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東京弁護士会「法制審議会民法(成年後見等関係)中間試案に対する意見書」

東京弁護士会は、2025年8月14日、「法制審議会民法(成年後見等関係)中間試案に対する意見書」を発表しました。

https://www.toben.or.jp/message/file/20250814ikensho.pdf

長文です。抜粋すると下記のとおりです。


第1 「第1 法定後見の開始の要件及び効果等」について
1 「1 法定後見の開始の要件及び効果」

「⑴ 法定後見制度の枠組み、事理弁識能力の考慮の方法並びに保護開始の審判の方式及び効果」について
乙1案に賛成する。

2 「1 法定後見の開始の要件及び効果」「⑵ 法定後見に係る審判をするための要件としての本人の同意等」について
第1の1⑴において「乙1案に賛成する」という立場に立ちつつ、甲案に賛成する。

3 「1 法定後見の開始の要件及び効果」「⑶ 申立権者(請求権者)」について
⑴ 現行法の規律を維持し、利害関係人を含めない「甲案」に基本的に賛同しつつ、任意後見人が欠けたことにより任意後見契約が終了した場合に任意後見監督人であった者を請求権者に追加するという意見に賛成である。

4 「2 取消権者及び追認」について
本人保護の実効性確保の見地から、現行法の規律を維持する甲案に賛成する。そして、同意権を付与された第三者が取消権を行使することについては、本人の意思を尊重し、本人の同意に基づくことを原則とし、本人の意に反してでも取消権を行使する
ことができるのは、取消権を行使しなければ本人の生命・身体・財産・生活に重大な影響が生じるおそれが顕在化したときでなければならないという職務上の義務を課すことが相当である。
ただし、同意能力があるが、事理弁識能力が著しく不十分な者について、重大な影響がある場合に限って取消権を行使してよいとするのは限定的にすぎるのではないかという意見もあり、消費者保護法制が十全でない現況下において、取消権行使の具体的な要件について検討を続ける必要があると考える。

第2 「第2 法定後見の終了」について
1 「1 法定後見の開始の審判又は保護者に権限を付与する旨の(個別の)審判の取消し」について
第1の1⑴において乙1案に賛成する立場から、本論点において⑵に賛成する。

2 「2 法定後見に係る期間」について
本論点における乙1案または乙2案に立ちつつ、定期的な制度利用の要件の見直しの機会が制度的に保障されること、本人や後見人が的確な保護継続の手続きをとらなかったことにより権限付与の必要性があるにもかかわらず終了することがないような手当を確保するべきという意見に賛成する。

第3 「第3 保護者に関する検討事項」について
1 「1 保護者の選任」
現行法の規律を基本的に維持しつつ、考慮事由として例示列挙された事由の冒頭に「本人の意見」を加えることに賛成である。

2 「2 保護者の解任(交代)等」について
乙2案に賛成である。

3 「3 保護者の職務及び義務」「⑴ 本人の意思の尊重及び身上の配慮」について
賛成である。

4 「3 保護者の職務及び義務」「⑵ 財産の調査及び目録の作成等」について
第1の1⑴において乙 1 案をとることを前提に、保護者は、成年後見制度における財産の調査及び目録の作成、財産目録の作成前の権限に関する規律を設けない(削除する)ものとし、あわせて本人の財産を管理し、かつ、財産に関する法律行為について本人を代表する旨の規律を設けない(削除する)ものとすることに賛成である。

5 「3 保護者の職務及び義務」「⑶ 成年後見人による郵便物等の管理」について
事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の仕組みを設ける場合及び事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の仕組みを設けない場合のいずれにおいても、郵便物等の管理の規律を設けるものとすべきである。

6 「3 保護者の職務及び義務」「⑷ 成年後見人の居住用不動産の処分についての許
可、利益相反行為、成年後見の終了の際の後見の計算等」について成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可、利益相反行為、成年後見の終了の際の後見の計算等については、特定の代理権付与を基本とする場合においても、いずれも現行規定の趣旨を当てはめる必要があり、現行法の規律を維持することに賛成する。
なお、(注1)については、第1の1⑴で乙1案をとる以上、代理権が限定されるため、独自の財産調査権を付与し、調査先に権限を公示できるように代理権目録に示すべきと考えるが、保護者の責任の範囲を限定する趣旨で代理権を離れての調査権限の付与は不要と言うべきである。
また、(注2)のいわゆる医療同意権については、第三者の代諾ではなくアドバンス・ケア・プランニングを推進し、国のガイドライン(「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」)に沿った対応が進んでいる現状では、なお消極で問題無いと考える。

7 「4 本人の死亡後の成年後見人の権限(死後事務)等」について
本人の生前の意思や死者の尊厳も考慮した終末期の対応、死亡直前の入院費用や施設利用料の支払や公共料金の支払、退去手続や死亡届等の行政機関への各種届出事務等も期待されているところ、第1の1⑴においていずれの立場であっても、権限者が本人の生前に付与されていた権限の内容と関連性を有するものにつき、本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結の権限、相続財産の保存行為、弁済期の到来した相続債務の支払の権限のそれぞれにつき、家庭裁判所による許可を得た上で、行うことができるものとすべきである。

8 「5 保護者の報酬」について
現行法の規律を維持するのではなく、862条を次の通り改正することを提案する。
862条「家庭裁判所は、保護者及び被保護者の資力、保護者の資質や行った事務の内容、性質、その他の事情によって、相当な報酬を決定し、保護者に与えることができる。但し、その支払いについては、被保護者の財産からなされる場合のほか、国又は地方自治体その他の第三者により被保護者の財産以外から直接行うことを妨げない」。

9 「6 保護者の事務の監督」について
引き続き家庭裁判所が柔軟かつ責任を持って監督をしていくべきであるから、現行法の規律を維持することに賛成である。
第4 「第4 法定後見制度に関するその他の検討事項」について
1 「1 法定後見制度の本人の相手方の催告権」について
賛成である。

2 「2 本人の詐術」について
現行法の規律を維持することに賛成である。但し、同意権・取消権が特定の行為に限定され、制度の終了がより柔軟に行われることで本人の自己決定権の尊重が図られるようになる中で詐術を主張される機会も増えることがありうるが、安易に何らかの作為での「詐術」と認定されないように従前通り慎重に利益衡量を行うべきであり、取引の安全に偏った利益衡量の変更がないように留意しなければならない。

3 「3 意思表示の受領能力等」について
第1の1⑴において乙1案をとることを前提に、(1)についてウに賛成し、(2)について乙案に賛成である。事理弁識能力を欠く常況にある者という認定をしないこととした場合には、制度利用をしていることで、本人に意思表示の受領能力があるかどうかについては明らかではないため、現行民法98条の2のただし書きの規定は削除されるべきである。7なお、意思表示の受領能力がない場合の制度一般がないことは法の欠缺とも考えられ、一般的な規定として意思表示を受ける者の制度を創設することについて異議はない。

4 「4 成年被後見人と時効の完成猶予」について
第1の1⑴において乙1案をとることを前提に、事理弁識能力を欠く常況にある者に別の保護の類型を設けないと考える以上、保存行為を自らすることが困難かどうかは制度利用をしていることから画一的には認定できず、規定を削除することが相当である。

5 「5 受任者が法定後見制度を利用したことと委任の終了事由等」について
(1)及び(2)のいずれについても、乙案に賛成する。本人の社会参画の促進の理念や差別禁止の趣旨から、障害者権利条約の批准のための措置として、各法において本人に成年後見や保佐が開始した場合に欠格事由とされていたことにつき、措置法によって多くの関連法令において欠格事由から削除された趣旨を、今回の民法の委任及び代理の規定においても考慮するべきであり、これは認知症基本法の考え方とも整合するものだからである。

6 「6 成年被後見人の遺言」について
第1の1⑴において乙1案をとることを前提に、成年被後見人の遺言の規律を設けないとする⑶に賛成である。

7 「7 法定後見制度の本人の民事訴訟における訴訟能力」について
第1の1⑴において乙1案をとることを前提に、⑶に賛成である。「事理弁識能力を欠く常況にある者」について認定をしない仕組みとする場合には、当然に訴訟無能力になることはなく、当然に法定代理人によらなければ訴訟行為ができないとはならない。したがって、現行法の成年被後見人に関する規律は削除することが相当である。

8 「8 法定後見制度の本人の人事訴訟における訴訟能力」について
「事理弁識能力を欠く常況にある者」について認定をしない仕組みとする場合には、訴訟当事者となって本人のために原告又は被告となるという人事訴訟法第14条の規定をそのまま維持することは困難であり、第1の1(1)において乙1案を採ることを前提に、(3)に賛成する。なお、しかし、人訴においても訴訟能力がないと評価される場合については、民事訴訟法のように、成年後見制度の利用による訴訟代理権を付与することができないとすれば、人事訴訟を起こすことも起こされることもできないこととなる不都合が残るため、当事者に代わって職務に付くための地位につき、人事訴訟法上に規律を定めることとすべきである。

9 「9 手続法上の特別代理人」について
第1の1⑴において乙1案をとることを前提に、具体的な必要性に基づき特定の代理権を付与する制度とした場合には、当該訴訟に関する代理権付与とそれを担う代理人が選任されていないとき、訴えを提起された被告となる本人は、自ら応訴をするか、訴訟代理人を委任して応訴できる訴訟能力がある場合もあれば、そのような訴訟能力がない場合もあるところ、その能力の有無については、後見制度を利用しているだけでは認定されない(事理弁識能力を欠く常況を認定しないし、それが訴訟能力と一致するわけでもない)。もっとも、訴えを提起する側の裁判を受ける権利を保護するためには、応訴できるのかできないのかを当該手続で解決できるようにすべきであり、原告が疎明をし、かつ、遅延のため損害を受けるおそれがあることを疎明した場合について、受訴裁判所において特別代理人を選任することができるように規律を見直す必要がある。

第5 「第5 任意後見制度における監督に関する検討事項」について
1 「1 任意後見人の事務の監督の在り方」について
任意後見監督人選任を必須のものとせず、家庭裁判所による直接の監督も認めるとの方向性、さらに(注)に記載されている監督に対する本人の意向を尊重できるような制度の在り方を検討すべきとの【乙案】に賛成する。

2 「2 任意後見人の事務の監督の開始に関する検討」について
⑴ まず前記のとおり、任意後見監督人の選任を必須としないこととなった場合、「任意後見人の事務の監督の開始」が任意後見の発効要件となる。どういう場合に任意後見人の事務の監督を開始するか、という要件については、現行法の規律を維持し、①本人の判断能力が不十分であることと、②原則として本人の同意が必要とすることに賛成する。なお、本人がその意思を表示することができない場合には、本人同意がなくても開始が可能であるとの現行法の規律も維持されるべきと考える。

⑵ 適切な時機に任意後見人の事務の監督を開始するための方策
ア 申立権者について
申立権者を広げる方向での見直しを引き続き検討するとの方向性に賛成する。

イ 申立義務について
現状、任意後見については、任意後見契約数に比して任意後見監督人選任の申立件数が少ない。この提案は、任意後見受任者に対して、「本人の事理弁識能力が不十分な状況にある場合には、任意後見人の事務の監督を開始するための裁判手続の申
立てをしなければならない」ことを認識させるものであり、申立ての向上につながる。現在も、任意後見契約において、申立義務が規定されていることも多いとは思われるが、上記内容の明文ができれば、公証人から任意後見受任者に対して、上記内容の説明をすることができるので、さらに任意後見受任者に対して自覚を促す効果があると考えられ、提案のような規定を設けることに意義がある。
ただ、申立義務違反があったとしてもその効果をどのように定めるかには議論がある。任意後見人の事務の開始の裁判手続の申立ての履行を強制することは困難であり、申立義務者への制裁等がないとすれば、その法的意味合いの整理が難しく法的義務とまで言えるのかという疑問がある。また義務を履行しない受任者に任意後見人としての適格性があるのかとの指摘もある。以上の点も踏まえ引き続き検討されるべきである

第6 「第6 任意後見制度と法定後見制度との関係」について
1 「1 任意後見制度と法定後見制度との併存の可否等」について
任意後見制度と法定後見制度の併存を認めることに賛成する。

2 「2 任意後見契約が存在する場合に法定後見制度の利用を開始する要件等」について
乙案に賛成する。

第7 「第7 任意後見制度に関するその他の検討」について
1 「1 任意後見契約の方式、解除及び追加(変更)、予備的な任意後見受任者」「⑴ 任意後見契約の方式」について
現行どおり、公正証書による要式行為とする旨の規律を維持することについては賛成である。

2 「1 任意後見契約の方式、解除及び追加(変更)、予備的な任意後見受任者」「⑵ 任意後見契約の一部の解除及び当事者の合意による事務の委託の追加」について
「事務の委託の追加(変更)」の提案に賛成する。

3 「1 任意後見契約の方式、解除及び追加(変更)、予備的な任意後見受任者」「⑶ 任意後見契約の一部の発効」について
任意後見契約の一部を段階的に発効させることができるとすることにつき、引き続き検討することに賛成する。

4 「1 任意後見契約の方式、解除及び追加(変更)、予備的な任意後見受任者」「⑷ 予備的な任意後見受任者(任意後見契約の登記に関する規律等)」について
予備的受任者を認め、登記も可能とする乙案に賛成する。

5 「2 その他」について
① (注1)の本人の意思の尊重等に関し、法定後見と同様の見直しをすることについては賛成する。今回の改正の趣旨である本人の意思の尊重を任意後見制度についてもさらに見直すことが適切である。

② (注2)の任意後見契約解除につき、任意後見の発効後であっても家庭裁判所の許可なく解除をすることができるとすることについては、さらに検討が必要である。

③ (注3)の任意後見契約の有効期間の規律を設けるとの考え方については、反対する。

④ (注4)の任意後見契約を親権者等の法定代理人が締結することができるか否かに関する規律を設けるとの考え方については、引き続き検討することに賛成する。

⑤ (注5)の医療同意にかかる点については、さらに検討すべきである。

<第8 「第8 その他」
1 「1 成年後見制度に関する家事審判の手続についての検討等」「(1) 法定後見制度における精神の状況に関する鑑定及び意見の聴取」について
第1の1⑴において乙1案をとるものであり、乙案に賛成する。br>

2 「1 成年後見制度に関する家事審判の手続についての検討等」「(2) 法定後見制度に関する事実の調査及び証拠調べ」について
家庭裁判所が市区町村等に対し、意見を求めることができる旨の規律を設けるとの考え方について、引き続き検討することに賛成である。

3 「1 成年後見制度に関する家事審判の手続についての検討等」「(3) 法定後見制度に関する保全処分」について
引き続き検討をすることに賛成する。

4 「2 身体障害により意思疎通が著しく困難である者」について
引き続き検討することに賛成する。



谷直樹

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by medical-law | 2025-08-18 20:51 | 弁護士会