弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 02月 21日 ( 5 )

薬害イレッサ,厚労省が和解案に否定的な見解を学会に発表させた裏側が次第に明らかになりつつあります

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1年以上前の話ですが,イレッサ訴訟1審裁判所の和解勧告(平成23年1月7日)に対し,日本臨床腫瘍学会,日本血液学会,日本肺癌学会と日本学術会議などが否定的な見解を発表して,世論を誘導し,国は和解を拒否しました.

後に,裏で,厚労省が見解の下書きをしていたなどの事実が判明し,間杉純医薬食品局長が訓告処分を受け,平成23年8月15日辞職しました.

しかし,その働きかけの具体的な事実は,闇に埋もれたままでした.

薬害オンブズパースン会議は,情報公開を請求し,公開されたのはごく一部でしたので,情報公開を求める訴訟を提訴し,国は情報公開訴訟で理由をつけにくいものについて,メールなど一部を開示しました.

東京新聞「学会に「和解案なら新薬承認困難」イレッサ訴訟で厚労省」(2012年2月21日)は,次のとおり報じています.

(厚労省が学会に送ったメールは)「裁判所の所見に従うならば,あらゆる未知の危険まで明らかにならないと抗がん剤のような新薬の承認ができなくなる」と強調。添付文書にある副作用に対してまで,注意が足りない,その責任は国であると言われるならば,今後リスクのある医薬品の承認はますます困難」とし,和解勧告の内容で合意すれば,薬事行政に支障が出ると読める内容だ。」

イレッサ薬害の責任を認めると,新薬承認に支障がでる,という飛躍した論理は,厚労省が学会を煽って言わせたものだったのです.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-21 15:07 | 医療事故・医療裁判

産科医療補償・再発防止委員会,診療記録の40%に不備を指摘

b0206085_1034229.jpg産科医療補償制度・再発防止委員会は,2012年2月20日,4月に発表を予定している報告書案を検討しました.

NHK「産科医療補償 40%で記録に不備」(2012年2月21日)は,次のとおり報じています.

「出産に伴って脳性まひになった子どもに補償金を支払う「産科医療補償制度」で、これまでに分析が終わった79例のうちおよそ40%に、異常が現れたときの記載がないなど診療記録に不備があったことが分かりました。

産科医療補償制度は、出産に伴って脳性まひになった子どもに、医療機関に過失があるかどうかにかかわらず補償金を支払うもので、再発防止策を検討する委員会が20日、これまでの分析をまとめた報告書の案を示しました。
この中で、去年12月までに補償金の支払いが決まった79例について分析した結果、39%に当たる31件でカルテなどの診療記録に不備があったことが分かりました。
具体的には、赤ちゃんの状態や救命処置について記していないものが8件と最も多く、次いで、生まれる前の心拍数を評価していないものが7件など、異常が現れたときの詳しい記載がない事例が目立っています。
このうち呼吸を始めるまでに30分近くかかったケースでは、処置が的確でなかった可能性があるものの、記載が不十分で検討できなかったとしています。
再発防止委員会は「原因分析や再発防止には診療記録の情報が不可欠で、特に異常が現れたときの母子の状態や医師の判断については、詳細に記載するよう医療機関に求めていきたい」としています。」


原因分析とそれをふまえた再発防止は,事実の正確な認定の上に可能となります.診療記録に正確な事実を記載されていることは,原因分析等の検討のために不可欠ですです.
異常が現れたときの詳しい状態や救命処置など最も大事な部分が記載されていないのは,大変困ったことです.

また,医療事件では,当然記載すべき事項が記載されていないため,原因が不明,したがって過失の有無が不明,というケースは,しばしばあります.医学的に未解明で原因不明というのではなく,単に観察が不十分で記載がないため原因不明という場合です.
さらに,カルテに記載がないため,事実経過の認定が争われる場合もあります.
このような無用の争いを避けるためにも,カルテには正確な事実を記載していただきたいと思います.

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by medical-law | 2012-02-21 09:49 | 医療事故・医療裁判

抗インフルエンザウイルス薬「イナビル」を使用した10歳代の患者の転落死で通知

b0206085_8554238.jpg転落までの状況が明らかになっておらず,異常行動が発現したのか否かについても不明ですが,抗インフルエンザウイルス薬のラニナミビルオクタン酸エステル水和物を使用した10歳代の患者の転落死が報告されました.

厚生労働省医薬食品局安全対策課長は,平成24年2月14日,薬食安発0214第9号「抗インフルエンザウイルス薬の使用上の注意に関する 注意喚起の徹底について」を発し,以下のとおり注意喚起を引き続き徹底するよう指示しました.

「因果関係は不明であるものの、本剤を含む抗インフルエンザウイルス薬投薬後に異常行動等の精神神経症状を発現した例が報告されている。小児・未成年者については、異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、1)異常行動の発現のおそれがあること、2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状があらわれるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。」

通知は「ラニナミビルオクタン酸エステル水和物」と記しているのみですが,商品名でいうと「イナビル吸入粉末剤」です.臨床試験でオセルタミビル(タミフル)の5日間投与と同等の効果が確認されているとのことで,タミフルの5倍効くとして宣伝されているようです.いずれにしても抗インフルエンザウイルス薬は要注意です.

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by medical-law | 2012-02-21 01:09 | 医療

国立がん研究センター東病院,中間報告,基準値の誤設定隠蔽を認める

b0206085_912698.jpgmsn産経「検査の意味を把握せず がんセンター東病院 隠蔽も認める」(2012年2月20日)は次のとおり報じています.

「国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の臨床検査部で誤検査が行われ、事実が隠蔽(いんぺい)されたとされる問題で、センターは20日、臨床検査技師らが検査試薬や検査自体の意味を把握しないまま業務を行ったり、問題を隠蔽するケースも複数あったりしたなどとする調査の中間報告を行った。

 報告では、がんの発生を確認する成分「βHCG」を検出する腫瘍マーカー検査で、必要な成分以外も検出する試薬を使用していた問題を「誤った試薬を使ったわけではない」と説明。一方で「臨床検査技師の大多数は、試薬導入の経緯や検査の意味を正確に把握しておらず、検査の測定内容に誤解があった」と、実質的に正しい検査が行われていなかった実態を認めた。

 さらに、βHCGの問題や、検査結果が正常か異常かを判断するための「基準値」が多くの項目で誤設定されていた問題が他部署に発覚しないよう、臨床検査部で隠蔽工作を行っていたと認定。肝炎検査でも必要な再検査の実施が徹底されず、その事実関係を隠蔽していたことなども認めた。

 記者会見した嘉山孝正理事長は「さらに3、4カ月かけ調査したい」とした。」


国立がん研究センター東病院,臨床検査部が試薬の誤使用を医師らに伝えず」でも書きましたが,誤りを医師に伝えず,隠蔽してきたことはきわめて重大です.

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by medical-law | 2012-02-21 00:28 | 医療

民医連の調査,経済的事情で受診が遅れ死亡した人数,平成23年は67人

b0206085_942826.jpgmsn産経「「無保険」など受診遅れで67人死亡 民医連「氷山の一角」」(2012年2月20日)は,次のとおり報じています.
 
「全日本民主医療機関連合会(民医連)は20日、経済的事情で国民健康保険料を滞納して「無保険」状態になるなどの理由で受診が遅れ、死亡した人が平成23年、22都道府県の加盟病院・診療所で67人いたと発表した。

 調査は6回目で、最多の71人だった22年に次ぐ人数。民医連は「調査対象が限定されているので全体から見れば氷山の一角。早急な対策が求められる」としている。

 23年は計663施設を対象に調査。受診遅れで死亡した67人のうち無保険は25人、滞納で有効期間が短くなる「短期保険証」が10人、さらに滞納が続き保険証を返して医療費全額をいったん払わなければならない「資格証明書」が7人いた。残る25人は、保険証はあっても医療費が払えなかったりした人。死因の半数余りはがんだった。」


民医連自身も認めているとおり,加盟の病院・診療所の663施設に限られた調査ですから,経済的事情で受診が遅れ死亡した例は遙かに多いでしょう.
医療費の無駄遣いが言われる一方で,経済的弱者が医療を受けるのに躊躇する状況があることが分かります.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-21 00:16 | 医療