弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 03月 31日 ( 5 )

第2回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会

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◆ ヒアリング

「第2回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」が,2012年3月29日,開催され,日本医師会の高杉敬久常任理事と日本医療法人協会の伊藤伸一副会長からのヒアリングが行われました.高杉敬久常任理事と伊藤伸一副会長は,それぞれ,日本医師会の「事故調査制度に関する提言」,日本医療法人協会の提案する事故調査制度を,説明しました.

◆ 意見交換

加藤良夫委員(南山大大学院教授)は,「医療の質向上や医療安全のために事故調査が必要というのは、共通認識と受け止めた」と述べました.

山口育子委員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は,「患者の話を聞くと、まずは院内での説明。そこで納得いかない場合に、どこに行くかということ。次は第三者機関をどうするかを骨子に議論すべき」よ述べました.

豊田郁子委員(医療事故被害者遺族)は,「院内事故調に比重を置くのか、第三者機関をしっかりつくるのかはまだ(意見が)統一されていない。次回以降の議論では、患者が何を求めているかを取り入れてほしい」と述べました.

キャリアブレイン「医療事故調、第三者機関の位置付けが焦点に- 厚労省検討部会」ご参照

◆ 感想

医療提供者側の中には,第三者をいれることに対する消極姿勢,警戒感があるようですが,患者側をはじめ事故関係者の理解を得るためには,公正性,透明性を確保する必要があります.そのためには,第三者機関が重要と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-31 21:28 | 医療事故・医療裁判

新型インフル特措法案が衆議院を通過,参議院へ

b0206085_1125083.jpg新型インフル特措法案は,民主党と自民党が一致しているので,日弁連,薬害オンブズパースン会議,日本ペンクラブなどの反対にもかかわらす,あっさり成立してしまいそうな危険な状況にあります.

NHK「新型インフル特措法案 衆院可決」(2012年3月30日)は,次のとおり報じています.

「毒性と感染力の強い新型インフルエンザが大流行した際、国が「緊急事態」を宣言し、予防接種の対象者を定めることなどを盛り込んだ特別措置法案が、30日の衆議院本会議で賛成多数で可決され、参議院に送られました。

この法案は、毒性と感染力の強い新型インフルエンザの流行に備えた国や地方自治体の取り組みなどを定めるものです。
法案では、新型インフルエンザが実際に発生した際には、国は対策本部を設置し、国民生活や経済に重大な影響を与えるおそれがある場合」は、「緊急事態」を宣言するとしています。
また、対策本部が予防接種の対象者や接種の優先順位などを決めるほか、都道府県知事が強制的に学校を休校にしたり、集会や催し物の開催を制限できるとしています。
この法案は、30日の衆議院本会議で採決され、最新の科学的な知見を踏まえ、被害想定が過大にならないようにするなどとした付帯決議をつけたうえで、民主党や自民党などの賛成多数で可決され、参議院に送られました。
政府は、新型インフルエンザが大流行した際に、すべての国民が予防接種を受けることができる体制の整備を盛り込んだ「行動計画」をすでにまとめていて、法案の成立後、平成25年度中に、全国民に行き渡る量のワクチンを製造できる体制の確立を目指すことにしています。」

msn産経「新型インフル特措法案 最悪想定 人権制限どこまで」(2012年.3月29日)は,次のとおり問題点を指摘しています.

 「新型インフルエンザに対する危機管理の取り組みを定めた「新型インフルエンザ対策特別措置法案」が国会に提出されている。新型インフルなどが大流行した場合、その影響を最小限に抑えることが狙いで、危機管理上、住民の行動制限なども要請できることになるが、ここに来て、日本弁護士連合会(日弁連)などから「人権が過剰に制限されている」などとして反対の声が上がった。「危機管理」と「人権制限」をどう考えればいいのか。

 法案によると、政府は新型インフルエンザや新型の感染症が発生し、国民の生命や健康に深刻な被害を与える恐れがあるときには、首相が区域や期間を定めて「緊急事態」を宣言。外出の自粛や休校、人の集まる施設を使わないなど、住民の行動制限の要請や指示ができる。

 ■命令違反に罰則

 必要な医薬品や食品などを確保するための保管命令に業者が従わなかった場合などは30万円以下の罰金など罰則規定も設けた。

 これに対し「法案は危険だ」との声を上げたのが、日弁連だ。22日には反対する会長声明を出した。特に問題視しているのは、感染防止のために強いられる人権制限が過大である点だ。

厚労省は、新型インフルで考え得る最悪の被害を、大正7(1918)~8年に流行したスペイン風邪並みの致死率2%で計算し64万人が死亡する可能性があると想定。特措法もこの想定を念頭に置いて作られた。

 しかし、日弁連は「当時と現在では国民の健康状態、衛生状態や医療環境の違いは歴然としている」と指摘。科学的根拠のない過大な被害想定に基づき、集会の自由が制限され、制限の適用要件も曖昧などと批判する。

 感染症の専門家はどのように捉えているのか。

 「確かにスペイン風邪の時代に比べれば、衛生状況や薬、ワクチンが良くなっている側面はある」。国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は、被害想定が過大とする批判に一定の理解を示す一方、「当時に比べ、逆に人口密度は高くなり、交通機関の発達などで人の移動も活発になるなど不確定要素も多く出てきた」と指摘。「新しいものを想定するときには学問的根拠だけで全てを議論できない。実際に過去に被害があったなら、その被害に備えなければいけないだろう」としている。

 国立成育医療研究センターの加藤達夫総長も「海外でも同様の措置を講じている。国家が危機管理をする際、最大限の被害想定をしないのは無責任。“備えあれば憂いなし”でいいと思う」と話す。

■“水際”必要?

 一方で、対策そのものに問題があるとする関係者もいる。特に批判が多いのは海外からのウイルス持ち込みを防ぐ目的で行われる、空港での“水際作戦”だ。

 亀田総合病院(千葉県鴨川市)の小松秀樹副院長は「21年の新型インフルで行われた水際作戦では、8人の患者を発見する間に100人がすり抜けたという計算もある」と指摘。その上で「政府は『ウイルスの国内侵入を遅らせる』とするが、遅らせることもできない上、医療側が疲弊して疾病対応能力を奪ってしまう」として、より医療現場に即したルール作成を行うべきだと訴える。

 これに対し、法案をまとめた内閣官房新型インフルエンザ等対策室は「ウイルスが入り込むのを完全に防げるとは思わないが、蔓延(まんえん)のスピードを少しでも遅らせ、対策を取る時間を稼ぐ意味がある」と説明。「あくまでも初期段階の対応。合理性がなくなれば措置を縮小する」としている。(豊吉広英)

 ■新型インフルエンザ 
 鳥類や豚など動物のインフルエンザウイルスが変異し、人から人への感染拡大が可能になって起こるとされる。ほとんどの人が免疫を持たないために、爆発的に拡大し、パンデミック(世界的大流行)を起こす可能性がある。2009(平成21)年4月に豚由来といわれた新型インフルエンザが米国やメキシコで最初に確認され、瞬く間に世界的大流行となった。」


日本ペンクラブの「「新型インフルエンザ特措法」に反対する緊急声明」は,次のとおりです.

「政府は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を三月六日に閣議決定し、今国会での成立をめざしています。
 しかし、その内容は、感染症対策に名を借り、国民の基本的人権、移動や集会の自由、言論・表現の自由を一方的に制限するなど、あまりに重大な問題を含んでいます。要綱段階で出された反対意見を踏まえ、法案では一部文言の修正がはかられましたが、法案が有する問題点はまったく解消されていません。
 例えば、同法案は、世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザの流行を確認した場合、首相が緊急事態宣言を発することができるとし、都道府県知事に対して、住民の外出制限、公共・商業施設の使用制限、集会等の中止を求める権限を与えています。さらに、住民に対して強制的な予防接種も行えるとしています。
 これは、事実上、超法規的な戒厳令であるにもかかわらず、この発動の要件は政令で定めるとされており、厚生労働省の一部の決定のみで私たちの生存と権利と自由を制限することを可能としています。
 新型インフルエンザへの対応は不可欠ですが、誰もが当事者となりうる事態に冷静に対処するためには、危険性の実態や進行の段階、その対処の仕方など、確実で透明性の高い情報の公開が必要であることは、先の福島第一原発事故の教訓であったはずです。その際に見せた〈政〉と〈官〉の不手際を検証もせず、いたずらに危機感をあおり、危機管理対策のみを突出させた本法案を制定することは、新型インフルエンザの対策にならないばかりか、民主主義の諸原理を蹂躙するものと言わざるを得ません。
 日本ペンクラブは、政府がこの法案を撤回し、国民が新型インフルエンザ対策として熟議し、合意形成できる内容に根本的に改めるよう、強く要望します。
  
ニ〇一ニ年三月三〇日
日本ペンクラブ会長 浅田次郎」


谷直樹
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by medical-law | 2012-03-31 02:50 | 医療

山形刑務所で昨年投薬ミス注意5件,ただし国家公務員法の懲戒処分ではないとして非公表

b0206085_1111579.jpg読売新聞 「投薬ミス 昨年また5件 山形刑務所 06~10年にも11件 問われる体質」(2012年3月30日)は,次のとおり報じています.

「山形刑務所(山形市)で昨年、受刑者らに間違った薬を渡すなどしたとして、職員が注意処分を受けたケースが計5件あったことが29日、わかった。

 同刑務所では昨年4月、受刑者らへの誤投薬が続発していた事実が発覚したが、依然として同じミスが繰り返されている。

 同刑務所などによると、就寝前の投薬時、薬袋に書かれている呼称番号や居室をよく確認しなかったため、間違って別の受刑者の薬を渡した誤投薬があった。また、受刑者から就寝前の薬服用の申し出を受けた職員が、薬袋の表示を確認しなかったため、間違って朝食後に服用する薬を投与した事例もあった。

 同様に確認を怠り、昼食後用の薬を渡すべき受刑者に対して、翌日の朝食後用の薬を投与したケースもあった。

 誤飲した受刑者や刑事被告人に目立った健康被害は確認されておらず、誤投薬をした職員は、いずれも注意処分を受けたという。

 同刑務所を巡っては、2008年~10年に計9件の誤投薬があったことが、昨年4月に発覚した。

 その後、読売新聞が調べたところ、06年と08年に新たに1件ずつの誤投薬があったことも判明した。ほぼ毎年のように確認されているが、いずれも注意処分で、同刑務所は「国家公務員法の懲戒処分ではない」として、公表していない。

 同刑務所の斎藤幸治総務部長は取材に対し、誤投薬の事実を認め、「間違った原因を分析して、職員の研修を行い、再発防止に努めていきたい」としている。

 法務省は、山口刑務所(山口市)や岩国刑務所(山口県岩国市)で職員による薬の配布ミスが相次いで発覚した04年、全国の矯正施設に対し、投薬ミスの再発防止に努めるように書面で通知。具体的には、「薬を入れる包装紙の色分け」「投薬時に本人確認を徹底する」「受刑者らに異変があれば、速やかに医療関係職員らに報告する」などを指示している。

 被収容者の人権問題などに取り組むNPO法人「監獄人権センター」(東京都)の事務局長を務める田鎖麻衣子弁護士は「誤投薬が繰り返されているのは、薬局や病院では考えられず、被収容者に対する意識の低さの表れだ」と厳しく指摘する。」


具体的な健康被害が生じなかったからよいというものではありません.
受刑者に対し適切な医療をしようとしない姿勢が,時折表面化する,刑務所における医療事故と通底するものと思います.

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by medical-law | 2012-03-31 02:25 | 医療

横浜簡裁,神奈川県立がんセンターで麻酔器の酸素供給管が外れ低酸素脳症となった事故で,略式不相当

b0206085_11484041.jpg神奈川新聞「県立がんセンターの医療事故、正式裁判へ、医師の「略式不相当」/神奈川」(2012年3月30日)は,次のとおり報じています.

「県立がんセンター(横浜市旭区中尾)で2008年、手術中に麻酔器の酸素供給管が外れ、女性患者が意識不明の重体となった医療事故で、横浜区検は30日、業務上過失傷害の罪で麻酔担当の男性医師(42)を略式起訴したが、横浜簡裁(岩田和壽裁判官)は同日、「略式不相当」と判断した。今後、医師は正式な裁判で審理される。

 起訴状によると、医師は08年4月16日、乳がん治療で乳房部分切除などの手術を行うに当たり、女性患者=当時(44)=に全身麻酔を施した後、患者の状態を注視しなければいけない立場にありながら怠り、手術室を退室。麻酔器の酸素供給の管が患者から外れたにもかかわらずその状態を18分間放置し、女性を低酸素脳症に陥らせ、完治不能の高次脳機能障害と四肢不全麻痺(まひ)の傷害を負わせた、とされる。

 同事故をめぐっては、11年1月、県警が医師と、手術全体を統括していた男性執刀医(39)の2人を業務上過失傷害の疑いで書類送検していた。区検は、執刀医については「嫌疑不十分」として不起訴処分とした。」


この麻酔医は,同時並行で複数の患者の麻酔を行っていたので,麻酔後に手術室を長時間離れていました.酸素の管が外れたのですが,執刀医はそのことに気づかず,患者は低酸素状態が続いたために,重度の障害を負いました.この結果が重大なので,略式不相当,という判断になったのだと思います.

しかし,本件は,神奈川県立がんセンターの麻酔医が不足し,過重な仕事をさせていることが背景にあっておきた事故です.検察官と刑事裁判官は,京都大学エタノール事件がそうであったように,表層的にしか事件を見ていないことがあるように思います.

本件刑事手続きでは,麻酔医の責任のみが問われているのですが,私は,麻酔医一人の責任とするのは適切ではないと思います.麻酔医にこのような仕事をさせていた管理責任者等の責任を追及すべきであった,と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-31 01:10 | 医療事故・医療裁判

平成24年3月26日横浜地裁判決,横浜市立大学医学部教授に121万円の賠償を命じる

b0206085_19432100.jpgスポニチ「横浜市大教授に賠償命令 学生に土下座させ暴行」(2012年3月26日)は,次のとおり報じています.

「横浜市立大医学部の男子学生が50代の男性教授から「女子学生にストーカー行為をしている。おまえは犯罪者だ」などと罵倒されて土下座を命じられ、頭を足で踏み付けられたとして、330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は26日、教授に121万円の支払いを命じた。

 内田貴文裁判官は判決理由で「十分な裏付けをせずに一方的に犯罪者呼ばわりした上、暴行したのは悪質。落ち度のない学生が、教授という影響力のある立場の者から、退学などと罵倒された精神的打撃は甚大だったと推察される」と述べた。

 判決によると、教授は女子学生から嫌がらせの相談を受け、うわさ話から当時2年だった原告の学生がストーカー行為をしたと思い込み、2011年2月、他の学生がいる学期末試験会場で「おまえは犯罪者だ」などと発言。その後、教授室で学生を土下座させ、頭を踏み付けるなどした。

 男子学生はストーカー行為について事実無根で、精神的苦痛を受けたとして同3月、大学のハラスメント防止委員会に被害を申し出た。大学は同7月、教授を停職3カ月の懲戒処分にした。 」


教授は,横浜簡裁で,名誉毀損と暴行の罪で罰金50万円に処せられています.
121万円は安い気がしますが,今回の判決は,さらに停職3カ月の懲戒処分にされていることも考慮し,この程度の賠償額に減じているわけです.

教授が事実を確認しないで学生をストーカーと軽率に誤信したこと,教授が正規な手続きを践んでいないこと,教授の行為は本当のストーカーに対してでも違法な行為にあたることを考えれば,判決は当然と思います.

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by medical-law | 2012-03-31 00:41 | 司法