日弁連 東京高等裁判所及び福岡高等裁判所の判決を受け、改めて同性の当事者による婚姻の速やかな法制化を求める会長声明
「同性の当事者による婚姻が法令上認められていないことの憲法適合性が争点とされた訴訟において、東京高等裁判所は、2024年10月30日、「自らの自由意思により人生の伴侶と定めた相手との永続的な人的結合関係について配偶者としての法的身分関係の形成ができることは、安定的で充実した社会生活を送る基盤を成すものであり、個人の人格的存在と結び付いた重要な法的利益」であると認め、この法的利益は、男女間と同様に同性間においても十分に尊重されるべきであるとした。そして、現行法が同性婚を認めていないことは、そのような重要な法的利益について、合理的な根拠に基づかずに、性的指向により法的な差別的取扱いをするものであって、憲法14条1項及び24条2項に違反するとした。
福岡高等裁判所は、同年12月13日、婚姻は人にとって重要かつ根源的な営みであり、憲法13条は幸福追求権として「婚姻の成立及び維持について法制度による保護を受ける権利」を認めているとし、この権利は個人の人格的生存に欠かすことのできない権利であって、裁判上の救済を受けることができる具体的な権利であるとした。そして、このような権利は、男女・同性のカップルのいずれもが等しく有しており、現行法が同性婚を認めていないことは、「同性の者を伴侶として選択する者の幸福追求権」に対する侵害であり、憲法13条に違反するとした。また、同性婚を認めていない現行法は、法の下の平等を定める憲法14条1項に違反するとした上で、「同性のカップルに対し、端的に、異性婚と同じ法的な婚姻制度の利用を認めるのでなければ、憲法14条1項違反の状態は解消されるものではない」と指摘した。さらに、現行法は、婚姻に関する法律が個人の尊厳に立脚して制定されるべき旨を定める憲法24条2項にも違反するとした。
同性の当事者による婚姻が法令上認められていないことに関しては、既に複数の判決で違憲判断がなされているところであるが、前記の東京高等裁判所及び福岡高等裁判所の判決は、同性の当事者に配偶者としての法的身分関係の形成や法的な婚姻制度の利用を認めることを立法機関に求めたものとして評価できる。とりわけ福岡高等裁判所判決が、婚姻について法制度による保護を受ける権利が憲法13条の幸福追求権として保障され、裁判上の救済を受けることができる具体的な権利であると明確に認めた点は画期的であり、また、同性の当事者を異性の場合と同じ法的な婚姻制度の対象とすべきことを憲法が求めていることを明示した点は高く評価できる。
当連合会は、2019年7月18日付け「同性の当事者による婚姻に関する意見書」を公表して以来、同性婚の法制化を繰り返し求めてきたところであるが、現行の婚姻制度が憲法に違反すると明確に指摘した前記の東京高等裁判所及び福岡高等裁判所の判決を受けて、改めて、国に対し、同性の当事者による婚姻を速やかに法制化することを求める。」
谷直樹
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