弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 03月 19日 ( 5 )

慶應義塾大学医学部教授と専任講師(呼吸器外科),臨床研究のために患者31人から無断で骨髄液を採取

b0206085_21194493.jpg慶應義塾大学医学部教授(呼吸器外科,50歳代)と専任講師(同,40歳代)が,肺がんの幹細胞に関する臨床研究(当時,倫理委員会の承認なし.採取後承認.)を企図して,患者本人の同意を得ることなく,昨年秋ごろ,手術中,少なくとも31人の患者から,骨髄液を採取していたことが報じられています.

毎日新聞「慶応大医学部教授:無断で骨髄液採取…複数がん患者らから」(2012年3月19日)ご参照

近年,日本では,患者は臨床研究の材料にされることを望まない患者が多いため,臨床研究の実施が難しい状況にあります.
本件は,慶應義塾大学医学部教授らが,そのような状況のなかで,研究熱心のあまり,行ってしまったことなのでしょうが,明らかに患者の権利を侵害するもので,許されることではありません.
もし,慶應義塾大学医学部に,臨床より研究を優先する風潮があるとしたら,きわめて問題です.
徹底的に事実を調査し,明らかにしていただきたい,と思います.

【追記】
毎日新聞「骨髄液無断採取:がん患者ら31人から 慶大教授処分へ」(2012年3月20日)によれば,「学部の倫理委員会に申請する前の昨年10月24日から、肺がんの手術を行う40~84歳の患者26人に対し、事前の説明や同意のないまま、肋骨(ろっこつ)から骨髄液2CCを採取していた。さらに、「比較するデータが必要」として、がんでない患者5人から無断で手術中に骨髄液を採取。他に手術で切除された肋骨の断片からも骨髄液を採取していた」とのことです.

倫理指針に違反した臨床研究について(お詫びとご報告)」ご参照

「(1)骨髄液を採取された患者さんに対し、本臨床研究に関するご説明と、同意を取らずに末梢血、骨髄液を採取したことについての謝罪を、担当医師を通じて行いました。
(2)今回の臨床研究を含め、呼吸器外科から申請され承認されている、全ての臨床研究の停止を命じました。
(3)「肺癌における末梢血中癌細胞検出に関する臨床研究」について、全ての患者さんに対して事前に研究内容をご説明し、同意を頂いていたかについて確認中です。」
とのことです.

1)教授らはどうしてこんなことをしたのか(動機,背景,経緯),2)大規模な大学病院でこんなことがどうして可能だったのか,3)どうすれば今後再発を防止できるのか(再発防止策を3点あげていますが,それで十分でしょうか.),等をさらに調査し報告いただきたいと思います.


谷直樹
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by medical-law | 2012-03-19 17:59 | 医療

市立三田市民病院,看護師が患者に睡眠導入剤を無断投与,送検される

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読売新聞「夜中のナースコール嫌…睡眠導入剤を無断投与」(2012年3月19日)は,次のとおり報じています

「兵庫県三田市の市立三田市民病院で、高齢の入院患者数人に睡眠導入剤を無断投与したなどとして、県警捜査1課が、同病院の元看護師の男(34)(兵庫県丹波市)を医師法違反(無資格医業)と窃盗の両容疑で書類送検していたことが、捜査関係者への取材でわかった。

 元看護師は、「夜中にナースコールを鳴らされるのが嫌で患者を眠らせたかった。仕事のストレスがたまっていた」と容疑を認めているという。

 書類送検は16日付。捜査関係者によると、元看護師は昨年1~5月頃、ナースステーションから睡眠導入剤を無断で持ち出し、当直勤務中に担当する70~80歳代の数人に点滴をする医療行為を行った疑い。」


患者に具体的な健康被害が残っていないとしても,これは,起訴の可能性が高いでしょう.

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by medical-law | 2012-03-19 09:30 | 医療事故・医療裁判

日弁連,「法曹人口政策に関する提言」

b0206085_20562080.jpg日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年3月15日,「法曹人口政策に関する提言」を発表しました.

提言は,弁護士人口を検証する前提としての「弁護士像」につき検討した上で,「公共性の実践」,「法的需要」,「法曹の質の維持」の面から,これまでの弁護士人口急増政策の評価を行っています.

「公共性の実践」の面からは,これまでのような弁護士急増は必要でなく,司法基盤の整備や弁護士会の態勢構築を進めつつ,状況に応じた漸増を図ることが有効かつ適切であると評価できる,としています.

「法的需要」の面からは,弁護士急増政策の前提となった需要予測が外れ,新人弁護士の就職難という形で需給ギャップが生じている事態を直視し,弁護士人口の急増から漸増へと,速やかな軌道修正を行う必要に迫られていると評価し得る,としています.

「法曹の質の維持」の面からは,もはやこれまでのような急増を維持することはできず,増員のペースを漸増に改める必要がある,としています.

1000名という議決をあげた単位会も少なくありませんが,多様な意見があるため,日弁連としては1500名で妥協しています.

提言全文は19頁もありますので,目次がほしいところです.
要旨は,以下のとおりです.

「1.弁護士のアイデンティティは「プロフェッション」性、すなわち、高度の専門性と公益的性格にある。したがって、弁護士には市民から信頼されるに相応しい学識、応用能力と弁護士職の公益的性格の自覚が求められる。そのようなプロフェッション性から導かれる「質」を確保するためには、必要な水準に達しない者にまで弁護士資格を付与することがないように、司法試験の合格者数を、法曹養成制度の成熟度に見合うものにしなければならない。

また、「市民にとってより身近で利用しやすく頼りがいのある司法」を実現するためには、現実の法的需要や司法基盤整備の状況ともバランスの取れた法曹人口の「適正さ」を確保すべきである。

2.現状では、法曹養成制度の成熟度、現実の法的需要、司法基盤の整備状況のいずれに対しても、また裁判官・検察官の増員の程度と比べても、弁護士人口増員のペースが急激であり過ぎる。そのため法曹養成過程における「法曹の質」の維持への懸念、新人弁護士の「就職難」等によるOJT不足から実務経験・能力が不足した弁護士が社会に多数増えていくことへの懸念、法曹志望者の減少などの深刻な問題を引き起こしている。市民のための司法を実現するためには、これらの問題を解決する必要がある。そのためには、いまや法曹人口の急増から「状況に応じた漸増」へと、速やかに移行すべきである。

司法制度改革推進計画(2002年3月19日閣議決定)のうち「平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3,000人程度とすることを目指す」との指針を示した部分は、現状ではもはや現実的ではなく、抜本的に見直す必要がある。

3.司法試験合格者数をまず1500人にまで減員し、更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべきである。

司法試験合格者の減員は法曹人口の減少を直ちに意味せず、急増か漸増かという増員ペースの問題である。司法試験の年間合格者数を1500人にまで減員しても、2027年頃には法曹人口は5万人規模に達し、2053年頃には6万3000人程度で均衡する。年間合格者数を1000人にしても、2043年頃には法曹人口は約4万9000人に達し、2053年頃には4万2000人程度で均衡する。

4.将来的な法曹人口は、現実の法的需要や司法基盤整備の状況、法曹の質などを定期的に検証しながら、検討されるべきである。その検証を踏まえて、司法試験合格者数についても定期的に検討すべきである。」


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by medical-law | 2012-03-19 02:13 | 弁護士会

記録映画「もういいかい ハンセン病と三つの法律」上映会

b0206085_22124512.jpg「もういいかい ハンセン病と三つの法律」(カラー、143分)が,3月24,25日,兵庫県立美術館で上映されます.

会場 兵庫県立美術館ギャラリー棟1階 ミュージアムホール
時間 24日10:30~,14:00~ 25日14:00~
定員250名(各回入替制) 
1000円
製作;鵜久森典妙氏
監督;高橋一郎氏

神戸新聞「ハンセン病強制隔離の実態 神戸のグループが映画化」(2012年3月18日)ご参照

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by medical-law | 2012-03-19 01:41 | 医療

3月25日,医療基本法シンポジウム~医療政策のグランドデザイン  医療基本法の制定を!

b0206085_21113424.jpg次の日曜に,東京大学本郷キャンパスで,医療基本法シンポジウムが開かれます.
病院側,医療政策研究者,マスコミ,参議院議員,弁護士など各方面のお話が聞けます.
弁護士は,前田哲兵先生と鈴木利廣先生がお話します.
ご参加をお奨めいたします.

◎日時:2012年3月25日(日)13:00~16:00 (開場12:30)

◎場所:東京大学本郷キャンパス小柴ホール
◎プログラム

第1部 : 医療基本法について

◆「なぜ今、医療基本法が必要なのか」その理由を説明する。
田中秀一(読売新聞東京本社社会保障部長)

◆私たちが考える「医療基本法」の骨子案を発表する。
前田哲兵(弁護士・H-PAC医療基本法制定チームリーダー)

第2部 : パネルディスカッション
医療提供者側、患者側、有識者、政策立案者などそれぞれのお立場から、現代医療の抱える問題を多角的に読み解き、医療基本法の必要性等について討議する。

◆医療現場の立場から医療基本法を考える。
大井利夫氏(日本病院会顧問・日本診療情報管理学会理事長・上都賀総合病院名誉院長)

◆患者の権利と安全な医療の確立に資する医療基本法の制定を目指す。
鈴木利廣氏(弁護士・医療問題弁護団代表・薬害肝炎弁護団代表・明治大学教授)

◆医療政策の立案に携わった経験を踏まえ、日本の医療の「急所」を解き明かす。
島崎謙治氏(政策研究大学院大学教授・前国立社会保障・人口問題研究所副所長)

◆人々の最後の砦を構築するために。
中島豊爾氏(全国自治体病院協議会・副会長 地方独立行政法人岡山県精神科医療センター 理事長兼名誉院長)

◆基本法の制定による医療再建と社会保障改革を!
小西洋之氏(参議院議員・民主党政調会長補佐)

参加費:無料(先着150名)

◎ お申込み ・ お問合わせ
東京大学公共政策大学院医療政策実践コミュニティー(H-PAC)
⇒  医療基本法制定チーム事務局

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-19 01:00 | 医療