弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 03月 20日 ( 3 )

東京地裁立川支部喫煙所で弁護人弁護士が判決前に裁判員と接触,検察庁が再発防止を要請

b0206085_2039611.jpg◆ 報道

NHK「弁護士が判決前に裁判員と接触」(2012年3月19日)は,次のとおり報じました.

「裁判員裁判の被告の弁護を担当していた東京の弁護士が、裁判員法に違反して裁判員と接触し、判決を決めるための評議の様子などについて聞いていたことが分かりました。
東京地方裁判所は、裁判員法に違反する重大な問題だとして、所属する弁護士会に対して処分も含めて対応を取るよう要請しました。

裁判員に接触していたのは、東京弁護士会に所属する畑江博司弁護士(59)です。
東京地方裁判所によりますと、畑江弁護士は、今月16日に東京地裁立川支部で懲役9年の判決が言い渡された事件の被告の弁護を担当していましたが、審理の期間中にこの裁判の裁判員に接触していたということです。

関係者によりますと、畑江弁護士は、裁判所の喫煙室で裁判員に話しかけ、評議でどの裁判員が積極的に発言しているかなどを尋ねたということです。
裁判員法では、裁判の公正さなどを保つため、判決が出るまで、裁判員に接触することが禁止されていますが、裁判所は、畑江弁護士が接触したことを認めて謝罪したことなどから、解任の手続きはとらず、判決は予定通り16日に言い渡されました。

これについて、裁判所は、法律に違反する行為で重大な問題だとして、畑江弁護士が所属する東京弁護士会に対し、19日夕方、処分も含めて対応を取るよう要請しました。
一方、東京地方検察庁立川支部は、事態を重く見て、裁判所に対して再発の防止に向けた対応を取るよう申し入れたということです。

畑江弁護士は、NHKの取材に対し、「喫煙室にタバコを吸いに行ったら裁判員がいたが、世間話をしただけだ」と話しています。

東京地方裁判所の岡田雄一所長は、「裁判員裁判の公正な運営を確保するうえで見過ごせない行為で、誠に遺憾だ」というコメントを出しました。
東京弁護士会の竹之内明会長は、「今後、事実関係を調査して、しかるべき措置をとるとともに、同様の事態が生じないよう周知・指導を徹底したい」とコメントしています。」


産経の報道では,「評議の雰囲気などについて裁判員に尋ねた」となっています.

◆ 感想

弁護士が法に反して評議の雰囲気などについて裁判員に尋ねたとすれば,厳しく指弾されるべきと思います.
世間話でも疑惑を招く以上許されることではありません.
さらに,弁護士がいまどき未だタバコ喫煙をしていることにも呆れました.弁護士は,依頼者に責任ある仕事を果たすために,自身の健康維持,健康管理に努めねばならないはずです.喫煙弁護士が卒煙すれば,頭脳明晰度が2割くらいはパワーアップし,高齢になっても元気に仕事ができる可能性が高まるでしょう.

東京地方検察庁立川支部が裁判所に対して再発の防止に向けた対応を取るよう申し入れたとのことですから,京地方裁判所立川支部は,再発防止のためにも,これを機会に,喫煙所を撤去し,敷地内禁煙にしたらいかがでしょうか.

喫煙した人の肺の中には汚れた空気が残っていますし,喫煙所で染みこんだ衣服,髪から有害物質が発散されます.そのため,喫煙所から戻った喫煙者による残留受動喫煙被害が生じます.
これを「サードハンドスモーク」(third hand smoke)と言います.
つまり,分煙では,受動喫煙被害を防止することはできないのです.

たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」(WHO Framework Convention on Tobacco Control)8条は,「締約国は、タバコの煙にさらされることが死亡、疾病および障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されている事を認識する。
 締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所および適当な場合には他の公共の場所におけるタバコの煙にさらされることからの保護を定める効果的な措置を講ずる。」と定めています.

タバコ煙からの保護義務は、基本的人権と自由に基づいたものです.
国には,個人を受動喫煙から守る義務があり,裁判所も,国の機関ですから,本来,屋内完全禁煙,敷地内禁煙とすべきです.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-20 20:11 | タバコ

少女漫画家三原順さんの命日

b0206085_2181720.jpg昨年『はみだしっ子』のタイトルで書きましたが,今日3月20日は,享年43歳で死去した少女漫画家三原順さん(本名鈴木順子さん)の命日です.
三原順メモリアルホームページ」には献花のページが設けられています.
心よりご冥福をお祈りいたします.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-20 18:20 | 日常

上市町,原因が特定できない胎児死亡で,救命可能性を否定できず,1000万円和解

b0206085_2045483.jpg読売新聞「死産巡る賠償請求で和解 病院運営の上市町1000万円支払い」(2012年3月20日)は,次のとおり報じています.

「上市町法音寺の「かみいち総合病院」で昨年1月、町内の女性が死産をし、病院の運営主体の町が女性と夫に1000万円の賠償金を支払うことで和解していたことが19日、分かった。町議会3月定例会最終日の全員協議会で町が明らかにし、この日、賠償金の支払いを盛り込んだ今年度町病院事業会計補正予算案を本会議に提出し、採択された。

 かみいち総合病院によると、昨年1月、女性が出産中、胎児が子宮内で死亡した。同病院は、県内の基幹病院に胎児の遺体を搬送、病理解剖が行われたが、死産の原因は分からなかった。同2月には、県内の産科医ら複数の外部専門委員に資料を渡し、原因究明を委嘱したが、特定できなかったとしている。

 一方、病院は昨年5月から、和解交渉を進め、今年2月下旬に和解した。損害賠償の支払いに応じた理由について、同病院事務局の土肥真一局長は「原因は特定できていないが、胎児が助かっていた可能性も否定できないため、慰謝料請求に応じた」と話している。」


胎児死亡の原因を特定するのは困難な場合が多いと思いますが,妊娠経過が順調で,陣痛が開始している状況では,適切な時期に娩出していれば生きて生まれた可能性が高いと考えられる場合もあります.

人は,出生により権利義務の主体となります.
胎児は人ではないため,胎児死亡は,母体に対する傷害として評価されます.
しかし,適切な時期に娩出していれば生きて生まれた可能性が高い場合は,対応が遅く娩出時期が遅れ胎内で死亡したためかえって低い賠償金額となるのは不合理です.適切な時期に娩出していれば生きて生まれた可能性が高い場合は,胎児死亡でも人の死亡に近づけた賠償金額が相当でしょう.

本件は,原因は特定できていないが,胎児が助かっていた可能性も否定できないため,1000万円で示談したとのことなので,金額は適切と思います.

なお,私が原告代理人として担当した東京地裁平成14年12月18日判決(判例タイムズ1182号295頁)は,適切な時期に娩出していれば生きて生まれた可能性が高い場合で,3200万円の賠償を命じています.この判決は,慰謝料2800万円,葬儀費用100万円,弁護士費用300万円を認めています.
もちろん,適切な時期に娩出していれば,胎児死亡を回避できた可能性の高低によっても違い,胎児死亡すべてにあてはまるものではありませんが,胎児死亡における損害評価の方法を示唆する判決です.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-20 16:34 | 医療事故・医療裁判