肝臓手術中の患者死亡で裁判上の和解が成立し市が和解金を支払う(報道)
病院側が設置した事故調査委員会はミスはなかったという結論でしたが、遺族が令和3年に提訴し、裁判所が3500万円の和解提案を行い、市は男性の家族に書面で謝罪するとともに、専決処分で3500万円の補正予算を決定し、先月末に和解金として支払いました。
なお、訴状で請求した損害賠償金は4079万7664円です。
NHK「市立甲府病院で7年前に医療事故 甲府市が家族に和解金支払う」(2025年8月26日)ご参照
これは、私が担当した裁判です。
裁判所の和解勧試は、以下の内容でした。
「第1 過失について
1 原告は、麻酔科医は、午後0時10分頃、膠質液、晶質液の調整、昇圧剤の投与などにより適正血圧まで上昇させるべき義務があったのにこれを怠った旨主張しています。
2 証拠によれば、麻酔科医は、臓器傷害等を防ぐため、血圧の低下が生じた際には、血管作動薬や輸液管理により適正血圧へと回復させなければならないとされています。
そして、証拠として提出された各文献によれば、平均血圧の基準は、最低60から80程度とされています。また、平常時、長期にわたって血圧が高い者の場合には、健常者よりも平均血圧を高めに保つ必要があり、平常時の20パーセントから30パーセントが基準とされています。
そうすると、血圧の高かった本件患者に対しては、少なくとも64.4mmHg(平常時から30パーセント減)以上に保たなければならないことになります。
そして、証拠によれば、9時56分から午後0時06分までの平均血圧は、概ね60を下回ったところで推移し、午後0時10分の時点で58.8と、上記基準を下回っています。
3 加えて、本件患者の体重からすれば尿量は、37ml/hが基準となるところ、11時13分から12時06分にかけて、尿量は14mlしか増えておらず、このことからも循環動態が適切に管理できているか疑うべきです。
4 以上の血圧の低下、尿量の低下からすれば、担当の麻酔科医は、少なくとも午後0時10分の時点において、麻酔薬の量の調整や、昇圧剤の投与などにより適正血圧の回復を目指し、外科医に状況を伝えるべき義務があったところ、これを怠った過失があるというべきです。
第2 因果関係について
原告は、午後0時10分の時点においては、適正血圧まで上昇でき、 外科医も、低血圧状態で手術をすることなく、適切に止血をすることができた旨主張しています。
証拠及び医師の意見によれば、麻酔科医の上記過失により、外科医は低血圧を十分に考慮しないまま、手術を行い、その結果、本件患者は、低血圧に起因し、出血源が一見わかりにくくなり、また、血液凝固機能に障害が生じ、緩慢な出血が継続したことで、出血性ショックにより死亡したものと認められます。」
裁判所は、死亡慰謝料及び近親者慰謝料2500万円 、逸失利益447万6572円 等を含む合計3008万8786円の損害を認め、3500万円(調整金含む)の和解案を示しました。原告、被告がそれを受け、訴訟上の和解が成立したものです。
和解条項に、「本件医療事故について深く反省し、原告に陳謝する。」、「被告は、本件医療事故を真摯に受け止め、これを教訓とし、医療安全と適切な医療の提供に努める。」と書かれています。
今後、このような事故がないように務めていただきたく思います。
谷直樹
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