弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

MWJ HPV ワクチンに関する NIIGATA Study の誤った広報記事に関する コンプライアンス違反に関する予備調査結果の通知に関する要望補

薬害オンブズパースン会議(MWJ:Medwatcher Japan)は、2024年11月5日、「HPV ワクチンに関する NIIGATA Study の誤った広報記事に関するる要望書」を提出しました。


1 貴大学の2024年9月25日付「新潟大学広報記事の誤認の訂正及びその原因検証実施の要望書について(通知)」1について、要望致します。
本通知は、当会議が2023年1月18日付で貴大学に提出した「『 HPV ワクチンの有効性と安全性の評価のための大規模疫学研究』(NIIGATA Study)に関する新潟大学広報記事の誤認の訂正及びその原因検証実施の要望書」2及び同年2月17日付「回答及び追加要望」3に関する貴大学の回答です。
貴大学は本通知において、国立大学法人新潟大学コンプライアンス規則に基づく予備調査委員会においてコンプライアンス違反が存在する可能性等に関する調査を実施した結果、『「コンプライアンス違反の可能性は低いまたは該当しないと判定し、本調査は実施しないこととしましたので、通知します」と回答し、予備調査結果の概要を以下のとおり列挙しています。

「1 コンプライアンス違反の該当可能性
(1) 当初の広報記事掲載
学内掲載手続は適切であった。記事は誤った内容が含まれていたが、コンプライアンス違反に該当する可能性は低い。
(2) 記事の修正
修正の経緯、手続、修正内容は、コンプライアンス違反に該当しない。
2
(3) 遵守義務、誠実義務、信用失墜
遵守義務、誠実義務については、コンプライアンス違反の可能性はない。信用失墜については、コンプライアンス違反とまでは言えない。
(4) 利益相反
適正に管理・公表されており、コンプライアンス違反の可能性はない。」

2 しかし、この内容は、単にコンプライアンス違反の可能性は低いまたは該当しないと判定したという結論を項目に分けて記載しただけのものであり、実質的な理由の説明がありません。
調査の対象は、HPV ワクチンに関する NIIGATA Study に関して公表された論文の結論と異なる内容が貴大学の医学部医学科・大学院医歯学総合研究科のウェブサイトで広報され、これがメディアにおいても報道されるに至った問題です。すなわち、前記論文の結論は、HPV ワクチン接種群と非接種群の前がん病変の発生率について、統計的有意差が認められなかったというものであるにも関わらず、前記ウェブサイトで、HPV ワクチン接種群で有意に減少したかのように広報され、これがメディアにおいても報道されるに至ったという問題であり、その影響の大きさなどに鑑みれば、研究不正に劣らない倫理上の問題があります。
貴大学も、本通知書において、『「2 再発防止、今後の対応」と題して、以下の内容を記載しています。
「(1) 『「誤った内容の記事の掲載」や「不適切な修正」を防止するため、学内掲載手続を見直し、実施した。
(2) ホームページ掲載の記事について、修正内容、修正理由等のポイントをお知らせする。」
このような再発防止策が必要とされる問題がありながら、なぜコンプライアンス違反に該当しない、あるいは該当する可能性が低いと判断して、本調査が不要という結論に達したのか、理解に苦しむところであり、少なくとも、その実質的な理由の説明はあってしかるべきです。

3 当会議が、前記要望書等を提出してから回答を受領するまで実に1年8ヶ月を要しています。この間、再三貴大学に対してなぜこのように時間がかかるのかと問い、貴大学からは、調査内容をとりまとめていたところ新たに追加調査の必要性が生じた、学術的及び法的な観点から確認を行っており、それに時間を要している、回答をとりまとめ中である等の説明を受けてきました。
その結果、結論のみを記載した通知書を受け取って、納得できる者などいないのではないでしょうか。貴大学の回答姿勢そのものが、第 1 条に「健全で適正な大学運営及び本学の社会的信頼の向上に資することを目的」とすることを定めた国立大学法人新潟大学コンプライアンス規則の精神に反すると言っても過言ではありません。
当会議は、2024年9月2日付の通知4で、すみやかな調査と報告書作成の完了とともに、当会議への送付時期を明示することとともに、調査報告書には、公正さの担保の趣旨からも、調査委員会の委員の所属や氏名、調査経過についても記載することを求めました5。その際、理由の記載を求めなかったのは、よもや、これだけ待たされて、結論だけで理由の記載のない、予備調査報
告書の体をなしていない書面が送られてくるとは想像だにしなかったからです。
4 貴大学からは、9月2日付の当会議の通知については追って回答する旨の連絡をいただいていますが、その際に、貴大学には、貴大学のコンプライアンス違反を判断する基準を明らかにしたうえで、なぜ本件がコンプライアンス違反に該当しない、あるいは該当する可能性が低いのか、貴大学が9月25日付報告書の「1 コンプライアンス違反の該当可能性」に列記した(1)から『(4)
の項目毎に理由を明らかにして記載することもあわせて求めます。

1 新潟大学「新潟大学広報記事の誤認の訂正及びその原因検証実施の要望書について(通知)」、2024 年 9 月 25 日
https://www.yakugai.gr.jp/topics/file/20240925 Niigata_Daigaku_kaitou.pdf
2 薬害オンブズパースン会議「『HPVワクチンの有効性と安全性の評価のための大規模疫学研究』(NIIGATA Study)に関する新潟大学広報記事の誤認の訂正及びその原因検証実施の要望書」、2023 年 1 月 18 日
https://www.yakugai.gr.jp/topics/file/20230118 NIIGATA Study_daigaku_kouhoukiji_gonin_teisei_kenshou_youbousho2.pdf
3 薬害オンブズパースン会議、2023 年 2 月 17 日付回答及び追加要望
https://www.yakugai.gr.jp/topics/file/230217 NIIGATA_Study_toukaigi_youbousho_heno_shitsumo
n_heno_kaitou_oyobi_tsuikayoubou.pdf
4 薬害オンブズパースン会議、2024 年 9 月 2 日付要望書
https://www.yakugai.gr.jp/topics/file/20240902 kugatsu_futsukazuke_youbousho.pd

以 上


谷直樹

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by medical-law | 2024-11-08 13:54