弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

⽇本⿇酔科学会 静脈⿇酔薬プロポフォールの不適切使⽤について

アマゾンプライムビデオで2024年10月14日配信のバラエティー番組「KILLAH KUTS」で「麻酔ダイイングメッセージ」と称して「誰かに殺され…意識を失う間際に犯人の手がかりを書き残す“アレ”を麻酔で再現!相方の残したメモを頼りに刑事役の芸人は犯人を導き出せるのか…!?」という内容で、プロポフォールが使用されました。。
「当番組における麻酔の投与は胃カメラ検査を目的とし 医師による監修のもと安全性に配慮した上で 通常検査で行われる方法と同様に実施しております」というテロップが流されたとのことです。
胃カメラ検査は口実で、ダイイングメッセージのための投薬であることは明らかでしょう。

これについて、⽇本⿇酔科学会 は、2024年10月16日「静脈⿇酔薬プロポフォールの不適切使⽤について」を発表しました。

「近年、⼀部のメディアにおいて、医療において厳格に管理されるべき静脈⿇酔薬が、娯楽やいたずらの⽬的で使⽤される場⾯が⾒受けられます。特に、10 ⽉ 14 ⽇配信開始の番組において、プロポフォールが内視鏡クリニックを舞台に使⽤され、何らかの外科的処置を必要としない⼈物を意図的に朦朧状態にするという内容が含まれていることを知り、深い憂慮を抱いております。
プロポフォールをはじめとする静脈⿇酔薬は、本来、⼿術や検査時の鎮静を⽬的に、医師の厳重な管理のもとで使⽤されるものです。特に、これらの薬剤は呼吸抑制のリスクを伴うため、必ず⼈⼯呼吸管理が可能な環境で使⽤される必要があります。
この点については、マイケル・ジャクソン⽒の死亡事故などでも広く知られているように、適切な医療管理が⾏われない場合、⽣命に危険を及ぼす可能性があります。
したがって、このような⿇酔薬をいたずらに使⽤する⾏為は、極めて不適切であり、⽇本⿇酔科学会として断じて容認できるものではありません。また、このような使⽤⽅法が誤ったメッセージを国⺠に伝え、⿇酔薬の安全な使⽤に対する信頼を損なうことを深く憂慮しております。
⽇本⿇酔科学会は、このような誤った使⽤を強く⾮難し、⿇酔科医ならびに関連する医療従事者には、厳格なガイドラインに従って静脈⿇酔薬を適切に管理し、いかなる場合にも不適切な使⽤を避けるよう強く要請いたします。
今後とも、安全で効果的な⿇酔管理を推進し、患者様の安全を最優先に考える医療を提供することを⽇本⿇酔科学会としてお約束いたします。 」


2015年にBS朝日の「3B juniorの星くず商事」でヘリウムガスを吸引した12歳の少女が脳空気塞栓症を発症した件で、日本小児科学会が「Injury Alert(傷害速報)No. 53 ヘリウムガス入りスプレー缶の吸引による意識障害」を発表したことを想起します。


谷直樹

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by medical-law | 2024-10-21 00:08 | コンプライアンス