『鎌倉うずまき案内所』

青山美智子氏の『鎌倉うずまき案内所』を読みました。
2019年に始まり、6年ごとに遡る章構成になっています。つまり平成のはじめからおわりまでの物語です。
二〇一九年 蚊取り線香の巻
二〇一三年 つむじの巻
二〇〇七年 巻き寿司の巻
二〇〇一年 ト音記号の巻
一九九五年 花丸の巻
一九八九年 ソフトクリームの巻
一言でいうと、固定観念にとらわれて視野がせまくなり行き詰まってしまった人が、考えを変える物語です。
「1989年 ソフトクリームの巻」は、鎌倉の古民家カフェで、めったに顔出しをしないSF作家のインタビューをフリーのラーターが行い、主婦向けの雑誌の編集者が同席します。
後の章を読むと、古民家カフェのオーナーになる前の人となりが分かります。SF作家が古民家カフェで仕事をしているわけ、大御所女優がSF作家を紹介したわけ、SF作家がIT企業社長を紹介したわけも、後の章を読むと分かります。
おしゃれなライターがちょびヒゲを生やすわけ、修学旅行の中学生たちを見て笑うわけも、有名な劇作家が古本屋で講座を開くわけも分かります。雑貨店のおばあさんが何者かも分かります。
赤いプレリュードを乗り回しイタメシ屋でアルバイトをしていたという編集者の上司は、「一九八九年 ソフトクリームの巻」に再登場します。
1989年は、『魔女の宅急便』(「やさしさに包まれたなら」と「ルージュの伝言」)の年
1995年は、『耳をすませば』(「カントリー・ロード 」)の年
2001年は、『千と千尋の神隠し』(「いつも何度でも」)の年
2007年は、『秒速5センチメートル』「One more time, One more chance」)の年
2013年は、『風立ちぬ』(「ひこうき雲」)の年
そして、
2019年は、『天気の子』(「愛にできることはまだあるかい」)の年
『鎌倉うずまき案内所』が発行された1週間後に映画『天気の子』は公開されました。
読み進めることで時代を遡ることができる楽しさを感じられる本です。
谷直樹
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