免疫血液内科の医師が核酸アナログ製剤の処方を中止し患者が急性肝炎で死亡した事故を公表(報道)
医師は、自分の専門外の疾患の投薬について関心が薄く、知識も十分ではないことがあるように思います。
投薬中止から重大な医療事故が発生した症例をみると、その医師の専門外の疾患に対する予防投薬であることが多いように思います。この件では、推測ですが、免疫血液内科の医師にB型肝炎ウイルスの再活性化予防の意識が薄く、そのためにB型肝炎ウイルスキャリアであることを失念したのではないかと思います。
なお、この件は私が担当したものではありません。
「1.事案の概要
(1)患者:神戸市在住 70歳代 男性
(2)発生年月:2025年1月
(3)発生場所:神戸市立西神戸医療センター
(4)発生状況と経緯:
2023年10月に神戸市立西神戸医療センターの免疫血液内科を受診し悪性リンパ腫と診断、患者からの申告によりB型肝炎ウイルスキャリアであることを把握。
悪性リンパ腫に対する化学療法の実施にあたり、B型肝炎ウイルスを再活性化する薬剤が含まれているため、化学療法の合併症予防薬と併せて、B型肝炎ウイルスの再活性化予防目的で核酸アナログ製剤を処方した上で、2023年11月より化学療法を施行した。
2024年4月に悪性リンパ腫は完全寛解となり、2024年9月には化学療法の合併症予防薬も中止できる状態となった。この時、担当医はB型肝炎ウイルスキャリアであることを失念し、本来継続すべき核酸アナログ製剤の処方も併せて中止した。また、処方中止後もB型肝炎ウイルス量を計測する検査は継続していたが、ウイルス量が上昇傾向であることに気がつかなかった。
2025年1月に黄疸・倦怠感のため受診され、B型肝炎再活性化による急性肝炎と診断し緊急入院となった。
(5)対応・処置:
緊急入院当日から核酸アナログ製剤の処方を再開し、入院2日目からステロイドパルス療法を行ったが、入院15日目に急激に全身状態が悪化し、血液検査、CT検査にて急性膵炎の合併と判断。各種治療を行ったが入院18日目に死亡退院となった。
(6)今後の対策:
・B型肝炎の治療は専門である消化器内科へ紹介する運用を徹底するとともに、消化器内科以外で核酸アナログ製剤を処方できないようにオーダリングシステムの設定を変更した。
・核酸アナログ製剤を薬局で受け取る場合は、処方箋に「B型肝炎再活性化予防用」とコメントが入るようシステム改修を行い、誤って処方を中止した時には薬局から疑義照会が入るようにした。また、化学療法センターおよび入院中の患者については、薬剤師が核酸アナログ製剤の処方状況を確認し、中止されている場合は担当医へ確認することとした。
・検査結果(DNA定量)が規定値を超えて検出された場合は、検査部担当者から担当医に直接連絡をするとともに、医療安全推進室に報告することとした。医療安全管理者は電子カルテの診療記録を確認し、必要な医療が遅滞なく実施されているかを確認することとした。
※ B型肝炎ウイルスキャリア
体内にB型肝炎ウイルスを持続的に保有しているが、肝炎としての症状が現れていない状態
※ 核酸アナログ製剤
B型肝炎ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス剤
※ ステロイドパルス療法
ステロイド薬を短期間に大量投与することで抗炎症効果が数分で発現する治療法。
治療を急ぐ急性肝炎や劇症肝炎などでステロイドパルス療法が選択される。」
谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
↓


