弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

「医療事故の再発防止に向けた提言第 21 号 産科危機的出血に係る妊産婦死亡事例の分析 」

医療事故調査・支援センター(一般社団法人 日本医療安全調査機構)は、2025年10月22日、「医療事故の再発防止に向けた提言第 21 号 産科危機的出血に係る妊産婦死亡事例の分析 」を発表しました。

「WHO の指針では正常分娩の場合、胎盤娩出から 1 時間後まで 15 分ごとにバイタルサインを測定することが提唱されている 。一方で、児娩出から胎盤娩出までに時間を要することがある。そのため、異常を早期に認知するには、WHO の指針に加え、児娩出直後から分娩 1 時間後までは 15 分ごと、分娩 2 時間後までは 30 分ごと、または 1 時間間隔で測定することを推奨する」とのことです。
https://iris.who.int/server/api/core/bitstreams/e9f751fd-6eab-42cb-9e0c-0eb86a0365bb/content

【出血に伴う異常の早期認知】  すべての医療機関
提言 1 すべての産婦に対して、児娩出直後からバイタルサインと出血量を経時的に測定し、その推移を総合的に評価することで、出血に伴う異常を早期に認知する。

【出血に対する初期対応】  すべての医療機関
提言 2 出血量が経腟分娩 500 mL 以上(帝王切開 1,000 mL 以上)となり、さらに持続出血を認める場合、初期対応における呼吸循環管理として、酸素投与・母体のバイタルサインのモニタリング・急速輸液を実施する。また、産科的管理として、止血処置、原因検索を実施する。産科有床診療所および一般病院などでは母体搬送の準備をする。

【集学的治療への速やかな移行】  すべての医療機関
提言 3 分娩後異常出血となり、さらに持続出血を認める場合、その時点で集学的治療への移行が必要となる。産科有床診療所および一般病院などでは、直ちに母体搬送する。高次医療施設では母体搬送の症例も含めて、全身管理医や他科の医師と連携して対応するとともに、輸血準備を開始する。

【産科危機的出血の宣言と集学的治療】  高次医療施設
提言 4 産科危機的出血と判断した場合、「産科危機的出血」を宣言するとともに、対応を指揮するコマンダーを決定する。また、致死的 3 徴(低体温・アシドーシス・血液凝固障害)を防ぐために、加温された輸血の投与や積極的止血法(IVR、子宮摘出術など)の集学的治療を実施する。さらに、大量輸血時には、高カリウム血症の可能性を考慮して対応する。

【母体救命のための体制強化】  すべての医療機関
提言 5 平時から地域の医療機関間で連携し、母体搬送の体制構築・維持を図る。また、異常の認知から迅速に対応できるように、シミュレーション・トレーニングを実施する。さらに、高次医療施設においては、集学的治療へ円滑に移行できるよう、全身管理医や他科の医師、多職種を交えて実施する。



以下の11の事例を分析しています。

事例 1 産科有床診療所 / 経腟分娩 産道裂傷(頸管裂傷)
事例 2 産科有床診療所 / 経腟分娩 産道裂傷(会陰Ⅳ度裂傷)
事例 3 地域周産期母子医療センター(輸血は対応可)/ 経腟分娩常位胎盤早期剥離。
事例 4 産科有床診療所 / 経腟分娩 癒着胎盤
事例 5 産科有床診療所 / 緊急帝王切開術 妊娠高血圧腎症・HELLP症候群
事例 6 産科有床診療所 / 緊急帝王切開術 妊娠高血圧腎症・HELLP症候群
事例 7 一般病院 / 子宮摘出術 子宮破裂
事例 8 総合周産期母子医療センター / 経腟分娩 産道裂傷(頸管裂傷)
事例 9 地域周産期母子医療センター / 経腟分娩 癒着胎盤
事例 10 総合周産期母子医療センター / 緊急帝王切開術 癒着胎盤
事例 11 地域周産期母子医療センター / 予定帝王切開術 癒着胎盤



谷直樹

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by medical-law | 2025-10-28 00:18 | 医療事故・医療裁判