連携体制の構築
多職種で検討するカンファレンスならびに診療科を越えたカンファレンスの実施が可能となる仕組みの構築が求められる。TeamSTEPPS の導入等、チーム医療の構築と実践が文化として成し遂げられるための方策が求められる。

⑤ 内部通報窓口の設置と職員への公表マニュアル作成
内部通報窓口の設置ならびに公表マニュアルの策定を行い、職員への情報提供と問題提起が容易になされるような風土・文化形成づくりが求められる。

⑥ 執行幹部の在り方・外部組織のモニタリング体制構築
医療事故調査制度の理解が十分でないことから院長はじめ病院幹部に対する再教育が必要である。また、組織としての透明性確保のため外部委員の招聘、他医療機関との相互チェック体制の構築、外部医療機関からのモニタリング・医療者以外の監視を取り入れるなどの方策、第 3 者機関が介入する仕組みが求められる。
上記の施策の策定については幹部のみならず職員全体で取り組むことが求められる。

⑦ 高次医療機関との連携強化
医師派遣医局の意向とは独立した院内の医療ガバナンスの確立、高次医療機関との密接な連携、診療体制に見合った診療内容の精査・実施を行う必要がある。今回問題となった診療科だけでなく他の診療科にも求められ、診療実績の見直しとさらなる高次医療機関との連携強化と適切な紹介体制の構築が求められる。
上記はもとより2事例目の再発防止策の継続的な実施(再発防止策に掲げられた①~⑥の項目)の継続的な対応も求められる。」


谷直樹

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by medical-law | 2024-03-21 19:53 | 医療事故・医療裁判