弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

最高裁令和7年5月21日決定、原決定及び原々決定を取り消し札幌高裁へ差し戻す

最高裁令和7年5月21日決定は、第1審の有罪判決をした裁判官は、刑訴法20条により、当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判についての職務の執行から除斥されると解するのが相当である、と判示しました。裁判官が少ないからといって刑訴法違反の裁判体の構成は許されません。なお、差戻審でも保釈が認められないということもあり得ます。


「主 文

原決定及び原々決定を取り消す。
本件を札幌高等裁判所に差し戻す。

理 由

本件抗告の趣意は、憲法37条1項違反、判例違反をいうほかは、単なる法令違反、事実誤認の主張である。
所論に鑑み、職権で判断する。

記録によると、頭書被告事件の控訴裁判所である札幌高等裁判所が、同被告事件の第1審の有罪判決をした裁判官を含む合議体で、保釈請求を却下する決定をし、原審が、申立人からの異議申立てを棄却する決定をしたことが明らかである。
しかしながら、控訴裁判所において、当該被告事件の第1審の有罪判決をした裁判官には、事件について前審の裁判に関与したという、刑訴法20条7号本文の定める除斥原因がある。そして、控訴裁判所のする保釈に関する裁判に関与することは、控訴裁判所の裁判官としての職務の執行に当たる。そうすると、第1審の有罪判決をした裁判官は、刑訴法20条により、当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判についての職務の執行から除斥されると解するのが相当である。
したがって、職務の執行から除斥されるべき裁判官が関与してされた原々決定及びこれを是認した原決定には、刑訴法20条の解釈適用を誤った違法があり、これが決定に影響を及ぼし、これを取り消さなければ著しく正義に反すると認められる。
よって、その余の抗告趣意について判断するまでもなく、刑訴法411条1号を準用し、同法434条、426条2項により、原決定及び原々決定を取り消し、本件を原々審である札幌高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官岡正晶  裁判官安浪亮介  裁判官堺徹  裁判官宮川美津子  裁判官中村愼)]


*刑訴法第20条 裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。
(中略)
7 裁判官が事件について第266条第2号の決定、略式命令、前審の裁判、第398条乃至第400条、第412条若しくは第413条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となった取調べに関与したとき。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。

谷直樹

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by medical-law | 2025-05-24 00:09