大学病院が腎細胞癌の術後フォロー中の患者の脊椎転移の発見が遅れた医療事故を公表
「【経緯】
患者様は、本県在住の 60 歳代の男性で、当院にて腹腔鏡下左腎摘出術を施行後、およそ半年ごとの単純 CT 検査で、術後再発のフォローを行っており、術後合計 3 回のフォローアップ単純 CT 検査については泌尿器科医、放射線科医ともに「再発・転移なし」と読影しておりました。
患者様は、昨年に右肩甲上部痛、右上肢のしびれ症状のため、近医整形外科から前医を紹介受診後、第 1 胸椎の転移性脊椎腫瘍が判明し、当院整形外科へ紹介されました。当院整形外科医の確認により、術後 3 回目のフォローアップ CT において脊椎転移所見が明らかであったにも関わらず見落とされていたことが判明しました。
患者様は、当院整形外科にて頸椎—胸椎後方固定術、頸椎—胸椎椎弓切除術が施行され、その後、当院泌尿器科にて治療を継続されております。
【原因】
頸椎と胸椎の移行部で画像評価が難しい部分であったこと、腎機能低下があったために造影剤を使用しない単純 CT で評価していたこと等により、放射線科医及び泌尿器科医が「再発・転移なし」と判断しておりました。さらに、泌尿器科では毎週 1 回、放射線科と合同カンファレンスを実施し、複数の医師で CT 画像を確認しておりましたが、前述の「再発・転移なし」の読影レポートの影響もあり、異常所見に気づきませんでした。以上の複合的要因と画像確認の入念さが不足していたことが、今回の医療事故の原因と考えております。
【再発防止策】
今回の事故を踏まえ、以下の再発防止策を講じます。
① 画像確認の徹底
画像検査を依頼した医師及び放射線科医による入念な画像確認を徹底する。合同カンファレンスにおいても、読影レポートの記載にとらわれずに画像を確認することを徹底する。
② 検査依頼時の十分な臨床症状等の情報提供画像検査依頼時には、臨床症状や疑っている疾患や病態をできるだけ詳細に記載する。
③ 適切な検査方法の選択
骨転移を疑う場合は、可能な限り造影剤を使用した造影 CT を施行するよう検討するか、単純 CT より感度の高い MRI や骨シンチ等を検討する。
④ 再発防止のために、放射線画像検査の読影に関する院内研修会を開催する。
⑤ AI 骨転移読影支援システム等の活用を検討する。
今回の件につきましては、患者様及び御家族の皆様に重ねてお詫び申し上げますとともに、今後、再発防止に向け病院全体で安全対策に取り組んでまいります。」
谷直樹
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