弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 02月 16日 ( 2 )

日本医療機能評価機構の「産科医療補償制度運営委員会」,制度見直しに向け議論

日本医療機能評価機構の「産科医療補償制度運営委員会」,制度見直しに向け議論_b0206085_9454777.jpg「産科医療補償制度運営委員会」は,2014年1月の制度見直しに向け2013年2月に報告書を取りまとめるため,2012年2月15日,会合をもちました.

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キャリアブレイン「産科補償14年に新制度へ、検討に着手- 運営委、13年2月にも報告書」(2012年2月15日)は次のとおり報じています.

「この日の会合では、原因分析委員会の岡井崇委員長(日本産科婦人科学会副理事長)からヒアリングを行った。岡井委員長は、医学的な観点から重度脳性まひの事例を分析したことで「発生頻度を減少させ得る感触を得た」と述べ、原因分析の意義を強調した。

 岡井委員長は、脳性まひの原因分析が進まなかった背景には、医学的に防ぐことが難しいと判断される例でも訴訟に発展するケースがあり、「医療提供者側が自分たちを守るために解析を避けている」ことがあると指摘。「これを制度で打ち破ることができるとすれば、とても良い結果につながるだろう」と述べた。」


医学的な観点から重度脳性まひの事例を分析したことで,その発生頻度を減少させ得る感触を得た,という指摘は,とても重要です.

もっとも,今の原因分析員会の検討は,医師を訴訟から守るために,及び腰の分析になっているところもあるように思います.原因分析をしっかり行うことが,無理なものは無理として訴訟を減らすことにもなるでしょうし,長期的にみれば重度脳性麻痺の発生を減らし医師が訴えられることが減少することになるでしょう.

なお,同じ日の読売新聞「峻くんの命・反響(上)出産事故 募る不信感」には,次の記載がありました.

「「早く申請させ、訴訟を起こさせまいとしているように見えた。責任追及を逃れるための制度と思っているのでは」。両親は、かえって不信感を強めている。

 提訴を検討中という父親(33)は「きちんと反省して再び起こらないようにしてくれるなら、病院の対応に傷ついたり訴訟をしたりする人は減ると思う。でも、病院側の様子からは、世間体を気にしているだけで、反省はしていないように見える」と話した。」

患者側は,お金をもらえればそれでよしとしているわけではなく,責任を認め,反省し再発を防止することを求めていることが分かます.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-16 02:09 | 医療事故・医療裁判

「第1回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」

「第1回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」_b0206085_7485415.jpg◆ 医療事故の原因究明及び再発防止の仕組み等のあり方について幅広く検討する部会

「第1回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」(座長=山本和彦・一橋大大学院教授)が,2012年2月15日,開催されました.

この部会は,「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」(座長=里見進・東北大病院長)の下に設置されたもので,医療事故の原因究明及び再発防止の仕組み等のあり方について幅広く検討を行うものです.

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部会のメンバーは以下のとおりです.

有賀徹 昭和大学病院 院長
鮎澤純子 九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座 准教授
飯田修平 練馬総合病院 院長
岩井宜子 専修大学法科大学院 教授
加藤良夫 南山大学大学院法務研究科 教授/弁護士
里見進 東北大学病院 病院長
高杉敬久 日本医師会 常任理事
豊田郁子 医療事故被害者・遺族/新葛飾病院 セーフティーマネージャー
中澤堅次 独立行政法人労働者健康福祉機構 秋田労災病院 第二内科部長
樋口範雄 東京大学大学院法学政治学研究科 教授
本田麻由美 読売新聞東京本社 編集局社会保障部 記者
松月みどり 日本看護協会 常任理事
宮澤潤 宮澤潤法律事務所 弁護士
山口育子 NPO 法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長
山口徹 国家公務員共済組合連合会虎の門病院 院長
山本和彦 一橋大学大学院法学研究科 教授
(敬称略)

◆ 第1回の議論

キャリアブレイン「医療事故調査対象、医師法21条含め議論- 事故調検討部会が初会合」(2012年2月15日)は,次のとおり報じています.

「この部会で議論する論点として、▽調査を行う目的▽調査を行う対象や範囲▽捜査機関との関係―などを挙げており、初会合では「目的」について委員から、「ここに参加している委員で一致しているのではないか。事故が起きても、情報収集することなく、分析もされずに放置されたら、医療の質を向上させる文化は育っていかない」(加藤良夫・南山大大学院教授)などの意見が出た。

 調査対象や範囲、捜査機関との関係については、活発な議論があった。山口徹・虎の門病院長は「今、医師法21条で届けられて、司法解剖に回されると、解剖の結果も知ることができない。医療安全に役立たせなくてはいけない事例は、その材料すら入手できない。21条問題も含めて検討しないといけない」と強調。飯田修平・練馬総合病院長は、「きちんとした情報を出すためには、安心してデータを出せるような状況にしていただきたい」と要望した。鮎澤純子・九大大学院准教授も、「医療者が不安なく調査に当たれるよう、現場の声を吸い上げて解決する必要がある」と述べた。

 同省では、医療事故調査に関して、過去に議論してまとまらなかった経緯があることから、「議論を醸成させるのが最大の狙いで、特に結論を出す時期は決めていない」(木村博承・大臣官房参事官)としている。」

◆ 感想

民事裁判は,民事賠償責任の有無と賠償金額をめぐって争われますので,事故の背景,原因についての広汎な検討には適さず,それらを検討し,再発防止,医療改善につなげる仕組むが必要です.

ところが,事故調査により事実が明るみにでることで逮捕されるのではないか,民事の損害賠償を求められるのではないか,と過度に怖れる人たちがいます.そのため,事故の原因を解明するための基本的な調査の仕組すら実現できないでいます.

そこで,過失があっても刑事責任を負わない,医師と医療機関は民事の賠償責任を負わない,とすれば,その不安は解消できますが,こんどは,本来負うべきものを負わないとするわけですから,代替措置が必要になります.

刑事裁判は,運転手の交通事故も医師の医療事故も同様に,業務上過失傷害,業務上過失致死として扱われます.医師は運転手と違って刑事責任を負わないとするには,それなりの合理的な理由が必要です.たとえば,医師は刑事責任を負わないとするなら代わりに厳しい行政処分を科すことが必要となるでしょう.

また,たとえば,医師と医療機関が被害者に対し民事損害賠償責任を負わないとするなら,被害者が別の機関から広く手厚い損害賠償を受けられるようにし,その機関が医師と病院に求償を行う仕組みを作る必要があるでしょう.

そもそも,真摯な原因究明,再発防止への努力がない限り,訴訟回避のために金で解決しよう,というところを主眼にする議論は,被害者の納得を得られないでしょう.
検討会の議論に注目したいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-16 01:28 | 医療事故・医療裁判