この映画は,タバコ会社7社の最高経営者が,宣誓して「タバコには依存性がない」と偽証した頃の話です.
もちろん,タバコにはニコチンが含まれ,ニコチンには中毒性(依存性)があります.タバコ会社は,ニコチン・コントロールの技術を駆使し,タバコの消費量を管理していました.
映画は,全米第3位のタバコ会社B&W社副社長だったジェフリー・ワイガンド博士が,B&W社がタバコにアンモニアをまぜることで体内の吸収度が増し,脳や中枢神経系統への影響をコントロールしていたこと,ニコチンに中毒性(依存性)があることを内部告発しようとする話です.
日本での映画公開にあわせて,ジェフリー・ワィガンド博士が来日したとき,私は,四ツ谷のレストランでジェフリー・ワィガンド博士と夕食をとりながら,貴重なお話しをうかがいました.
B&W社副社長だったときの5分の1の収入になっても,科学者として真実を語ったことの意義は大きく,充実した生活をおくっているようでした.
脅迫,悪質な妨害,裁判所の公開禁止命令,根拠のない誹謗中傷,CBS『60ミニッツ』へのCBS本体からの圧力で「真実だからB&W社の損害が大きい」としてインタビューがいったん放映中止になったことなど,すべて実話です.当時,B&W社は,実際に,CBSを相手に150億ドルの損害賠償請求訴訟を提起しようとまでしていました.
映画『インサイダー』は,多少の脚色がありますが,ほとんどが実話です.
ジェフリー・ワィガンド博士の内部告発は,米国タバコ訴訟の帰趨を決し,タバコ会社は,巨額の損害賠償に応じざるをえなくなり,禁煙運動は前進しました.真実を語った科学者(内部告発者)がいたことは,とても重要で,多くの人の命と健康を守ることにつながりました.
もっとも,タバコとの戦いは未だ終わってはいません.日本のタバコ訴訟では,タバコ会社のニコチン・コントロールは証拠上認められず,タバコは嗜好品(嗜癖品)として許容されているなどという,判決がある現状です.
なお,ジェフリー・ワイガンド博士を演じるラッセル・クロウ氏と,プロデューサーのローウェル・バーグマン氏を演じるアル・パチーノ氏は,ともに好演です.
谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
↓

にほんブログ村