弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大津地裁令和7年1月17日判決、高齢女性が激しい頭痛で2回救急受診したのにCTを撮影しなかった件で市に対して約5000万円の支払いを命じる(報道)

大津地裁令和7年1月17日判決(池田聡介裁判長(司法修習49期))は、2019年に高齢の女性がひどい頭痛や全身の脱力感などを訴えて2度にわたって彦根市立病院を救急受診したが鎮痛薬を処方され帰宅させられ、2度目の受診の翌日に意識障害を起こして救急搬送され慢性硬膜下血腫などと診断されて手術を受けたがも意識障害が残った件で、「女性は『今までに経験したことがない頭痛』などと訴え、慢性硬膜下血腫の発生率が増加すると言われている薬を服用していたことなどから、医師たちは脳の病気などが原因の頭痛の可能性を疑うべきだった」とし、頭痛の原因として脳の疾患を疑い救急担当医はCT検査を実施した上で脳神経外科の医師に相談すべき注意義務があったとし、遅くとも2回目の診察が終わるまでにCT検査を行っていれば緊急手術が実施されて後遺障害を回避することができた可能性が高いと認定し、彦根市に対して約5000万円の支払いを命じました。

報道の件は私が担当したものではありません。大阪弁護士会の富永愛先生です。
慢性硬膜下血腫は、3週間以上を経てゆっくりと硬膜下に血液が貯留する疾患で、70歳代では10万人に対し76.5人、80歳代では10万人に対し127.1人と報告されています。症状は、歩行障害63.3%、片麻痺58.6%、頭痛38.2%と報告されています。CTを撮影していれば血液貯留がわかったと思います。頭痛は進行すると重大な結果を生じる疾患の症状であることがありますので、鎮静剤を処方して帰すのは適切な医療とはいえないでしょう。

NHK「頭痛患者帰宅させ後遺症 彦根市に賠償命じる 大津地裁」(2024年1月24日)御参照頭痛患者帰宅させ後遺症 彦根市に賠償命じる 大津地裁」(2025年1月17日)御参照
京都新聞「頭痛で受診した高齢女性めぐり彦根市立病院運営する市に賠償命令 大津地裁「後遺症、回避できた可能性高い」」(2025年1月17日)御参照


谷直樹

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by medical-law | 2025-01-18 01:46 | 医療事故・医療裁判