「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」これまでの議論のまとめ(在宅医療における薬剤提供のあり方について)
これまでの議論のまとめ(在宅医療における薬剤提供のあり方について)
「1.在宅医療における薬剤提供について」で、次のようにまとめられています。
「○ 在宅医療における薬剤提供に係る課題の解決については、薬局と医療機関、訪問看護ステーションの連携体制を構築することが最も効果的であると考えられた。また、普段、薬局が訪問対応ではなく外来と同様の対応をしている患者への対応についても、薬局薬剤師が在宅対応を実施すること等の事前の連携体制構築が必要と考えられる。
○ 特に、薬局において、緊急時の対応が困難となることが想定される場合には、事前に医療機関、他の近隣薬局、訪問看護ステーションと連携し、患者ごとに緊急時の対応体制を構築しておくことが重要であると考えられる。
○ 地域における夜間・休日対応や在宅対応に係る薬局の対応状況については、地域薬剤師会において、薬剤師会会員が所属しない薬局も含め、リストを作成し、地域薬剤師会のホームページ等で公表している。連携推進のために、こうした情報について、医療関係者等への周知が必要と考えられる。
○ また、地域住民等への周知をより効果的に実施するために、行政機関のホームページ等による周知の活用も検討することが望ましい。」
「2.地域の状況に応じた在宅医療における薬剤提供体制
(1)地域における在宅患者への薬剤提供体制の構築・強化
○ 在宅医療において薬物治療を円滑に実施するためには、医師や看護師だけでなく、薬剤師の関与は最重要であり5、関係職種が連携しながら、夜間・休日対応を含めた在宅医療に係る薬剤提供体制をそれぞれの地域において継続的に構築・強化していく必要がある。
○ 一方で、在宅医療における薬剤提供に係る多職種連携については、必ずしも十分ではない状況であると考えられる。
○ また、地域ごとに在宅医療のニーズや医療提供体制等は大きく異なり、薬剤提供に係る課題も異なっていると考えられることから、薬剤提供に関する課題を解決するためには、それぞれの地域において、行政を含めた関係者による協議により、地域の実情を踏まえた対応を検討、実施することが必要である。
○ その際、各地域だけでは解決できない課題に対応できるよう、都道府県等レベルでの協議と地域レベルの協議を連動させて、医療・介護を含めた在宅医療に係る薬剤提供体制を構築していくことが重要である。
○ 具体的には、都道府県等のレベルでは、地域における在宅患者への薬剤提供体制の実態を把握し、円滑な薬剤提供に必要な体制構築に係る課題の抽出を行い、行政、医師会や薬剤師会等の関係団体を含む有識者等の協議等により、医療計画と連動しながら、必要な方策を検討する。各地域(在宅医療の圏域や市町村単位を想定)では、都道府県等のレベルの協議結果を踏まえて、必要な薬剤提供体制やその構築・強化の方策、連携のための具体的な情報共有等について、行政、地域医師会や地域薬剤師会等を含めた関係者で協議し、体制の強化を図ることが考えられる。
○ 在宅医療においては、医師、薬剤師、訪問看護師等が連携して、それぞれの専門性に基づき必要な役割を果たしていくことが必要であり、薬剤提供や服薬管理、指導について薬剤師が必要に応じて訪問して対応する8ことも含め、しっかり関与して対応できる体制を確保することが重要である。上記の都道府県等のレベル及び地域レベルの在宅患者への薬剤提供体制の構築・強化についても、これを前提に検討する必要がある。
○ 特に、現時点では多職種連携が十分になされていない地域や、そもそも医療機関と薬局しかない、医療機関と訪問看護ステーションしかない地域も存在しており、地域の状況に応じて、どのような多職種連携をして薬剤提供体制を構築するのかを検討する必要がある。
○ また、地域の在宅医療を取り巻く環境は常に変化していくことも考えられることから、行政を含めた関係者で継続的に実態の把握と、それに基づく体制の見直しを実施することが必要である。
○ 上記による地域における在宅患者への薬剤提供体制の構築・強化を実現するためには、日本薬剤師会・都道府県薬剤師会・地域薬剤師会、日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会や地域の薬局が当事者意識を持って取り組んでいくべきである。
(2)個別の在宅患者への対応において薬剤提供の課題が生じた場合の対応
○ (1)の対応により地域において在宅患者への薬剤提供体制の構築・強化を推進している場合であっても、地域によってはその構築・強化の過程において、個別の在宅患者への対応において薬剤提供が円滑にできないような事態が生じてしまうことはあり得る。
○ そのような事態が生じた場合は、まずは個別の患者の状況を踏まえ、当該患者の在宅療養を担う医師、薬剤師、訪問看護師等によりサービス担当者会議等で協議して、関係者の連携等による対応を検討することが求められる。
○ なお、在宅患者であっても医師から薬局薬剤師に対し訪問薬剤管理指導の指示が出ていない場合もある。そのような場合においては、薬局が臨時的に対応することが困難な場合もあると考えられることから、医師が必要と認めうる場合において、まずは訪問薬剤管理指導の対象にするための調整を行うことが必要である。9
○ 在宅療養を担う医師、薬剤師、訪問看護師等による協議においては、個別の患者への対応で薬剤提供に課題が生じた場合の対応について地域でその実情に応じた解決策をあらかじめ協議した結果に基づき、患者の状態や状況を踏まえ、具体的に薬剤師の関与による円滑な薬剤提供を実施できるようにするための対応策を検討することが必要であり、薬剤師から医師への働きかけなど必要な対応を協議していくことも重要である。
(3)上記(1)及び(2)によっても困難な事態が生じた場合の対応
○ 上記の対応によって、医師、薬剤師、訪問看護師があらかじめ連携したり、緊急時の対応について事前に検討したりすることで、ほとんどの場合は薬剤提供体制を構築できるものと考えられる。
○ しかしながら、地域によっては緊急時における薬局による臨時の処方に対応するための体制の構築・強化に時間を要することや、過疎化の進展に伴い広域での体制構築が必要になることも想定され、個別の患者の状態、状況によっては、患者宅にあらかじめ処方、調剤された薬剤を配置しておくことや一般用医薬品により臨時的に対応することが困難な場合もあると考えられる。
○ このような場合においては、まずは医師による診断と投薬等の対応ができないかを改めて検討した上で、当該患者の療養を担う医師、薬剤師、訪問看護師等の協議により、以下の対応の実施を検討することも考えられる。
・ 医師の診療により、在宅療養中の患者の急な状態の変化時に投薬又は医薬品の使用を伴う処置が必要となった場合において、当該医薬品を円滑に入手することができないことが想定されることから、事前に訪問看護ステーションに当該医薬品を準備しておく。
・ 上記の「急な状態の変化」とは、在宅療養を継続する程度の状態の変化であって、医師ではなく訪問看護師であっても明確に判断できるような変化に限る。
・ 実際に医師の診療により医薬品が必要となり、他に当該医薬品を円滑に入手する手段がない場合は、訪問看護師が、当該医師の指示に基づき、事前に訪問看護ステーションに準備しておいた当該医薬品について、使用前に当該医師又は薬剤師に確認した後に、患者に投薬または当該医薬品の使用を伴う処置を行う。
○ ただし、当該対応については継続して実施することを想定したものではなく、体制が構築・強化されるまでの臨時的な対応である。在宅患者が安全な在宅医療を受けられるようにするため、また、地域の医療資源を有効に活用するためにも、そのような事態が可能な限り発生しないよう、事前に対処することが重要であり、速やかに、改善策について検討することが必要である。
また、実施に当たっては、あらかじめ、行政や地域の関係団体等に当該対応を実施することを報告の上、実施状況についても定期的に共有するべきである。
○ 行政においては、当該情報について監視指導や地域での在宅患者に対する薬剤提供体制の構築に活用すべきである。
○ 医薬品の卸売販売業者による医薬品の販売先について、自らの判断で医薬品の処方・調剤を行うことが想定されない指定訪問看護事業者は原則として販売先に含まれていないが、消毒用医薬品のほか、臨時応急の処置や褥瘡の予防・処置として必要なグリセリン浣腸液、白色ワセリン等を販売することは既に認められている。
○ 令和5年度に実施された厚生労働科学特別研究における調査によると、調査対象となった訪問看護ステーションにおいて、利用者(患者)の状態が変化し迅速な対応が必要になった事態において、輸液・薬剤が入手できず速やかに対応できなかった個別事例で必要となった医薬品の種類については、解熱鎮痛剤(4 件)、輸液(体液維持剤)(4件)、医療用麻薬(5件)等であっ
た。
○ また、検討会では、上記以外に、軟膏(非ステロイド系消炎外用薬)、下剤、感冒薬も必要であるとの意見があった。
○ 上記の対応の対象とする医薬品については、
・在宅療養中の患者において、在宅療養を継続する程度の事前に推定されなかった状態の変化が生じた場合に、医師の指示により処置・投薬で対応する際に必要と考えられる医薬品であること
・事前の処方・調剤による患者宅への配置が馴染まない医薬品であること
・対応できる一般用医薬品がない効能・効果を有する医薬品であること
・特別な保管・管理が必要である医薬品ではないこと
が必要であると考えられる。
○ 上記の医薬品のうち、医療用麻薬については法律に基づき施用できる者や所持できる者が厳に制限されている等、極めて厳格な管理が必要な薬剤であり、特別な保管・管理が必要な医薬品に該当する。また、軟膏(非ステロイド系消炎外用薬)、下剤については、薬剤が必要となる疾患・症状を踏まえると事前に処方・調剤した薬剤を配置することが適切であるほか、解熱鎮痛剤、感冒薬については事前に処方・調剤した薬剤を配置することに加え、一般用医薬品でも対応可能とも考えられる。以上より、上記の臨時的な対応は、輸液(体液維持剤)を対象として検討することが考えられる。
○ また、訪問看護ステーション内で保管する医薬品については、訪問看護ステーションが卸売販売業者から購入し、訪問看護ステーションの責任・負担において保管・管理を実施することとすべきである。
○ 厚生労働省においては、上記の臨時的な対応が現行法令に基づき適切に実施されるよう、訪問看護ステーションにおける医薬品の保管方法や留意事項(輸液投与に必要な留置針や点滴ルート等の入手方法12を含む)、行政や地域の関係団体等への報告方法、報告事項等について必要なことを示すべきである。併せて、各種法令、医療保険上の対応について整理し、明確化することも必要と考える。
○ また、当該対応が適切に実施されるよう、都道府県等の薬事担当部局に加え、医療・介護等の関係部局にも周知し、理解いただくことも重要である。
(4)今後さらに検討が必要と考えられる事項
○ 本検討会においては、在宅医療における円滑な薬物治療の提供のため、地域における医薬品提供体制のあり方について検討を実施してきた。
○ 前述のとおり、地域ごとに在宅医療をとりまく状況は大きく異なり、また、今後、人口構成の変化を踏まえた環境の変化が想定され、関係者の連携はさらに重要になってくると考えられることから、本とりまとめを参考にしつつ、各地域において行政を含めた関係者13が連携しながら、その地域の実情に応じ、継続的に医薬品提供体制の構築・強化に取り組んでいくことが重要である。
○ このため、臨時的な対応についても、その実施状況等を継続的に把握し、必要に応じ見直すことも必要と考えられる。
○ 厚生労働省においても、全国の在宅医療における薬剤提供体制に係る状況を把握し、必要に応じて対応を見直していくことも重要である。
○ また、(3)の臨時的な対応について、輸液(体液維持剤)以外の医薬品を対象とすることについて、法令上の整理、臨時的な対応の必要性、合理性の検証等を行うことを求める意見があった。
○ さらに、地域によっては、薬局は存在するが訪問看護ステーションが存在しない地域もあるなど、上記だけでは対応しきれない場合もあると考えられる。
○ その他、本検討会では、構成員から、
・今後、訪問看護ステーションが減少する地域もあると考えられることから、薬剤師にもう少し機能を幅広く持たせて、例えば、医師の指示の下で輸液交換などをするという対応も必要ではないか
・患者宅等で薬剤師が実施することができる調剤業務の範囲について見直しが必要ではないか
・保険医が処方箋を交付することができる注射薬(保険薬局で保険調剤が可能な注射薬)の種類を見直し、保険薬局が対応できる事例を増やすなどの対応も必要ではないか
・離島やへき地など医療資源が乏しい地域への対応策の検討は非常に重要であり、臨時的に営業する薬局の開設を認め、構造設備についても一定程度緩和することを検討すべきではないか
といった意見もあった。
○ 厚生労働省においては、こういった意見も参考にしつつ、引き続き必要な対応について検討していくべきであると考える。」
谷直樹
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