弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 11月 15日 ( 3 )

薬害イレッサ訴訟東京高裁判決についての「声明」

b0206085_429691.jpg薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団は,さきほど,「声明 (薬害イレッサ訴訟東京高裁判決について)」を発表しました.

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「本日、東京高等裁判所第10民事部は、東京地方裁判所の判決を覆し、国と企業の責任を否定する極めて不当な判決を言い渡した。

本判決は、承認前に集積された副作用報告症例について、当該医薬品との「因果関係がある可能性ないし疑いがある」というだけでは足りず、確定的に「因果関係がある」と言える状態に至らなければ、安全対策をとる義務が発生しないとするに等しい極めて特異な考え方を大前提に下されている。

これは、国や企業でさえ主張していない、医薬品安全対策に関する基本的な理解を欠いた前代未聞の立論であり、誤りという他はない。過去の多くの薬害事件は、企業と国が予防原則に基づいて、安全対策をとることの必要性を示しており、薬事法もこのような考え方に立って改訂され、添付文書の記載要領も改訂されてきたのである。本判決は、この到達点を根底から否定するものであり、本判決を前提とすれば、およそ薬害を防止することなどできない。

また、本判決はイレッサについて専門医限定が添付文書に加わったのは、第4版であるにもかかわらず、イレッサが当初より専門医のみが処方する薬剤であったとする誤った前提に立っているのみならず、専門医であれば、初版添付文書で十分に間質性肺炎の致死的危険性を理解しえたとするものであり、ソリブジン薬害事件の教訓を没却し、現場の医師に責任を転嫁する点においても不当である。

我々は、将来の医薬品安全対策、薬事行政に禍根を残す本判決の不当性を強く訴え、薬害イレッサ事件の全面解決まで闘い抜く所存である。
引き続きご理解とご支援をお願いする。 以上」


薬害訴訟の大きな歴史の中でみると,非常識な判決はなかったのと同じように扱われています.薬害肝炎訴訟の仙台地裁判決がその例です.

本判決は,企業の責任を否定した時点で,すでに失当です.
裁判長が,何もわかっていないことが明らかです.
薬害イレッサ問題は,国の責任をどのように構成するか,どこまで切り込んでどのように認めるか,にあったのに,全く見当外れの判決を下したわけですから,このような判決はなかったと同じに扱えばよいと思います.

歴史的にはなかったことと扱われるのは,破棄された東京地裁判決ではなく,見当違いの判断を下した高裁判決のほうでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2011-11-15 17:42 | 医療事故・医療裁判

薬害イレッサ,東京高裁(園尾隆司裁判長)で逆転敗訴

b0206085_4272952.jpg東京高裁(園尾隆司裁判長)は,11月15日,国とアストラゼネカ社の責任を認めた東京地裁判決を取り消し,請求棄却判決を下しました.
企業の責任を否定したのには驚きました.アストラゼネカ社もびっくりしたことでしょう.
控訴審では,新しい主張,証拠の提出はほとんどなく,裁判官の違いが,結論の違いを導いたように思います.

園尾隆司判事は,いろいろと有名な方で,宇都宮地方裁判所の所長だったときに,自分が担当ではない裁判に,実質4人目の裁判官として,形式的には「書記官の補助者」として,かかわり発問するなどして,問題になったことがあります。栃木県弁護士会は,東京高裁に,裁判官分限法に基づく懲戒処分を求めました.園尾隆司判事は,下級裁判所事務処理規則に基づき厳重注意を受けました.

東大落研出身で,話は上手なのですが.

ただ,どのような判事でも,判決は1人歩きしますので,薬害イレッサ事件の解決は遠のいた感じがあります.

谷直樹
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by medical-law | 2011-11-15 15:48 | 医療事故・医療裁判

京都大学医学部附属病院,血液浄化装置取り違え事故で患者死亡

b0206085_3135381.jpg◆ 報道

京都大学医学部附属病院で,脳死肝移植手術を受けた50歳代の男性患者が透析用の機器を取り違えで死亡する医療ミスが報じられました.

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朝日新聞「京大病院、透析装置を間違え患者死亡 府警が捜査」(2011年11月15日)は,次のとおり報じています.

「京大病院によると、患者は今月5日、脳死による臓器提供での肝臓移植手術を受けた。経過が良好だったため一般病棟に移った。もともと腎不全で透析を受けており、12日夜に当直医2人が透析用の濾過(ろか)装置を交換した。ところが、その約3時間後に血圧が低下するなど容体が悪化。治療を受けたが、翌13日午前10時50分に死亡した。」

 その後の調査で、付けられていた透析用の装置が、血液中の老廃物を取り除く本来の装置ではなく、血液の成分を分離するための別の装置だったことが分かった。当直医の指示で看護師が装置を取りに行き、保管場所の隣にあった別の装置を誤って持ってきた。当直医も確認を怠って装着したという。装置は形は似ているが、色や大きさは違う。」


◆ 感想

腎臓疾患に用いられる透析用の白色の濾過装置ではなく,肝臓疾患に用いられる血液中の成分を取り除く緑色の血液分離装置が装着されていた,ということなのです.
どちらも筒状で,確かに形状は似てはいますが,大きさ,色が違います.
交換した医師は,大きさなどの違和感を感じていた,とのことです.当直医2人がいながら,非常に残念です.

ところで,看護師と医師の連携作業の過程で事故がおきた場合,看護師の過誤か,医師の過誤か,両者の過誤の競合か,誰の過誤でもないのか,が問題になります.

まず,仮に,医師が曖昧な指示をだした場合,医師の指示について注意義務違反が考えられます.また,同時に,看護師のほうも曖昧な指示を自分勝手に解釈して判断せず,確認する注意義務があります.肝臓移植手術を受けた患者なので,肝臓疾患に用いられる緑色のものと思い込んでいたのかもしれませんが,曖昧な指示については確認する義務があります.

次に,医師は,看護師が持ってきた物を確認する注意義務があります.信頼して,渡された物をそのまま装着してよい,ということにはなりません.実際,大きさ,色が異なり,違和感を感じる物だったのですから,確認する注意義務があります.

京大病院以外でも起こり得ることかもしれませんので,再発防止のために,京大病院には,本件について綿密な調査を行い,調査報告書を発表していただきたい,と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-11-15 00:20 | 医療事故・医療裁判