弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 02月 05日 ( 2 )

福岡拘置所の医師法違反問題

福岡拘置所の医師法違反問題_b0206085_3385036.jpg◆ 報道

朝日新聞「福岡拘置所、診察せず薬与える 医師法違反の恐れ」(2012年2月4日)は,以下のとおり報じています.

福岡拘置所(福岡市早良区)が収容者に対し医師の診察のないまま薬を与えていたことが、わかった。医師が自ら診察しないで処方箋(せん)を出すことを禁じた医師法違反の恐れがある。拘置所側は「医師法違反だという認識がなかった」と話している。

福岡拘置所によると、高血圧や糖尿病など慢性疾患のある収容者に対し、看護師から相談を受けた医師が、直接診察することなく薬を処方していたという。いつから続いていたかは明らかにしていない。」


◆ 医師法第20条

医師法第20条は,次のとおり,定めています.

「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。」

このように,医師が診察をしないで,治療等を行うことは禁止されています.
なお,家族が患者本人に代わって受診し,投薬指示を受け,処方箋をもらうことは,実際に行われていますが,これは医師法違反ではありません.

本件で看護師を家族と同様に考えることはできませんし,看護師は医師の診療を補助する立場にありますから,「看護師から相談を受けた医師が、直接診察することなく薬を処方していた」というのが事実であれば,医師法20条に違反します.

◆ 処罰

医師法第33条の2は,
「次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
1.第6条第3項、第18条、第20条から第22条まで又は第24条の規定に違反した者
(以下略)」
と定めていますので,
無診察で薬を処方した医師は,50万円以下の罰金となります.

刑法第65条1項は,「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。」と定めています.

医師という身分のない者も,医師という身分のある者を介して犯罪結果に影響を与えた者は共犯として罰することを規定したものです.
したがって,拘置所の職員,看護師などは,医師法第20条違反の行為の共犯者として犯罪が成立します.

「医師法違反だという認識がなかった」とのことですが,法の不知は抗弁とはなりません.
刑法第38条3項は,「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。」と定めています.

実際にはどこまで起訴するかは検察の判断となりますが,実定法上は上記のとおり犯罪が成立します.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-05 02:24 | 医療

水俣病被害者救済特別措置法の救済申請7月末で締め切り

水俣病被害者救済特別措置法の救済申請7月末で締め切り_b0206085_3414365.jpg細野豪志環境相は,2月3日,水俣病被害者救済特別措置法の救済申請を7月末で締め切ると発表しました.
被害者団体の声を聞いたのは,形だけだったのでしょうか.

被害者4団体のコメントが,朝日新聞「患者「法踏みにじる」」(2012年2月4日)に,以下のとおり載っています.

◆ 大石利生・水俣病不知火患者会会長 

「あたう限りすべての被害者を救済する」という水俣病被害者救済法の精神を踏みにじるものだ。不知火海沿岸地域の住民健康調査が先決であり、期限を切って幕引きをするべきでない。今週、水俣に来た細野環境相は「熟慮する」と言ったが、1週間足らずで何を議論したのか。必ず被害者は取り残される。6月をめどに更に集団検診をしたい。

◆ 佐藤英樹・水俣病被害者互助会会長 

まだ手を挙げられない被害者がいるのにこの結論とは、水俣病がわかっていない。責任意識のなさがよくわかる。被害者互助会はあくまで裁判で闘っていく。

◆ 高倉史朗・チッソ水俣病患者連盟事務局長 

被害の実態調査なしで終わらせるのは許されない。(第一の政治決着があった)1995年当時、申請の呼びかけに力を尽くして被害者はもう残っていないと思ったが、関西訴訟の最高裁判決でさらに被害者が名乗り出た。それが水俣病事件史の教訓。締め切った後、今も続いている訴訟の決着がつき、再び被害者が名乗り出たらどうするのか。

◆ 中山裕二・水俣病被害者の会全国連絡会事務局長 

水俣病の解決に向けて何をするのか全体像を示さないまま、締め切りだけを議論していかにも拙速だ。出生年や居住歴で救済対象者を区切ることが正しいのか検証されていない。7月末締め切りの根拠はなく、法律にあるように「3年以内」はめどでしかない。

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-05 01:35 | 司法