弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日弁連「公益通報者保護法の一部を改正する法律案についての会長声明」

日弁連は、2025年3月13日、「公益通報者保護法の一部を改正する法律案についての会長声明」を発表しました。

「2024年12月27日付けで消費者庁・公益通報者保護制度検討会の報告書が取りまとめられた。これを受け、第217回通常国会に公益通報者保護法の一部を改正する法律案(以下「本法律案」という。)が提出され、国会審議中である。

当連合会は、2024年8月22日付け「公益通報者保護法の更なる改正と制度の充実を求める意見書」を公表し、公益通報者保護制度の更なる拡充について提言を行った。

本法律案では、公益通報を理由とする解雇及び懲戒処分に対する刑事罰の導入、通報後1年以内の解雇又は懲戒について公益通報を理由としてされたものと推定する(立証責任の転換)制度の導入、従事者指定義務違反への是正命令及び同命令違反時の刑事罰の導入、公益通報者を探索する行為の禁止、公益通報を妨害する行為の禁止及び保護すべき公益通報者にフリーランスを加えることなどが新たに規定されている。本法律案は、全体として公益通報者の実効的な保護を一歩前進させるものとして評価できるものであり、当連合会としても早期にこの法改正が実現することを期待する。

ただし、本法律案では、配置転換や人事権行使としての降格(以下「配置転換等」という。)については公益通報を理由としてされたものと推定する立証責任の転換の規定が盛り込まれておらず、公益通報者保護の観点からすればいまだ不十分な点がある。公益通報者に対する不利益取扱いは、解雇や懲戒処分といったあからさまな処分ではなく、配置転換等によって公益通報者を閑職に追い込むといった事案も多いため、この点の立証責任は実務では問題となる場合が多い。配置転換等が立証責任の転換の対象から除外された理由としては、事業者の経営判断や人事・労務管理が制約されるおそれなどが挙げられているが、現に事業者側に証拠が偏在している状況に鑑みれば、立証責任を転換しても適切な配置転換等であることを事業者側が立証するのは困難ではない。

また、本法律案には、保護される公益通報のために必要な資料収集や持出行為に対する民事上・刑事上の免責規定、解雇・懲戒処分以外の不利益取扱いに対する刑事罰の導入、従事者指定義務以外の体制整備義務違反に対する是正命令及び同命令違反時の刑事罰の導入並びにフリーランス以外の取引先事業者等を保護すべき公益通報者に加えるべきことなど、公益通報者保護のために必要とされる規定が盛り込まれておらず、この点も不十分である。

当連合会は、本法律案の審議において、これらの点についても、公益通報者保護のための重要な論点として十分な検討がなされることを求めるものである。」


谷直樹

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by medical-law | 2025-03-18 16:37 | 弁護士会