弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 02月 08日 ( 3 )

富山刑務所で,搬送が遅れ受刑者死亡

b0206085_13205100.jpg◆ 事実の経過

受刑者(70代男性)は,2011年6月上旬に入所し,高血圧や糖尿病などのため定期的に治療を受けていました.
2012年2月5日午後8時35分,受刑者は,呼吸はしているものの,意識もうろうとした状態で,刑務官の呼びかけにこたえない状態でした.
刑務官は,体温を測り,低かったことを確認しました.
まばたきをしていたため,当直責任者は「意識があり,緊急性はない」と判断し,受刑者の体を湯たんぽや毛布で温めて経過をみました.

午後9時30分に看護師に連絡し,看護師が午後9時50分に到着しましたが,受刑者の脈が弱く,低体温で,血圧も測れない状態でした.
午後10時半過ぎに,消防に救急出動を依頼しました.
午後11時10分頃,受刑者は富山市内の病院に運ばれましたが,「救急車から引き渡しを受けてまもなく,男性は蘇生処置が必要な状態になった」とのことです.
受刑者は,午後11時52分,死亡が確認されました.

読売新聞「まばたきしたと搬送まで2時間余、受刑者死亡」(2012年2月8日)

◆ 感想

刑務官は,意識レベルの測定法を知らなくても,午後8時35分の時点で意識もうろうとした状態で呼びかけにこたえない状態で,体温が低いのですから,通常,重大な異変があると判断できるでしょう.その時点で,消防に救急出動を依頼すべき義務があったと思います.

本件は,死因が未だわかりませんので,死亡についての因果関係は未だ不明ですが,刑務所の対応に問題がある事案と思います.

なお,神戸地裁平成23年9月8日判決は,神戸拘置所で医師の診察を受けさせず凍死した事案で,国に賠償を命じています.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-08 12:08 | 医療

『薬害肝炎裁判史』

b0206085_1312857.jpg『薬害肝炎裁判史』が刊行となりました.

私も所属する,薬害肝炎全国弁護団は,先行するHIV訴訟の記録『薬害エイズ裁判史』などに学んできました.

本書は,弁護団の思い出の書ではなく,これからの集団訴訟に活用できる内容になっています.

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以下,弁護団からの本書の紹介です.


私共薬害肝炎全国弁護団(鈴木利廣代表)は、この度日本評論社より『薬害肝炎裁判史』を上梓致しました。

薬害肝炎全国弁護団は、汚染された血液製剤によるC型肝炎感染被害と向き合い、2002年から2007で約5年の闘いで薬害肝炎救済法の成立・国との基本合意という解決を得ました。その後も、患者会とともに闘い肝炎対策基本法を成立させるとともに、カルテなき被害を含む個別救済、薬害の再発防止、恒久対策の推進、企業交渉などに現在も取り組んでいます。

以上の弁護団活動の足跡をまとめた1冊です。

この訴訟の特徴の一つは、全国5地域(東京、大阪、名古屋、東北、九州)の120名の実働弁護士が、「一つの弁護団」として活動した点です(現在は24支部弁護団含む504名)。集団訴訟において各地弁護団が緩やかな連携をとることは通例です。薬害肝炎全国弁護団はさらに進んで当初から一つの弁護団としての意思決定を行って活動してきました。その具体的な内容について書き記しています。

また裁判史を編纂するにあたり、全国弁護団代表・事務局長による「座談会」も行いました。弁護団運営や立証の工夫から始まり、政治折衝の裏側、判決と和解を選択するポイント、若手弁護士へのエールに及ぶまで様々な論点につき掘り下げた意見交換を行っています。5年間の闘いの裏側でどのような議論が行われていたか、本音レベルのやりとりを残しました。

従いまして、今後に集団訴訟を手がける、また手がけている若手・中堅の法律家、集団訴訟に興味を持つ修習生、法律家を目指す方々に、本書が何らかのヒントになるのではないかと思います。

そのほか活動の足跡をまとめたDVDを添付しているほか、訴訟上の重要な資料も付けていますので、研究者や医療問題に興味をお持ちの方、一般の方にも手に取っていただける内容になっているかと存じます。

機会がありましたら手に取って頂ければ幸いです。


 ⇒アマゾンの案内 
 ⇒日本評論社の案内 

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by medical-law | 2012-02-08 11:14 | 医療事故・医療裁判

京都新聞の調査で,京都市の「市医」への公金支出問題が浮上

b0206085_12135042.jpg京都新聞は,自社の調査に基づき,2012年2月7日,京都市が感染症対策のために委嘱している開業医「市医」の親睦団体「京都市市医会」に,業務実態が伴わないのに,謝礼名目で約4400万円を支出している疑いがあることを報じました.

◆ 「緊急対応ゼロで謝礼4400万円 京都市の委嘱医師

「京都市が感染症対策のために委嘱した開業医「市医」に対し、緊急時の対応などへの謝礼名目で2011年度までの10年間に計約4400万円を支出しながら、緊急対応が一度もないことが、京都新聞社の調査で分かった。」

◆ 「謝礼、医師に直接渡さず

「市は、集団予防接種の報酬を市医指定の金融機関へ振り込む一方、緊急対応名目の謝礼は市医に直接渡していないことが、京都新聞社の調査で分かった。」


◆ 「ワイン講座、旅行に支出

「市医でつくる親睦団体「京都市市医会」が、懇親会や、感染症とは無関係な文化講演などの費用に、謝礼を原資とした会費を充てていたことが、京都新聞社の調査で分かった。」

「京都・市民・オンブズパースン委員会」の折田泰宏共同代表(弁護士)の以下のコメントを紹介しています.

「公金の不透明な支出は問題。市医謝礼はそもそも対価性を伴っておらず、支出の流れと使途をみれば、親睦団体の運営費に充てられることを目的とした違法なものだ。」

つまり,京都新聞の調査によると,京都市は,緊急対応の実態がないのに,緊急対応の謝礼を「京都市市医会」に振り込み,「京都市市医会」は,それを会費として,懇親会やワイン講座や旅行にあてていたという疑いがあるようなのです.

【追記】

msn産経「「市医」報償費を廃止 予防接種報酬と一本化へ 京都市」(2012年3月30日)は,次のとおり報じています.

「京都市が感染症対策で開業医70人に委嘱している「市医」をめぐる問題で、市は、集団予防接種の従事報酬とは別に支出してきた報償費を4月から廃止する方針を決めた。従事報酬を現行の1万9400円から政令指定都市の平均額にあたる2万2千円に引き上げ、支払いを一本化する。

 市は市医に対し、予防接種ごとの従事報酬とは別に、予防接種の医師が不足した場合の応援などの職務への謝礼として1人あたり年間5万6800円の報償費を支払ってきた。市民団体が2月、「違法な公金支出だ」として約400万円を市に返還させるよう求める住民監査を請求。今月23日付で「業務実態がない市医を特定していない」として却下されていた。

 市は「適正な支出であるという認識は変わらないが、支払いが2種類になっていると市民に誤解を与える可能性がある。より分かりやすい形でやるべきだと判断した」としている。」


谷直樹
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by medical-law | 2012-02-08 02:48 | 医療