規範的要件の要件事実
「過失」は規範的評価です。
裁判官は、「具体的事実」から当該規範的要件を充足するか否かを判断します。
「過失」自体は、法的判断にほかならず、事実の認定ではありません。
「過失」自体ではなく、「具体的事実」が主要事実です。
訴状に書く「過失の根拠事実」は「具体的事実」(主要事実)であり、訴状に過失の根拠事実=具体的事実を書くのは、立証の目的となる主要事実を明らかにし争点を早期に明確にするためです。
規範的評価の成立を根拠付ける具体的事実を評価根拠事実といいます。
この評価根拠事実と両立し、規範的評価の成立を妨げる事実を評価障害事実といいます。
過失が作為の場合(或る医療行為を行ったことが過失にあたる場合)は、因果関係のある過失を特定することは容易で、その評価根拠事実=具体的事実もわかりやすいことが多いです。一般に医療過誤は手抜きの医師がおかすものというイメージがあるかもしれませんが、実際には或る意味熱心すぎる(適応、リスクーベネフィットを無視する)医師による場合も多いのです。
ところが、過失が不作為の場合(或る医療行為を行わなかったことが過失にあたる場合)は、因果関係のある過失は複数考えられることが多く、複数の過失を主張すると、その評価根拠事実=具体的事実も多くなり、争点を絞り込むのが難しいことも多いです。
谷直樹
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